156月3日
仕事の帰り
私は車で国道を走っていた
はずだった
目の前には古いプレハブ小屋
その前に見慣れた顔の男が小さな女の子と手を繋ぎ立っている
父と幼稚園の制服を着た私だ
二人は振り向いて私が来るのを待っている
音がなく 懐かしいこの空間に私は何度も来ている
私は二人と一緒にプレハブ小屋の錆びついた階段を上がる
二階には焼きそばの美味しいお店があった
小さな頃 ここの焼きそばが好きで父によく連れてきてもらい食べていた
席に座ると 父は新聞を読みはじめ
小さな私は焼きそばを食べる
何度も何度も見た光景
でも私は焼きそばを食べれない
食べたいのになぜかいつも食べない
いつもこの二人を見ているだけ
おいしそうに食べている小さな私を見ながら
来月は父の13回忌だと母から電話があったことを思い出す
早めに仕事の休みを取らないと などと考えていると空間が動きはじめた
ああ、もうお別れか。
空間が動く
上手く説明できないけれど
紙をクシャクシャに丸めて広げたときのように目で見えているものすべてが歪み始める
父と小さな私が薄れていく
新聞を見ていた父が顔を上げて私を見ていた
私はハンドルを握ったまま運転席に座っていた
自宅近くの川が見える
時間を確認するとAM1:36
職場を出たのがAM0:30だったから約1時間空白になっていた
助手席には買った覚えのない牛丼が二つ
少し冷めている
今日も焼きそば食べれなかった
と思いながら急いで家に帰った
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