占者の一人言

@5gyo16

第1話 「我、感知せず。」


 私の名前は、六耀 麗爛(むよう れいか)。

都内の文系大学へ通う、2年生だ。

父は、「易」学者で、母は、占い師だ。

学者と占い師が何故結びついたか?未だに深く聞いた事はない。

ただ、母によれば、父が、易、暦の本を出版するにあたり、資料を集めの最中に知り合い、父の一目ぼれだったそうだ。


 そんな、とても恵まれた?環境の中で育った、私って一体・・・・。


普段の生活の中で、つい呪文のように、「木火土金水」の言葉を口ずさんでしまう。


 「木火土金水」とは、小説、映画、漫画で話題になった陰陽師、安倍晴明が使っている「陰陽五行」のあれだ・・・。


古代中国から伝来の自然界の五大要素「木火土金水」が消滅生成、転化を繰り返し、循環していく。それを、相生、相剋と言う。


「 木火土金水」の順番通り、相生は、「木」⇒「火」(木が燃えて火になる。)「火⇒土」(燃えた灰が土となる。)「土⇒金」(土は金を生み)「金⇒水」(金が冷えて水滴を生み)「水⇒木」(水は木を育てる)


相剋は、各五要素毎の天敵というか、痛めつけられる関係で、「木剋土」(木は土を痛めつける)「火剋金」「土剋水」「金剋木」「水剋火」という構図らしい。


 同じ木の要素でも陰陽があったりする様(陽の木は大木、陰の木はつる草、草花。)は、男女の陰陽の様に、納得できたり、理解できなかったり。


ただ、やっぱり、門前の小僧なんとやらで、幼い頃から、手相、人相、占いが身についていたらしい。


 電車に乗れば、向いに座っている乗客達の人相観ては、あー あの人は、へらず口が多いかな??

お!あの女性は優しいな、きっと良妻、母になるのだろうなぁ。なあんて、あーでもない、こ~でもないと、ついつい考えてしまうのだ。


 毎日、自作の占いカレンダー(気学、四柱推命、風水、奇門とんこう、等々統一性のないバラバラの物を表記、俗に言うイーとこ取り。)で、吉凶判断し、運勢吉日、良い方位や時間をみては、外出を決めたりする。・・・。(時間が許せばだけど・・・。)


さて、今日は、時間があったので、幼馴染の成人(なるひと)君と伴に吉日吉方位に当たるので、祐気取りに立ち寄ってみた。

祐気取りは、その人にとって良い吉日、吉方位に向い、その気を受けて、衰えた?気力を充実させる。希望の成就に繋がる。


 目的地、ここは、熱海、温泉地、はてさて、何が起こるやら???


 老舗旅館「琴水館」、部屋へ通され、寛いでいたら、女将が挨拶にやってきた。


女将「いらっしゃいませ。当琴水館へようこそ。旅のひと時、ごゆっくりお過ごしください。」


お茶とお菓子を勧めながら、女将が切り出す。


女将「失礼ですが、六耀様は、あの、占い師の六耀のお嬢様でいらっしゃいますか?」

麗爛「はい。そうですが・・・。何か?」

女将「私、先生の大ファンなんです。」

女将「先生の著書は、全て拝読しております。」

麗爛「はぁ・・・。」

成人「へー。そうなんですか?」

女将「今度、先生に鑑定を依頼したいと思っておりまして・・・。予約して東京の鑑定所へ伺う予定です。」

女将「まー その前に先生のお嬢様にお会いできるなんて、感激ですわ。」

麗爛「はぁ・・・。そうですか・・・。」

(母の鑑定依頼者は多く、六耀という珍しい苗字を言うと、こういう会話等は、しばしばおこる事だ。


 実は、私は、鑑定依頼者にあまり、興味がないのが、本音なのだ。

当事者は、真剣で、迷い、困っているから占いに頼るというか、現状を把握し、なんとか打開策を見つけたいからなんだろうが・・・。

易、占い師がよく言う言葉で、「当たるも八卦、当たらぬも八卦」という言葉があるくらいだから、あくまでも参考意見なんだろうなぁ・・・。占いって。と私は、思っている。)


 ひと風呂あびて部屋へ戻ると食事と女将が待っていた・・・。


女将「お風呂いかがでしたか?」

麗爛「良いお湯でした。」

成人「そーだね。ほら、肌がすべすべだよ。」


 成人は、嬉しそうに、ほてった貧弱な?腕をすっと、触れてみせる。

成人は、ガンダム好きの某理系大学の学生だ。私とは、幼馴染だが、それ以上の関係ではない。こうして、一緒に旅行に行くが、幼馴染の気の良い友人だ。


麗爛「成人、男なのに?お肌??」

成人「いーじゃないか。良いお湯でお肌すべすべに女も男もないさ。」


女将「それは、ようございました。お食事ととのっております。お飲み物は、何になさいますか?」


二人は、ウーロン茶を頼んだ、さすが、琴水館自慢のお料理、自然と箸が進む。


女将が、そっと麗爛に手紙を手渡し、告げる。


女将「お嬢様も占いをされるとか?この生年月日で見て頂けませんか?」


麗爛「え?」

女将「わかる範囲で良いのです・・・。」


麗爛「・・・・。」


返答に困っている私に、軽く会釈して、そそくさと女将は部屋をでていってしまった。


麗爛「ま、いっか・・・。食事、食事・・と。」

麗爛「うーーん美味しい、最高!」



夕食後、腹ごなしに女将の手紙を開けて、生年月日をみると。


庚の日生まれだぁ!

今年はシンドイぞぉーーーー!


< それは何故か?最初に触れた、自然界の五大要素「木火土金水」から引用すると、今年は、2016年の丙申の年、女将の生まれ日が庚日。火剋金の関係で、丙は丙午の丙(陽の火)女将の庚は(陽の金)年の丙(火)が庚の金を溶かしちゃう。 >


さあ!てぇへんだぁ!

女将、溶けないでねぇ!!


 つらつらとこれから数年の年運、今年の月運、調べてみると、女将は、今年乗り切れば良し!と出た。男性運もあり、ご縁がありそうな年だけど、今年出会う人はNGかなぁ・・・。ご結婚されていたら、関係ないですね!


 翌日、朝食の時に女将に年運解説したら、少し、びっくりして、にっこり、笑顔を返された。(生まれ日の日干と、その年の干支で調べる極々簡略化した無謀とも思える判断だったけど・・・。)


 因みに、生年月日の干支を出すのは、ネット社会の昨今、実に簡単だ。

今回は旅先なので、成人のスマホで占いサイト閲覧し、女将の生年月日から、生まれた干支を出してみた。


何故?成人のスマホなのかといえば、私は、ガラケー愛用者なんで・・・。成人のスマホの方が実に使いやすい・・・。


麗爛「来年、その結果を聞かせてもらいますね。」等と伝え、旅館を後にした。


ま、少しでも私の鑑定?が、人様の笑顔?お役にたったなら、それで、良し!


おいしいお料理と温泉で、リラックス、気力体力充電完了。

と思いつつ、この祐気取の旅は終わったのだ。


 後日、女将は、母の鑑定所へ来たらしく、私の占いの事が多少話題にのぼったらしいが・・・。


 「我(ワレ)、母の鑑定依頼者には、感知せず。」なのだ。

                                 完

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