第6話書物庫
エクストラスキルの確認が終わって数日。
僕が書物庫に引きこもっている間、武器の特性も各々で使っていくうちに手に馴染んできたようで、鍛錬の成果もあり四人は見違えるほどに強くなっていた。
英雄王、鎌瀬山、蜜柑はもう王宮騎士団第一師団副士団長エ―ゼルハイトに実力は勝るほどになっていた。
まぁ、僕らは公式チートのようなもの。
勇者の身体というのはとにかく成長が早く丈夫らしく、女の子の蜜柑でさえ王宮の中では上から数えるほどの実力をつけていた。
僕自身に関してだけど、僕もある程度蜜柑達に負けず劣らずのハイスペックだということが発覚した。
視力や聴力が上がり過ぎて夜な夜な隣の部屋から変な声が聞こえたり、遠くを飛んでいた異形な鳥を見つけたので、小石を投げたらぶつかった瞬間鳥が消しとんでしまったり自分の身体が自分じゃないように感じるほどだった。
まぁ、僕の状況は置いといて。
幼女については、彼女もかなり力をつけたけれど前衛職と後衛職の違いといったところか。
身体能力については未だにエ―ゼルハイトを超えてはいないけれど、彼女は彼女で魔術系の才能に著しくステが振られていたみたいで王宮にいる筆頭魔術士の全ての魔術を会得したそうだ。
こう聞くと魔術が凄い簡単なモノに感じてしまうが実際は多くの知識や精密さが必要とされるので不器用な奴やバカには出来ない。現に勇者でありながら頭の悪い鎌瀬山、不器用な英雄王には扱う事が出来なかった。
そして、普段の言動や見た目から想像がつきにくいが、幼女は日本でも天才の部類に入る人間だ。
うちの高校は偏差値60越えの所謂エリート進学校だった訳でレベルはかなり高い。そんな中で大学模試や学年テストは僕に続き2位にいた。つまり、僕がいなければ間違いなく常にトップを取っていただろう。
そんな彼女だからこそこの短い間で筆頭魔術師クラスにまで至れたのだろう。
あ、因みに一応蜜柑も並程度だが魔術を使えるようになったらしい。
さて、そんな訳で勇者四人はめきめきと力を上げていってる訳で、その尋常ではない成長速度には王達も感嘆の声を上げてしまう程らしい。
僕はそんな鍛練場の横を通りながらみんなが鍛練をしているのを横目に王宮にある書庫へと日々向かって、書物を読み漁っている訳だ。
チートに恵まれていない僕は現代知識でこの世界にアプローチをかけるといった建前になっている。
誰にもそれについて文句が言われないのは英雄王が裏で色々と僕の話しをしたからだと思う。
それにもともと、この異世界には賢人と呼ばれる異界から流れてくる人たちがいるそうだ。
彼等の特徴は言葉は通じるが文字は書けず、ほとんどのものがスキルを何も持っていない。しかし、変わった知識や考えをしており、それにより技術や文化的発展に貢献することがよくあるらしい。
そういう歴史があるからだろうか、王様達は僕に多大な期待を寄せているみたいだ。
その技術的発展ということに関しては彼等の期待に応えてやるつもりではあるが、それが彼等の栄光の発展に繋がるかな関しては首を捻らざるをえない。
これから先、僕は良い意味でも、悪い意味でも世界を動かすつもりだ。
彼等が優秀であるなら生き残れるかも知れないが、そうでないなら消えていく事になるだろう。
英雄王達が訓練をしている中、この世界の歴史と地理に関する書物や植物、魔物図鑑など、かなり幅広い分野を読んだのだが、モノによっては信憑性が不確かなものも多く、特に歴史に関しては、本によって書いてあることがバラバラであった。
結局の所、正確な歴史を知るすべなど現状の僕にはない。
だから、宗教やそのときの経済状況考慮して自分なりに一番整合性をとれるように歴史を解釈した。
地理に関してはとりあえず、このユースティア王国は人間側の二番目に領土が大きい国らしく、僕が予想した通り海には面しておらず、広い平原や山々に恵まれ農業が盛んらしい。
そしてこの国の南に隣接するのが帝国エルヴンガルド。
国土、人口ともに大陸一を誇り、軍事力も他の国と比べて比較にならないほど強大で、まともに対抗できるのはユースティア王国ぐらいだそうだ。
しかし、この二つの国は現在、人類全体の危機にもかかわらず結構仲が悪いらしい。
そのため、一応表だっては敵対していないが、裏ではこそこそと相手を貶しめようと画策してるみたいだし(メイド談)
この敵対心の原因は魔族が戦争を仕掛けてくるまで、何年も戦争をし続けて合っていたかららしい。
そんな訳で戦死者の数もかなり多く、魔族のために協力しあいましょうと言っても、友好的な関係になるのは国民の心情的にもそう簡単じゃなかったみたいだ。
しかし、このままでは流石にまずいと上層部も考え始めてた訳だが、自国から停戦を言い出せる訳もなかった為、中立の立場であったグルナエラ連邦が間に入ることで停戦を結び、表面上は友好的な関係になったそうだ。
この仲介に入ったグルナエラ連邦はユースティア王国から見て、北東に位置し、国境沿いは山で区切られているためか、貿易の数も少なくこれまで余り交流する機会はなかったみたいだ。
国土でいえば大陸第三位であるが、多くは急勾配の山々でまた、気候も寒く厳しい為か人口でいえば、ユースティア王国の半分程度しかいないようだ。
他にも都市国家カンナベルク。マシュマロ公国。といったようにいくつかの国が存在しているが、どうにもみんなで手を取り合って魔族と戦いましょうといったことがまだうまくできていないようで優れた個の集まりである魔族に劣勢に晒されているみたいだ。
落とされた国の数は既に10は越えている。よくそれでまだ、人間同士で争ってられるなと少し呆れてしまう。
肝心の魔族に関しての有力な情報はほとんど無かった。
魔族の中にも複数の種類がありどれも個体としては優れた身体能力、魔素保有量をもち、普通の人間では相手にならないということだ。また、力による上下関係により組織化されていてその頂点に位置するのが魔王と呼ぶとそうだ。
まぁ、敵側の情報なんて余り無いことはあらかじめ予想はついていた。
歴史によると前回、魔族と争ったのが何百年も昔の事らしいし資料が少ないないのも仕方ないかと諦めがつく。
魔族に関してはいずれ自分で調べに行くことになりそうだが、その前にいくつか此方でするべきことがあるから後回しになるだろう。
周辺の国々の地理と歴史とこの世界の常識を確認しながら、これからの計画をたてていく。
「こんなところにいたのかよ」
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