魔王様は(政略結婚からも)逃げられない「ゲーム転生」

@koori58

プロローグ

 俺はもう無理かもしれない。

 今、魔王城にある秘密の抜け道の途中で、この文章を書いてる。

 もし、この文を見つけた人がいたならば、俺を同情してほしい。

 慰めて欲しい。

 助けてほしい。

 いや、すまない。助けて欲しいは言い過ぎた。

 助けられてもらったら、これを拾った君がどうなるかわかったものじゃないので、助けなくてもいい。

 ただ、これを拾って読んだ人がいるならば、あいつも頑張ったんだなと密かに応援して、冥福を祈ってくれれば、それだけで十分だ。

 あれほど頑張ってきた魔王町から逃げ出すのが本当に心ぐるしい。

 部下達にも迷惑をかけているだろう。

 しかし、

 しかしだ!!

 無理なものは無理なんだ。

 毒殺か、毒殺なのかと思わせるような料理を食うのも、毎日毎日、部屋のベットに入ってきて、罵詈罵声の言い合いを身近で聞かされるのも、何かあるとお互いの足をひっぱりあいをしてるのに、表面上は笑顔で笑いあってるうすら寒い光景を見るのも、本当につらい。

 つらすぎて髪の毛が抜けていくような感覚さえある。

 俺はもしかしたら、とっくに病んでいるのかもしれない。

 だってほら、

 暗闇の中から、あの六人の笑い声が聞こえてくるんだもの。

 ああ、もうだめだ。


 ―――どうしてこうなった



 

  


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