第3話僕らの関係

 一人だけ只の一般人だなんて展開を予想だにしていなかったようで王様は気まずそうな表情を浮かべる。


「た、タロウよ、まあ、そう気にするでない。呼び出した我々としては最大限、助力する事を誓おう」


 その言葉につられ、英雄王と幼女がフォローをしてくれる。


「俺も出来る限りフォローするよ」

「あ、私もタロウ君の力になるから大丈夫だよっ! ファイトッ」


「ありがとうございます」


 嘘を付いているからか皆の優しさが少し胸に刺さる。けど、説明したときの問題を考えれば皆には隠しておいた方が賢明だろうからこの判断は間違っていないはず。


「うむ、とりあえずは勇者たちのステータスも確認出来た。それに召喚されたばかりで疲れておろう。スキルの確認は後日行う事にする。今宵はゆっくり休んでくれ」


 機を取り直した王様は話しをまとめ、そのまま護衛の者をつれ、裏のドアから退席していった。

 残った僕たちはお互いに顔を見合わせて、ご馳走さまですと言って席を立つ。


「勇者様方、本日はお疲れさまでした」


 ドアを従者達が開け、僕たちに一礼する。

 そうして、見送られながら僕たちは部屋をでた。






「明日は能力スキルの確認かぁ。楽しみだなぁ」


 幼女は自分の能力スキルが楽しみのようでくるくる回りながら廊下を歩く。


「そうだな。俺たちがどれだけ強いのかは興味がある。もし魔族とまともに戦えそうも無かったら戦い方を考える必要があるしな」


 英雄王は正義感が強く暑苦しい奴ではあるが、考えなしの馬鹿ではない。これからの事を見据えどうするか考えているみたいだ。


「ああ、そういえばお前たちには悪いことをした。召喚された場で俺が軽はずみに魔族を倒す約束をしてしまって。あのときはつい熱くなってしまってね.......もし、嫌なら俺から王様にきちんと話を通してみるよ」


 ふと思いだしたように英雄王さんは僕たちに謝罪してきたのは今日の謁見の間での事だった。

 彼自信暴走している自覚はあったみたいで流石に僕たちを、巻き込んだのは罪悪感を感じているようだ。


「英雄王君、そんなに気にしないで。確かに最初は不安だったけど、なんか凄い能力貰ったみたいだしここの人達の力になってあげたいから」


「そういって貰うと助かるよ」


「たく、正義は律儀だな。気にすんなって。勇者の俺たちなら魔族なんて余裕だから大丈夫しょ。まあ、一人勇者じゃない役立たずがいたけどな。その分は俺がかばーしてやるよ」


