第5話 ムーンライトグリズリー


目覚めた

木の上だった

あまり眠れなかった


「あっそうか、ジュラザの森か」


変な寝かたしたせいか腰が痛かった

木から降り周囲を見渡してみた


「いてて、腰が痛いなんて経験初めてだ」


最初いた場所から動いてはいなかった

今日は森の探索をすることにした

どれだけ強い魔獣がいるか把握しないと危険だ

D~Cのホーンラビット1匹であれだけ手間取ったんだ

もしA~B級に襲われたら勝てる気がしない

オレは歩き始めた

道に迷わないように枝を折りながら歩いた

数分歩くとキレイな小川があった

小川には魚がゆったりと泳いでいた


「よっしゃ、飯ゲットだ」


最初は素手で魚を捕ろうとした

当然とることはできなかった

熊はすげぇ~な、


「どうしよう、危険なく栄養分が取れる絶好の獲物なんだが」


魚はゆったりと泳いでいる

魔眼なら何か分かるかも

オレは魔眼を発動して魚を見てみた


《固体名称:ライトフィッシュ

逃げることに特化しているため危険度はないが味は美味、生食も可能

体にある鱗は水面の揺れを察知することができる

夜になると自ら発光する》


らしい

水面の揺れを察知してるなら下からいけるってことだろ

異世界の知識を総動員した

オレはある考えを思いつき実行した

木に絡まってる、つるや細い枝を編み

網を作ったその網を水中に設置して待った

最初は魚に逃げられが数回繰り返すとコツを掴み3匹とれた

取った魚は枝で刺し


「飯の確保っと」


後ろから突然大きな物音がした

とっさに後ろを見ると大きな熊の魔獣がこちらを睨んでいた


「マジかよ、これは逃げるしかないな」


後ろには子供の熊がリンゴを食べていた

爪は長く、目は3つ、大きな体はゆっくりと間合いをつめてきた

後ろの子熊は親から離れ遠くに逃げた

ハーフヴァンパイアの能力の身体強化を限界まで使った

オレは魔眼を発動させた


《固体名称:ムーンライトグリズリー

魔獣ランク、B~A

注意点、長い爪は大木すら切り

強靭な顎は岩をも砕く》


らしい


「は?いきなりチート過ぎるだろ」


ムーンライトグリズリーは前足を振り

長い爪で攻撃してきた

早さはないが威力は脅威だった

ムーンライトグリズリーの前の木は切れていた


「チェーンソーいらずだな、オイ」


構えてはいるが勝てる気がしない

走って逃げてみた

熊は追いかけてきた上に突進までしてきた

逃げることすら不可能だった


「マジかよ!ハハ.....ハ」


絶望し失笑した

だが死ぬわけにはいかない

ミラがいるから

アイツはオレがいないとダメになる

そう確信していた

生き残る可能性を少しでも高くするため

左目の魔眼は発動したままにしている

最近は発動しても目眩しなくなった

自分の中の魔力量が増えているのだろうか

左手で足元の砂を掴んだ

目潰しに使うためだ

少しでも生き残る可能性を高くしたい

熊は大きな体で突進してきた

ホーンラビットより速くはないが

避けながら砂を目の前に投げた

砂は2つの目に入った


「くそ、全部入れよ」


1つの目は無事だったが砂の入ったことにより

ムーンライトグリズリーは半狂乱になった

それにより攻撃は早さを増した

ムーンライトグリズリーの攻撃によって

体に傷がついた


「逆効果かよ」


だが攻撃は単調になった

単調になったことにより最初より回避しやすくなっていた

ムーンライトグリズリーの攻撃で

半径1メートルの木は切り倒されていた

ムーンライトグリズリーは苦し紛れに

突進してきた

それを避けたと同時に

ムーンライトグリズリーの毛皮を掴み

上にしがみついた

ムーンライトグリズリーの頭までなんとか移動し

残っている目をナイフで刺した

ムーンライトグリズリーは数分暴れた

オレは振り落とされ周りの木はなぎ倒された

足元にあった長めの枝を持ち荒れ狂う

魔獣の動きを読んで潰した目に深く刺した

棒は脳へ届いたようだ

魔獣は数秒暴れたがすぐに絶命した


「あっぶねぇーマジで死ぬかと思った

最初のホーンラビットなんてザコじゃん」


その場に座り混んでしまった

ムーンライトグリズリーとの戦いは2日間に及んでいた

空はいつの間にか星空になっていた

人間だったら最初の一発で死んでいたな

ハーフヴァンパイアの能力を総動員して

やっと勝てた

次やっても勝てるかわからない

本当にたまたま勝てた

運が良かっただけだ。

慢心してはいけないな命取りだ

いつの間にか子熊はいなくなっていた

オレはムーンライトグリズリーの死体を放置し火をおこした

昨日やってコツを掴んでいたから一時間で火種はできた

火をつくりとっておいた魚を焼いて食った


「寝床どうしよう周りに木ないぞ」


独り言が寂しく響いた

しょうがないからその場で寝ることにした

何か来ても俺よりグリズリーを食うだろう

疲れていたのか目を閉じると同時に眠りについた


     ..............................


