第5話スキル検証

  なにやら昨日の事をまだ引きずっているようで幼女にはそれとなく心配されて、鎌瀬山は勝ち誇ったようニヤニヤと僕に視線を向けてきた。

 まぁ、こうなることは嘘をついたときからわかりきっていたし特に気にしてはいない。彼は昔から僕を毛嫌いしていたしね。

 寧ろ、気になるのはこの後の能力確認だ。

 他の皆の能力が実際にどの程度のレベルなのか。

 それによっては予定を大きく変える必要が出てくるかも知れない。

 そんな事を考えながら朝食の時間は過ぎていった。




 朝食の後、エーゼルハルトに連れられて城内にある鍛練場に来ていた。

 数百人は入れるであろうここは普段、エーゼルハルトたちのような騎士が日々の訓練をしている場所らしいが、今回は僕たちの為に空けてくれているらしい。



「ではこれから勇者様方には能力の発現をしてもらいます。発現方法は基本的には頭の中で念じることで出来るはずです。イメージしづらいのでしたら声に出して貰っても構いません。やり方は人それぞれです。自分に適した形を、見つけて下さい」

 

「意外と簡単なんだな」


 そう溢したのは英雄王だった。

 確かにもっと面倒くさい手順だったり詠唱があったりするのかと思っていた。

 だが実際は念じるだけと、やけにお手軽な話だ。



「じゃあまずは俺からやっていくか.......えっと、『限界突破』」


 少し照れくさそうにそう呟くと蒼く輝く粒子が英雄王の身体に纏まりつくように現れ出す。



「うおーッ!かっけえなッ!」


 こどもの様に目を輝かせる鎌瀬山。

 それとは逆に冷静に自分の状況を確める英雄王。


「これは、凄いな······力が溢れてる来るのを感じるよ。全能感とでも言うべきものだろうか」


 そう爛々と輝く謎の粒子を身体の動きにそってスムーズに付きまとうのを見て少し不安そうな顔を浮かべる。


「........所でこれはどうやったら辞められるのかな?」


 自分では能力の辞め方が分からないようで、エーゼルハルトに質問をする。


「そうですね、普通に能力を消そうと意識してみてください」


 帰ってきた答えはまたもやお手軽な方法でなんて都合の良い世界なんだって思ってしまう。

 しかし、予想とは反して英雄王の能力は消えなかった。



「分かった........いや、消えないぞ」


 それを見て少し戸惑った顔を浮かべる英雄王だが、エーゼルハルトは冷静そうに助言する。

 こういうのは珍しい事じゃないみたいだ。


「そうなると、何かしら条件があるのかも知れません。例えば、ある一定の行動が必要であるとか」


「条件か......想像がつかないな」



「本人にも分からないとなると此方としては見当がつかないのです。普通の能力でしたら他に参照例が合ったりするので分かるのですが限外能力までになると個人の特有の能力となってしまいますので.......」


