第249話 血の噴水
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3月23日(土)午後8時00分
1つ目のゲームの終了時間になり、会場内65人のスマホが一斉に鳴り出した。
【選別ゲーム1終了。ペアを組めなかった人は脱落となります】
「脱落? 脱落って何だよ」
1つ目のゲームでペアを組めていない女子が11人。
そのうち何人かが脱落という文字を目にして、会場内を理由も無くうろうろと歩き回っていた。首に付けている黒色の首輪が赤色に点滅している。
「お、おい! 大丈夫か
複数人の女子に囲まれていた
その一声を皮切りにペアを組めていない女子が次々と苦しそうに血を吐き出した。
「ガハッ、ぐっ、はー、はー、うっ」
「た、助けて……ねぇ、見てないで助けてよ!」
石井にペアを組んでもらうよう頼んでいた女子の1人、
口から血が流れている。
「んっ」
この世のモノとは思えないほど酷い光景にオレの隣にいた
「何なのコレ? なんで私がこんな目に遭わなきゃいけないの? 私何かした?」
梓がオレの襟元を掴み、思っていたことを全て吐き出した。
梓の首を見ると血管が浮き上がり、肌の色が紫に変色していた。
毒か?
「分からない。ゲームをクリアできなかったからルールに基づいて脱落することになったってことか? 梓、メッセージが届いた後、首に針のような物で刺された感じは無かったか?」
「針? ああ、そういえば何かチクッとはしたよ。それがどうしたの? んがっ、苦しい、ぐるじい……」
梓が両手で首輪を外そうと力を込める。
しかし、首輪が外れることは無い。
脱落した他の女子も梓と同じような反応を見せていた。
「ぐるしい、どんどんきづぐなってる」
梓に言われて首輪を見ると、確かに首輪が収縮していた。ギシギシと音を立てながら首輪が締まっていく。
オレはただそれを見ていることしかできない。
そして、次の瞬間。
「うっ!」
会場の至る所で脱落者の首輪が爆発した。
目の前にいた梓の首が体から吹き飛び、ボールのように床を転がる。残った胴体からは噴水のように赤色の血が勢いよく噴き出した。
ついさっきまで梓だった体はそのまま力なく仰向けに倒れた。
込み上げる胃液をぐっと抑え込み、左手で顔を拭う。
汗と一緒に梓の血液がべったりと手に付いた。
隣で顔を覆っていた理絵もその目で現実に起こった出来事を確かめていた。
「伊織、一瞬でみんなが……」
「ゲームに負けたらオレたちもこうなるのか?」
次は自分が同じ目に遭うかもしれない。
そもそもゲームはいつまで続くのか。
1つだけ分かることといえばまだゲームは終わらないということだけ。
政府選別ゲーム課の
オレたちの選別はまだ続く。
「醜い……」
小さな声で聞き取りにくかったがため息交じりにそんな声が聞こえてきた。
たった今、目の前で同窓生11人が死んだというのに信じられない言葉だった。
「醜いって」
理絵にも聞こえていたみたいだ。
オレと理絵は振り返って声の主を探した。
いや、探さなくてもすぐに分かった。1人だけ周囲とは違う異質な雰囲気を放っている。
身長170センチくらい。女子にしては背が高い。
千鶴はテーブルの上から赤ワインが入ったグラスを手に取り、一口だけ口に含んだ。
そして、大きなため息をつくと倒れて動かなくなった梓を見て再び。
「醜い」
そう呟いた。
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