目覚めたらムーンライトグリズリーとの戦いでついた傷はキレイになくなっていた


「マジかよ、自然治癒力もすげぇーな」


切り傷ばかりだな人間なら3週間はかかる傷だった

使った魔力も回復し量も増えた


「今日はどうしよう、、、探索するとアイツに会うかも、このままここにいよ」


それからの2週間と4日は無我夢中で

乗り越えた

ホーンラビットの群れにも襲われた

犬の魔獣の群れにも襲われた

蛇の魔獣にも襲われた

間違えて毒キノコを食べそうになったり

慣れない物を食べたからか腹痛にもなった

洞窟を見つけ深く入りすぎて迷ったりもしたが何とか乗り切った


「3週間たったぞぉー」


オレは喜びのあまり叫んでしまった

ジュラザの森でオレに勝てる魔獣はいなくなっていた

どうやらムーンライトグリズリーが

ジュラザの森の中では一番強かったらしい

出来ればもう会いたくないが

後ろの茂みから足音がした

やっときたかロリッ娘め


「元気にやっておったか?」


やはりミラだった

指輪のせいで怒りはしなかったがイラッとした

振り向きミラに近寄る

ミラはニヤニヤしながらこっちを見ている

オレはナイフをしまいミラのほっぺたを両手で引っ張ってやった


「いはい、いはいそ、りふと」


今回はこれで許すか

正直ミラの顔を見たら

張り詰めていた緊張が一気に切れた

オレはその場に座りこんでしまった


「少しは強くなったのか?」


答える気力も残ってなかった

オレは座ったまま無言だった


「まぁーその話は後でよいかの」


ミラはそう言うとオレの肩に手を置き呪文を唱え

俺を転移させた

今度はミラも一緒に転移したみたいだ

場所はエメリカの町の門前だ


「ほら、立たんかエメリカの町じゃぞ」


ミラはオレに立てと要求してる

こんな移動手段あるならジュラザの森の移動の時使えばいいのに

しぶしぶ立ち門まで歩いた

門兵はこちらに気づくと槍を向けてきた


「戻って来なくても良かったのにゴミが」


構えると同時に罵声を浴びせてきた

ミラは無視しながら通り過ぎようとしたがオレは我慢の限界だった

門兵に近寄りハーフヴァンパイアの能力

殺気強化を全開にして言った


「黙れ次喋ったら殺すぞ」


構えていた槍を持つ手は恐怖で震え

その震えは全身にまで及んだ

門兵は胯間を濡らし顔は恐怖で歪み

腰を抜かし、叫ぶことすらできずに這いつくばって逃げた

その姿を見た町の住人は笑い

門兵は真っ赤になりながら仕事を放置して逃げた

あの門兵は2度と仕事にはこれないだろう


「くく.....くはは..........くぁーはっはっはっ」


ミラは腹を抱えて笑っていた

オレも溜まっていた鬱憤を解消できて

スッキリした


「いやぁ~想像以上に成長しておるな」


対して実感はないが成長しているのは

確かだろう、なんせA級の魔獣を倒したからな

成長しない方がおかしい

むしろ成長していないとか言われたら立ち直れないだろう


「スキルカードを使うのが楽しみじゃ」


ミラは涙を拭きながら言った

この涙は悲しみで出たものではない


「オレがジュラザの森にいるあいだ何してた?」


「少し調べものをしておった、お主には関係ないから気にするな」


ミラは神妙な表情に変わった

その声はこれ以上聞くなという警告の声だった

オレは寂しいと思った

こっちに来てからいろいろと教えてくれたミラが初めてオレを突き放したように感じたからだ


「そ、そうか」


声に出さないように気を付けたつもりだったが感情のこもった声になってしまった

ミラはオレの声を聞き狼狽えた


「いや、リクトに関係ないとは悪い意味ではなくてだな、、あぁ~その関係ないというのはだな、妾の問題に巻き込みたくないということでリクトを嫌いになったわけではないのじゃ」


白髪を腰まで伸ばし

あどけなさが残る顔をしている

ミラはテンパってその深紅の瞳をキョロキョロさせた


「ミラにとってオレ(パートナー)はそれぐらいの存在か」


ミラの気持ちがわかり寂しさは消えた

心配してくれるのは正直うれしいが仲間外れにされている感覚があった

オレはさらに声に感情を込めて言った

悲しみと寂しいという感情を

今度のはわざとだった

少しイタズラしたくなった


「いやリクトは妾にとって一番じゃ

それ以上に大切な存在はない

ないがしろにするわけがなかろう」


混乱して言葉を選んでいる余裕などないのだろう

いつもなら言葉を選び当たり障りのない返事をする

そんなミラをニヤニヤしながら見ているとオレの様子に気付いたミラはようやくイタズラされていることに気が付いた

顔を真っ赤にし自分の言葉を思いだし

恥ずかしさのあまりしゃがみこんでうめいていた


「あぁー懐かしいやっぱり可愛いな

癒されるぅー」


無意識のうちに言葉に出ていた

さらに追い打ちとなったみたいだ

オレの言葉にビクッとした

その小さな肩は小刻みに揺れていた

小動物の用な可愛らしさがあった


「仕返しは終わったし

これからどこ行くんだミラ」


3週間もジュラザの森に放置した仕返しを終わらせ話題を変えた


「そんなに妾の問題に首を突っ込みたいなら覚悟せよ

妾の問題はちとハードじゃぞ

いまさら嫌だとは言うまいな」


ミラは立ち直ったがオレが自分の墓穴を掘ったみたいだ

ヤバイ、調子に乗りすぎた


「い.....いや.....謝るから許して」


オレの言葉を無視しミラは説明を始めた


「うるさい!お主が言ったことじゃそれにもとよりお主は連れていくつもじゃった

森に放置したのも最低でも自分の身は自分で守れる用にするためじゃしな

妾の元配下が奴隷になっているから助けに行くぞ」


ミラは何も言わせないふうに言った


「..........マジかよ」

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