「おいおいどうするんだよ、正義」

 少し心配そうに声をかける鎌瀬山。

 その言葉を聞き困り顔を浮かべる英雄王。


「うーん、どうしようか。このままって訳にはいかないしな」


 うわ、このまま全身発光人間として生きるなんて相当嫌だな。

 でも勇者として見るなら、常に輝いて見えるのは神秘的で良いかも知れない。



「あ」


 突然英雄王を包んでいた蒼く輝く粒子が消えた。

 英雄王は一度僕たちをみたあと、もう一度自分自身をみる。


「どういうことだ?」


 自分でも何が起きたのか理解出来てないみたいだ。


「......なにかトリガーになるような事をしたのではないですか?」


「え?いや、何かしたつもりはないんだが、」


 しかし、英雄王がなにかした様子は無かった。

 だと言うのに、ふと消えた。

 自分では消すことは出来ないけど、勝手に消える······。


「そうか。時間経過」


「えっ?」


「たぶん、ちょうど二分間だったとおもう。発動から消えるまで」


「本当か?タロウ」


「は?何てきとーな事抜かしてんだよ。ずっと数えてたって言うのかよ、お前は?」


 それに対して半信半疑な英雄王と完全に疑っている鎌瀬山。


「いや、数えてた訳じゃない。只の体内時計だよ。ちょっとした特技で一時間位までなら誤差数秒で分かるんだよね」


「そうなのか、流石タロウだな!」

「ほえぇー凄い特技ですねぇ(* ´ ▽ ` *)」

 と驚く反面、鎌瀬山は機嫌が悪そうにこちらを睨み付けてくる。

 それを相手にするのはめんどうなので気付かない振りをして話を続ける。


「いやでも偶然なのかも知れないし、何度かやってみた方がいいとおもう」


「確かにな。今度はあの状態の身体能力を確認でもしてみるか」


「ファイト!ファイト!」


「ですが、一定の時間経過をしないと、能力が切れないのは珍しいですね。普通は使える時間に制限があったり、時間間隔を、あけなければならないものが多いですし」


 やはり、時間制限型の能力はあるみたいだ。しかし、英雄王の能力は他の能力とは少し違った感じらしくそういう部分があるからこそ故に限外能力なんだろうな。


「なんというか、予想以上にぱっとしない能力ですね。限外能力と言うのですからもっと凄いのをイメージしていました」


「あー、確かに華代ももっと凄いのイメージしてたッ」


「そうですね、英雄王様のは単純故に強いと言った所です。強化係数も恐らくは通常の数倍はいくはずです。それに勇者としての身体能力が加わるのならこの国でまともに撃ち合える人間はそういないでしょう」


 幼女達の考えは最もで、身体能力の強化という一見パッとしない能力ではなく、もっと派手な能力だと考えていた。

 しかし、エーゼルハルトのいう通りこの能力は勇者のハイスペックと合わさり純粋に強い。ある意味では汎用性に優れるから当りともいえる能力なのではないだろうか。



「そうか、ならまずは俺は身体を鍛えることから始めないといけないのか」


 そう言いつつも口には笑顔が浮かび、たのしそうだ。


「じゃあ、次は華代がいきまーす」


 その後、順に能力を使っていたが、手探りで能力がどういったものか確認するしか手段がなかったため、そのまま1日が能力を試すだけで終わった。

 現段階で分かった事は、

 英雄王の能力、『限界突破』は文字通り自分の力のリミッターを外す事で限界を越えた力を出すことが出来る力だ。

 強化係数は勇者の力と合わさり測定不能。

 デメリットとしたら制限時間、というより発動したら二分間強化を止めることが出来ないという事ぐらいだろう。


 次に華代の能力、『聖女の癒し』。これはかつて持っていた英雄がいたらしくかなりの詳細までが分かっている。

 パッシブとアクティブ能力の併合された能力で、自身の傷を瞬時に治す超回復能力と全状態異常無効化、他人には一時的に欠損すらもなおせる癒しの加護を12時間付与することができる。但し使用には六時間のインターバルが必要となる。

 また、魔素保有量、回復魔法の適性に補正が入るらしく、典型的な後衛職タイプだ。


 鎌瀬山の能力『空間移動』

 これは二つの座標を指定してその空間同士繋げる能力だ。

 位置座標の始点は自分が目視する必要があるが繋げ先の座標は目視が必要としない。

 デメリットとしては座標は生物の中には指定が不可能かつ、繋げた空間を生物は通過できないという所だ。


 最後に蜜柑の能力、『同型模写』 

 これは視認した能力をワンランク劣化した形で使用することが出来る能力だ。同型模写なのに?と疑問は生じるが理由は分からない。

 どの程度モシャモシャ出来るのか試しに鎌瀬山の能力をコピーしてみたところ。鎌瀬山にはなかった制限。同時に出せる数、大きさ、距離に、制限がかかった。

 また、鎌瀬山、エーゼルハルト、英雄王、幼女の順に能力コピーをしたら鎌瀬山の能力が消えた事から能力ストックは三つまでみたいだった。

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