人生現実(リアル)あり非現実(ゲーム)あり

琉兎

第一話 転入生が来たそうです。

『陸くん、イロハすっごく頑張ったよ!』


「うんうん、よく頑張ったねーイロハちゃんっ」


今日も俺の嫁のイロハちゃんが大活躍し、見事ステージクリアだ。流石俺のイロハちゃん、最高だね。


「ちょっと陸、朝っぱらからギャルゲーするとか頭大丈夫?」


「失敬な!これは女の子と絆を深めながらストーリーを進めていく立派なRPGだよ!」


「そんなに怖い顔しないでよ! 面倒くさいわね!根暗系オタク!」


七菜花は相変わらずギャルゲーとRPGの区別がつかない奴だな、俺の幼なじみならいい加減わかってくれよな。


「まあ、そんな事はどうでもいいのよそんな事は。今日転入生が来るんですって、空汰が言ってたわ」


……そんな事?俺の存在理由とも言えるゲームをそんな事扱いだと!?こいつ、ちょっと見た目が可愛いからって言って良いことと悪いことがあるだろうっ


「おい七菜花、そんな事とは聞き捨てならねえ……」


__キーンコーンカーンコーン__


「お前等ー席に着けー早くしないとグーパンしちゃうぞー」


「セーフ!!」


「玖珂、アウトーはい先生からのご褒美グーパンー」


「ちょ、本気ですか先生やめってっうぴゃぁ!!」


玖珂 梓美か、あいつも本当懲りねえよな。今日で2ヶ月目だぞ、よくもまあ毎日遅刻できるよ……あの担任で。


「玖珂ぁ、明日遅刻したら特別にキックしちゃう」


「うぅ、遅刻前提だよこの人、目すっごく輝いてるよぉ」


あいつも苦労人だな、まあ半分以上は自分のせいだが。取り敢えず哀れみの目を向けておこう。睨まれた気がするがしるか。……そういえば七菜花が転入生がどうのってー


「んじゃ、全員揃ったし始めるか。お前等ーやったな!転入生だぞぉー可愛いぞー」


「「「うおーーーー!!!」」」


男子共が一斉に雄叫びを上げた。なんだ、今日は息ぴったりだなこのクラス、こころなしか女子も数名混じってる。


「んじゃ、入ってー」


「おい見ろよ陸、すっげえ可愛いぞあの子!」


俺は二次元にしか興味無いのだが、


「俺は二次元にしか興味な……い……」


え、何で?何で君がここに__


「黒澤 イロハです。宜しくお願いします!」


イロハちゃんが居るの……?


「皆と仲良くなれるように頑張ります!」


俺の視線の先には紛れもなく俺の嫁である きゅんクエ の登場人物の一人、イロハちゃんが立っていたのだった。何故だ意味が分からない二次元であるはずの彼女が何故こんなくそリアルなんかに存在しているんだ?同名ならまだしも姿、声、仕草までもがドンピシャ。ここまで一致するなんておかしすぎる。


「んじゃ、黒澤はー」


そもそもリアルに居ていいのか?俗に言うトリップとかって奴?普通逆じゃない?俺が行くんじゃない??来ちゃってるけど、イロハちゃん来ちゃってるんですけど!!!


「ちょっと、なに百面相してるのよ……陸?」


「来ちゃってるんですけど!!!」


「「「は?」」」


「煩いぞ山崎ーグーパンしちゃうぞー」


「……すみません」


やっちまったぁぁぁぁ!!大声出してしまった、平々凡々な性格送ってるむしろ根暗系オタクと言われるほどの俺が大声!不覚!一生の不覚!あぁ、イロハちゃんハテナ浮かべてるよ、絶対変な人だと思われてるぅぅ!!


「大丈夫かー?陸」


「んなわけあるか」


俺の高校生人生終わった。七菜花の前だけならともかくクラス全員の前だなんて……もう二次元に行こう。きっとイケメンで楽しい人生送れるぞ……


俺がそう決意した時、ふと視界の横にイロハちゃんの笑った顔が見えた。まるで、探し物を見つけた時のようなそんな顔だった。



※小泉 七菜花(こいずみ ななか)陸の幼なじみ


※宮本 空汰(みやもと そらた)陸にやたらと絡んでくるお調子者


※玖珂 梓美(くが あずみ)クラス一の遅刻魔。七菜花の友人


※先生__音無 憂(おとなし ゆう)陸達のクラス担任。少々物理攻撃をするが面倒見の良いタイプ


※黒澤 イロハ(くろさわ いろは)転入生。きゅんクエのイロハと瓜二つ


※きゅんクエとは、人気No.1ゲーム、恋愛系RPG“萌えろ!きゅんきゅんクエスト”の事である。

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