ミル・フォイユ(フィーユ)
直訳すると、1,000枚(mille)の葉っぱ(feuille)となるこのお菓子
日本語表記だとミルフィーユと音が伸びますが、
というわけで、一部のフランス人は興奮するそうなので注意が必要
もっとも、そんな人は私の恩師だけかもしれませんが……(1,000人の娘はさすがに相手にできないとほざいておりました)
ただ、日本ではミル・フィーユという名前で認知されているということで、辞書であっても「フォイユ」ではなく「フィーユ」と表記されています
こうした手違いはチェリー・ジュビレでも少し触れましたが、英語とフランス語の違いがあやふやだった時代に伝わったからでしょう(明治~昭和)
フランス語だとアルファベットのEをウーと発音します(É、アキュート・アクセント がつかない限り)――abcde、アーベーセーデーウー
けど、当時の日本だと英語もフランス語も同じアルファベット
というか、現代においても知らなければ基本的にEをウーと発音することはないかと
なので、もしケーキ屋でミル・フィーユではなく、ミル・フォイユ(※フーユ、フイユ)と表記されていたら、そのお店はフランス的と言えます
※結局、外国語のカタカナ表記は難しいので人によって認識が違う
まぁ、だからといって必ずしも美味しいとは限りませんけどね
さて、このお菓子に関しては大げさな説明はいらないですよね
たいていの人が食べたことがある――ないし、知っているでしょうから
構成は単純で、
基本的には5層――パイ、クリーム、パイ、クリーム、パイ――で、一番上のパイに粉糖かフォンダンをかけたもの(日本だとほぼ粉糖)
だから、個人的に言わせてもらえばパイ、クリーム、パイはミル・フォイユではなく、ただのクリームサンドと言わざるを得ない
使用するパイは基本的に
まぁ、練りこみパイ――バターと生地を混ぜ合わせたモノでもできなくはないですけどね(あらゆるパイ生地のお菓子に言えますが)
そして、ランヴェルセ――バターで生地を包む、逆さ折り込みパイなるものも稀ですがあります
ちなみに、逆さ折りのほうが食感がいいです
デメリットは手間が多く寝かせる時間がかかるくらいで、作業自体はこちらのほうが早いです(技術があれば)
バターで生地を包むといいましても、バターの半分くらいの小麦粉を加えております
まず、この時点で手間ですね
小麦粉と合わせるにはバターを柔らかくしないといけませんし、折り込むとなれば、それをまた冷やして固くしないといけませんから
ただ、折り込むのは早いです
単純にこね回した生地よりも、バター+小麦粉のほうが柔らかいですので(もっとも、すぐ柔らかくなるので手早くやらないと層にならない)
更には、生地同士が重なる部分がないので薄く均一に伸ばせます(生地には弾力性があるので、重なると伸ばしにくく均一にならない)
とはいえ、すぐ柔らかくなる=寝かせる時間も長いので、結果的には逆さ折りのほうが倍近い時間がかかります
食感が良くなるのは生地よりもバターの層が多くなる為――当たり前ですが包む側のほうが層が多く、〈生地〉と〈バター+小麦粉〉だと後者のほうが柔らかく仕上がる
加え、生地を伸ばす時に使う打ち粉の影響(生地のほうが水分量が多いので、グルテンが発生しやすい)
ですので、ランヴェルセで使うバターは水分が少ないものが推奨されています
わかりやすく言いますと、柔らかい層が多い+一番上の層がバターになるからです
一番上――最初に噛む層は
とまぁ、ほぼフィユタージュの説明になってしまいましたが……
このお菓子は1807年フランスの『食通年鑑』とう料理評論誌においても、絶賛されたほどの代物です
今となってはパイとカスタードクリームの組み合わせは鉄板ですが、当時においては驚くべきマリアージュだったのでしょう
考案者はこのエッセイでも度々でてきた、アントナン・カレームだという説が有力
また面白いことに、このお菓子を「ナポレオン」と呼ぶ国も多いそうです
ナポレオンが好んだ、お菓子の皇帝など理由は諸説あるようですが、日本においてはナポレオンの被っていた帽子に似ているからとのこと(日本だと、苺のミルフォイユ=ナポレオン)
では、このミル・フォイユに合わせる紅茶ですが――
正直、コーヒーも合います
パイもクリームも脂肪分が多く、重いですからね
それでいて、個性的な
なので、紅茶だと繊細過ぎないストレート
市販のダージリンやウバ、リーフのアッサムなどが合うでしょう
ミルクティーはちょっと重いですけど、口をすっきりさせるのを諦めるならありです
また、フレーバーティーも悪くない
特にバニラやキャラメル、チョコレートは間違いなく合います
フルーツ系は合わないこともないでしょうが、あまりお勧めはしません
あえて合わせるなら、アールグレイ・イチゴ・バナナ……かな
最後に注意点として、このお菓子は湿気に弱いです
時間が経つことにクリームの水分を吸い、パイのサクっ、ホロっという食感がなくなり、べっちょりとした残念な仕上がりに
なので、閉店間際に買ったりすると悲しい味に出会うこともしばしば
その為、レストランやカフェではミル・フォイユを売りにしているところもあります
すなわち、注文が入ってから
熱々の歯ごたえ抜群のパイ生地と冷たいクリームの相性は最高ですので、もし興味があればお試しください
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