空を舞う日

西シノブ

はじまり

――ただなんとなく空を見ていた。そう。それはただなんとなく。

「空は広いなぁ…。それに碧い…。」

そんな事をひとりごちる。

いつもの事だ。性格からか、よく一人言を言っている。

「……ん?」

この大空をはばたく鳥がいた。

どこか力なく、フラフラしている。

その鳥はこの近くの、"オバケ大樹"と呼ばれる大木のある丘に墜落するかのように落ちていった。

「あっ……!」

体が勝手に動いていた。

その丘に向かって駆けていた。

導かれるように。

体が別の意識を持ったかのように。

少しの時間を要し、丘についた。

鳥が落ちていった所を探す。

すぐに見つかった。

"オバケ大樹"の真下に鳥はいた。

急いで駆け寄る。


「ひどい怪我だ……」


その鳥はスズメだった。


主に翼の付け根辺りがひどく、その他にも体のあちこちが傷ついていて、血で赤くなっていた。


「確か…、包帯とガーゼがあったはずだ……!」


ポケットからその二つを取り出す。

他にもばんそうこうや消毒液などもいつも持ち歩いている。


応急処置をする。

医学には多少の心得がある。

もちろん獣医学にも。

だから処置はすぐに終わった。

そしてその小さな体を手に乗せ、獣医に見せようと再び駆けだす。

この町に唯一の、獣医である自分の父に。

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