第5話 1度目の休憩

◆  ◆  ◆ 


 あれから、警察側が追ってくることはなかった。

 俺たちは、警戒と緊張感を常に持ち逃亡を続けたが、警察の誰とも接触することはなかった。


 正午から始まったどろけいも、今では3時になろうとしている。ゲームは、約3時間続いていた。

 こころと桃は、疲れたのか道路脇のブロックに腰を下ろしている。敵の姿を校庭以来見ていないので完全に油断しきっている。無防備だ。


 ブーブーブー、ブーブーブー。


【今から17時まで休憩と致します。それぞれご自由にお過ごし下さい】


「やっと、休憩だー!」


「はやと君、こころちゃん。水飲みに行こう、水!」


「そうだな。水飲んだら俊介と合流しよう」


『「うん!」』


 2人共、なんて元気のいい返事だ。

 敵が襲ってくる恐怖心がないため、リラックスして近くにある公園で水を飲んだ。 

 後は、俊介と合流するだけだ。

 俊介に電話をかける。


「もしもし。どこで待ち合わせる?」


『あー、今そっちに向かってる所だ』


「そっか。俺たち、公園にいるから公園で待ち合わせる?」


『分かった! もう着くぞ』


 電話が切れた。


「あッ! みんな来たよ!」


 こころが俊介たちに手を振る。


「おう俊介!」


「悪かったな、はやと。俺と行動してた剛が捕まっちまって」


「おい、俊介、違ぇーだろ! 剛は、俺らのグループじゃなかったし、気づくのが遅かったのは、実際剛のグループの責任だろ」


「浩也。まあそう言うな。俺が悪かったんだ」


 俊介が浩也を止める。


「3時間前が遠い昔のことのように感じるな」


 俊介が上を向き3時間前を振り返っている。


「そうだな。あれっ? 雅人と勤、翔子はどうしたんだ?」


「あぁ、あいつらに電話したんだけど、今は行けないって言われた」


「なんだ? 行けないって……」


 雅人と勤、翔子は、作戦会議の時、何も意見を出さずに後ろの方でヒソヒソと話しをしていた。

 今度は、話し合いにも参加しないのかよ。この前半で重要な場面で単独行動か。


「残ったのは13人で、ここに来ていない3人を抜かすと10人か」


 俺が、公園に散らばっているみんなの人数を数える。


「2人捕まったからルール通り2人脱落だな。まだ、誰が脱落か知らせてこないことから、今日のゲームが終わってからになるだろう」


「俊介のその予想で合ってるな」


「問題は、今日のゲームが終わるまでだろ」


 浩也が俺と俊介に強く当たる。

 だが、浩也の言う通りだ。開始20分くらいでいとも簡単に2人が捕まってしまったのだ。それほど警察側の作戦がしっかりしているのだろう。


 明日香と桜が組んでしまった。警察から逃げるのは非常に困難だろう。

 だけど、俺たちはその警察から5日間も逃げなくてはならない。具体的に作戦を練らなくては……。


「どうする、俊介?」


「グループで行動するのは継続しよう。後は、相手がどう動いてくるかによる所が大きいな」


「3人の会話をずっと聞いてたんだけど、それじゃあさっきまでと何も変わってないじゃん。剛は、助けないの?」


 剛と同じグループの安藤里菜あんどうりなが詰め寄る。


「里菜、剛のことは、絶対に助ける。だけどもう少し待ってくれ。ゲーム自体を理解するのも、敵の作戦や考えていることを理解するのにも、まだ時間がかかるんだ」


 俊介が里菜を説得する。


「絶対だからね!」


「うん。約束だ」


「結論は、今までと同じでいいんだよな?」


「あぁ。これ以上、捕まらないで今日を乗り越えよう」


「それなら、時間まで休むぞ俊介」


「そうだな」


 俊介と浩也が公園の中にあるベンチに向かった。

 さて、こころと桃は、どこに行ったんだ?

 砂場に目をやると俊介のグループの夏帆とまなみと一緒に砂いじりをしていた。こんな状況だというのに呑気なことだ。


「何作ってるの?」


「あっ、はやと! トンネル掘ってたの!」


 桃がトンネルに水をかけて掘りやすくしていた。4人共、手がドロドロだ。


「普通、女子ってこういうの嫌いなもんじゃないの?」


「私は、平気だよ」


「夏帆はー、馬鹿だからはやととか話してること難しくて分かんないしー、やることないからこころと桃が何やってるのか気になってー、みたいな。泥とか全然平気ー」


 やり始めたのは、こころだったのか。

 それにしても、今の女子高校生は、やることがないとトンネルを掘るのか。摩訶不思議だ。


「5時からまた始まるから休んでおけよ!」


「うん。はやと君」


 桃だけが返事をした。


「やった! 繋がった!」


「トンネル開通ー」


 やれやれだ。俺も、ベンチに座って休むとしよう。

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