ある男

坊ちゃん

第1話 ベンチ

 ふぅ、今日も疲れた。でも、今日は金曜日だから幾分、気分は明るい。といっても電車の中だからあんまり明るくなれない。結局のところどっちなんだよ、と自分につっこんでしまう。

「ご乗車ありがとうございました。次は○○。」

やっと着いたか。やっと電車という呪縛から解放される。呪縛と言いながら毎日乗ってる俺。あぁ世の中よ。

 皆一斉に降りてゆくその中に自分も混じってる。こんなこと考えてるの俺だけかな、と考えているのは俺だけかな、と考えているのは俺だけか・・・、やめよ。

 やっと駅という呪縛から解放された。呪縛多し。こんなことばっか考えてるとより一層疲れるんだよな。でもやめられない。ちょっと休憩していこうかな、あのベンチで。

 よっこいっしょ、とつぶやくのは老化の始まりと聞いたことがあるような無いような。かばん、とても重かったなあ汗でびっしょりだ。タオル忘れた。風が気持ちい。とりあえず涼もう。

 次の電車が着いたな。人がどんどん降りてくる。あ、あの同世代(同世代)は毎朝見るぞ。禿散らかしてるからよく覚えてる.禿げてるのにまだ散らか・・・まあいいや。あの人の人生はどんなだろう。自分以上ではあろうな。

 俺の人生。

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