第10話 ゲーム続行不可能

◆  ◆  ◆


 休憩に入り、どうやって俊介たちを救出するか話し合った。

 やはり、少数で攻め込むより、大勢で突撃した方がいいという結論に辿り着いた。 

 とは言っても現在逃亡している泥棒は9人。相手は15人だ。数の差がでかい。泥棒全員で攻め込む必要がある。


 里菜のグループは、参加してくれるとして、1日目の休憩から音信不通となっている雅人、翔子をどうするかだ。電話をかけても繋がらない以上、自力で探すしかない。それに学校の様子、体育館の守備の様子も知っておきたい。


「俺は、雅人と翔子を探しに行ってくる」


「私も行く!」


 こころも一緒に行きたいと言ってきた。


「いや……俺は、1人で大丈夫だよ! 桃とまなみの3人で学校がどんな感じか調べてきてくれないか?」


「う、うん。分かった」


 ブーブーブー、ブーブーブー。


【15時になりました。ゲームを再開します。ゲームスタートです!】


 メールを確認し、玄関から出る。


「よしっ、じゃあ気をつけてな!」


「はやともね!」


 ゲームが再開し、それぞれ別行動となった。雅人と翔子を探さないと。ずっと捕まっていないとなると、俺たちと同様に建物の中に隠れているのか?


 とりあえず、桃の家の近く、北地区を探す。

 公園には、いなかった。誰の家か分からないのに覗き込むのもあれだしなー。雅人と翔子の家は分からない。それどころか行動範囲が可能な北地区、西地区に住んでいるのかすら分からない。あまり学校で接したことがないから聞いたことがないのだ。


 服の裾で汗を拭う。10月だとゆうのに日差しが強い。雲一つない青空だ。

 こんなゲームさえしていなければ、こころと一緒にゆっくり、のんびりと散歩なんかをしていたはずなのに。


 ブーブーブー、ブーブーブー。


『はやと君、今大丈夫?』


「おっ、誠!」


 電話の相手は親友の誠だった。


「どうした? 誠こそ今、大丈夫なのか?」


『僕は、大丈夫だよ。はやと君に教えたいことがあって……』


「なんだ?」


『明日香ちゃんと、桜ちゃんが立てた作戦を教えたくて』


「えっ? いいのか、そんな大事なこと。誠が不利になるだけだぞ」


『いいよ! だってはやと君は、僕の大切な親友だから』


「誠……。分かった。教えてくれ」


 …………。

 誠のおかげで明日香と桜が立てた作戦の全てを知ることができた。警察側の作戦は、こうだ。


 その日のゲームの前半戦に確実に1人でも捕まえる為に、様々な方法を使うらしい。

 その1つは、ローラー作戦。エリアごとに1つずつ潰していくのだ。全員で北地区を探し、次に西地区のように、しらみ潰しにしていく。体育館の防衛は、最小の人数で行い、泥棒を探す方に人員を割いているとのことだ。

 2人捕まえたらルール上警察側が罰を受けることはないので、探しているふり、追うふりだけをして俺たちの体力、そして精神面を削る作戦だと言う。


 驚いたのは、体育館の防衛はするが、泥棒が助けにきたら逃がしていいと言われているということだ。

 だが、よく考えればずっと捕まえておくことに警察側のメリットはない。泥棒側を全員捕まえて、ゲームを終わらせる目途が立っているなら話は別だが。


 誠が教えてくれたおかげで作戦が立てやすくなった。

 こころたちが、学校の周辺の状況を調べてきてくれれば、完璧だ。さすがに、こころたちだけで救出に行かせるのは、危険すぎるのでこのまま調査だけしてくれればいい。

 念には、念を持って全員で救出に向かった方が得策だ。俺は、雅人と翔子を見つけ出さなければ。


 北地区では、見つけることができず、俺は西地区にやってきた。

 誠の言っていた通り警察の奴に見つかっても無理に追ってはこなかった。


 1時間30分以上探し続けたが、まだ見つからない。相変わらず電話にも出ない。

 俺は、昨日こころが見つけた民家とビニールハウス、道路が繋がっている俺たちの万が一の時のための隠れ場所まできた。


 ブーブーブー、ブーブーブー。


【雪野五月、ゲーム続行不可能の為脱落。警察チーム残り14人】


 五月がゲーム続行不可能?

 午前中、亮と翼を足止めして俺を助けてくれた五月が……。

 クラスメイトで争うのは、おかしいと言って涙を流していたあの優しい五月が……。

 ゲーム続行不可能って何だよ?

 初めて見る文面だ。五月に何があったんだ?

 何が起きている?


 ブーブーブー、ブーブーブー。

 スマホが再び振動する。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る