第16話 しゃがめ!

◆  ◆  ◆


 ブーブーブー、ブーブーブー。


【14時になりました。ゲームを再開します。ゲームスタートです!】


 ブーブーブー、ブーブーブー。

 またスマホが振動する。


【ゲーム開始に伴い、只今から特別ルールを追加致します。特別ルール1:スマホのカメラ機能を使って敵の写真を合計3枚取るとその相手を脱落させることが可能。ただし、対象者1人に同一人物が複数枚撮ってもカウントされない】


 これが特別ルールか。今までメールの受信にしか役に立たなかったこのスマホがここで役に立つのか。


「これってつまり相手1人を脱落させたければ最低味方3人は必要ってことだよな?」


 剛が周りに聞く。


「そうだな。でも脱落は死ってことだからみんなよく考えてからやって欲しい」


「そんなこと言ってると敵に私たちが殺されちゃうわよ」


「だけど敵と言ってもクラスメイトだぞ」


「そんなこと私も分かってるわよ! それを分かった上で言ってるの」


 俊介と里菜が口論する。


「俊介も里菜もゲームは始まってるんだ。逃げるぞ!」


 2人を止める。ゲームは始まっているんだ。

 今までとは違く、まだ警察は1人も捕まえていない。相当焦っているはずだ。早く逃げなくては。


「はやとの言う通りだな。カメラに映らないように気を付けながら逃げるように!」


 俺たちは、公園で別れた。

 俺とこころと桃は、そのまま北地区周辺に残ることにした。


「はやと、桃っちの家には戻らないの?」


「うーん。ゲームが始まって少し経ってるからどこかで見られてたら危ないだろ」


「そっかー」


「しゃがめ!」


 こころと桃は反射的にしゃがむ。


「はやと君どうしたの?」


「誠だ」


 誠が亮と翼とこっちに向かって歩いてきていた。


「はやと君、やっぱりうちの家に戻ろうよ。あの3人から逃げ切れる気がしないよー」


 逃げなくても特別ルールがある。3人で1人ずつ写真を撮ってしまえば……。そんな勇気は俺にはない。自分の手で人を殺すなんて。


「分かった。戻ろう」


 誠、亮、翼に背を向け走って桃の家に入る。


「ふぅー。誰にも見られてないよな」


「大丈夫だよきっと」


 特に襲って来たりしてこないので見られずに済んだらしい。家の中はひとまず安心だ。


 ブーブーブー、ブーブーブー。


【安藤里菜、鳥旗剛、中澤理久が特別ルールを達成。よって、木下希美が脱落。警察チーム残り11人】


 里菜たちは、行動に出たようだ。特別ルールのせいでここからは、どんどん脱落していきそうだ。ゲームマスターの林先生がそれを望んでいるのか。


 ブーブーブー、ブーブーブー。


【中澤理久、八木明日香により確保。泥棒チーム残り10人】


 理久が捕まった。脱落した希美の近くにたまたま居たのだろうか。

 特別ルールを実行することでこうゆうリスクもある。やはり自分たちからは、やりに行かずにピンチになったら最悪、写真を撮るようにした方がいいな。逃げることが第一だ。

 そして、桃の家に居れば大抵のことは大丈夫だろう。


 だが後々、俺たちはこの特別ルールに苦しむことになる。

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