 鎌瀬山はにやにやと笑いながら僕の肩を気安く叩いてくる。

 それに蜜柑が少しいらっとした顔を見せ何か言おうとするかが僕が手でそれを制す。

 気にするほどの事でもない。それにさっき限外能力エクストラスキルを隠した時点でこうなることは予想が出来ていた。


「釜鳴、それは良い過ぎだ。俺たちは仲間なんだぞ。太郎に謝るべきだ」


 正義感が強い英雄王は人を貶める言葉を黙って聞き流す事が出来なかったみたいで注意を促すが鎌瀬山は悪ぶれもしない表情だ。


「えー、只事実言っただけだろ?」


「鎌瀬山君のそういうところは好きじゃないかな」


 英雄王の言葉は気にも止めてなかったが女の子である幼女にも言われてしまうと流石に不味かったかと、この微妙な雰囲気に気づく。


「んあぁ!分かったよ!悪かった悪かった。これでいいか」


「もう、少し誠意というのをだなぁ。まあ、仕方ないか。太郎、悪いな」


 悪かったとは微塵にも感じて無さげな鎌瀬山の投げやりな謝罪。

 それにたいし英雄王が小言を言うがこれ以上は無理かと判断したみたいで僕に謝ってくる。

 鎌瀬山の事を英雄王が謝ってくるのはなんとも可笑しな話だけど、彼のそういうところは嫌いではなかった。まあ、暑苦しくてうっとおしいから余りかかわり合いたくはないが。


「ああ、大丈夫。別に気にしてないから」


 鎌瀬山の相手にするのも面倒なので適当に当たり障りのない言葉で流したが、それの何かが気にくわなかったようでチッっと舌打ちをし、先に歩いて帰ってしまう鎌瀬山。


「おい、釜鳴.....」

 それを、止めようと英雄王さんが走ろうとする。


「良いよ英雄王。鎌瀬山も疲れているんだよ」


「んー、まあ、そうか。今日は色々あったもんな」


「あぁ~、華代も疲れたよぉ」


「体の疲労というより精神的な疲労が大きいですね」


「僕も同意見だよ。もう、今日はなにも考えず早く寝たい」



 そうして各自自分の部屋に戻ったあと、僕はベットにダイレクトで倒れこむ。

「あぁ、疲れた」


「太郎、少しいいか?」


 ドアの外から英雄王が僕を呼ぶ。


「いいよ。あー、とりあえず僕の部屋に入って」


「ん、ああ、悪いな」


 そういって英雄王を僕の部屋に入ってきた。流石に寝たままでは失礼だろうもからだを起こす。


「そこの椅子に座っていいよ」


「いや、大丈夫だ。そんな長い話でもないしな」


 そう言って断った英雄王はどこか真剣な顔持ちだ。

 僕はそれに気付いていないように、飄々した態度で接する。


「そっか。で、何の話?」


「お前ならもう予想ついてるんだろ?」


「まあね.....あれでしょ?.僕は足手まといだから城にこのままい居ろって言いたいんだろ?」


「違う! いや、違わないがそういうわけじゃなくて」


 少し慌てた様子の彼を見て性格の悪い僕はほくそ笑む。


「ごめん、わかってるよ。英雄王は僕に戦いじゃない別の事をやってほしいんだろ?ここで」


「そうだ。お前は勇者じゃなかったが、紛れもなく天才だ。戦いじゃない別の方々でこの国の人達を救えるはずだ。危険な戦いは勇者になった俺たちに任せてほしい」


 僕が天才だなんて過大評価だよ。なんて言うつもりは毛頭ない。

 何故なら僕は天才だから。現に彼が言う通りの事はやろうと思えば出来るだろう。技術革新ならあっちの知識を使えばどうとでもなる。



「いいよ。もとより魔族と殺り合うつもりはそんなないしね。やってみたいこともある。僕は別の方々で世界を救ってみるとするよ」



「そうかありがとう。この話は王様に俺から言っておくよ」


「そうしてくれると助かるよ。手間が省ける」


「ああ。でも意外だったな」


「なにがさ?」


「いや、お前はこの世界を救うのは反対すると思ってたからさ。好きにやらせてもらう!とか言うと思ってた」


 彼は予想以上に僕の事を理解していたみたいだ。

 となると、さっきの廊下での話しは僕に気をつかって言ってくれたのかも知れない。こういう細かいところの気づかいが女子にモテるんだろうな。そんな場違いな事が頭を過る。


「いや、間違ってないよ。僕は好きにやらせてもらうつもりだよ。別に世界の救い方は決められてないんだし、好きにさせてもらうさ」


 そう、『最終的』に世界を救えればそれで良いんだ。

 そこまでの過程に何があろうとも。



「じゃあなんだ。お前にわざわざ言いに来なくても最初から決まってたってことだったのか」


「そうだね。だから言っただろ? 手間が省けるって」


 僕のその返答に少し飽きれた様子を見せる英雄王は大袈裟にため息をつく。



「はあ、そうだったな。で、どれくらい居るつもりなんだ?」


「そうだね。一週間はいるつもりだよ。色々しなきゃならないこともあるしね」


 知らなきゃいけないことが沢山ある。

 王様の言葉をナニも考えず信じられるほど僕は人として出来ていない。

 まずは言っていたことが真実かどうか調べる必要がある。


「分かった。じゃあ、もう寝るわ」


 英雄王がそう言い背を向けて部屋を出ていく。


「ああ、おやすみ」


 そうして、僕たちの1日目が終わった。


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