『クレイドル』─時空のハルカ─
みゃも
第1話 夢は叶った!?
プロローグ
──西暦2289年7月──
時は今、《銀河惑星連合》の時代である……。
深くも眩く美しい幾億もの星々や銀河が煌めくこの大宇宙の一角に、リング状の姿形をした巨大な人工建造物群が次第に見え始めてきた。
その建造物群へと向かい、一機の亜・宙旅客機が《オーバードライブ航法》を用い、光速に近い速度で、瞬く間に急最接近して来る。
『こちら、マリアナ宙亜航空、亜・宙旅客機AZ208便。《【
『こちら、《【
亜・宙旅客機AZ208便、《
[チャンネル番号:a7A―3856-35]にて、疑似テスト・ダミーアンカー完了後、速やかに通過せよ』
『AZ208便、《a7A―3856-35》了解。安全確認後、《ゲート1番基》を《使用》する』
内径部だけで1キロメートル以上もある巨大な建造物の中心部へと向け、亜・宙旅客機から光り輝く擬似テスト・アンカーが射出された。
間もなく、円形建造物の内径部から中心部へと向かい、光が一斉に射し込み、亜・宙旅客機から射出されたテストアンカーは、その光の中で消失する。
数十光年もの距離を、一瞬にして、飛び越えていたのだ。
『機内乗客乗員にお知らせ致します。
ただいま、擬似テスト・ダミーアンカーが亜空間 《【
これより当機は《【HOP】チャリアビティーポリス》より、《【HOP】ホウスパークンス》へと向かいます。
安全のため、シートベルトの着用をよろしくお願い致します』
機内アナウンスが鳴り響き、旅客機内の各乗客員はシートベルトは着用し始めた。
「あなた、もう間もなくこの旅も終わるのね。勘とコウへのお土産もあるし、あの子達、喜んでくれるかしら?」
「ああ、きっと喜んでくれるだろうさ。ハハ♪」
二人の夫婦がそのような他愛も無い会話を笑顔で楽しむ中、亜・宙旅客機AZ208便は、《【HOP】ゲート》中心部へと向かい、左右三基づつ合計六基もある青白い色を後方に放つ《高圧式レーザーホールスラスター・エンジン》を噴射し、速度を増してゆく。
しかし──この時、思いもしない事件が起こった。
「指令、大変です! 《【
テロとのことです!
それにより、《【HOP】ゲート》への電力供給が規定値に足りていない、との緊急警報が発令されました!!」
「なんだとっ!? 《ゲート》使用中の旅客機に対し、速やかに使用停止命令を!」
「──ダメです、もう間に合いません!!」
「くそっ! なんてことだ……。
フォールトトレラント-IS課、緊急対応を求める! F―IS課、どうした! 早く急いでくれ!!」
「あ……は、はい。今……い、ぃま、直ぐに!」
しかし、緊急対応を求められたその若き女性技術職員は、目の前のVR画面上に限りなく重なり合い表示され流れ続ける、おびただしい数の
こうして後日、亜・宙旅客機AZ208便は《消息不明》として正式報告され、搭乗旅客客員287名は皆行方不明となり、大事件として歴史の1ページに残ることとなった──。
『
……それはかつて、人類の夢。そう、時空をも超え、超長距離を一瞬にして移動する。それはまさに……我々人類にとって、長い間、夢物語に過ぎなかった。
しかし、今からおよそ二百年前。我々人類は初めて、それまで夢の中でしか想い描くことの叶わなかった亜空間移動を果たす
【
但し、それを実現可能にするには、【HOP】という超重量級でリング状の姿形をした大型機械である《【HOP】ゲート》が、先に到達点に在ることが必須条件であった。《空間歪曲型ワープ》を実現可能にする為には、到達点にゲートの存在が必要不可欠であるからだ。
その為に、何よりも早く、そしてより遠くへと、《【HOP】ゲート》を飛ばすことが最優先課題となった。
そこで人類は新たに、《オーバードライブ航法》を開発する。
それは、光速航行を可能にした人類初の試みの集大成である。そうして人類は、本格的な宇宙大航海新時代を迎えたのだ。
そうした夢のような時代は……それから更に進み。あの事件発生から、凡そ八年後の西暦2297年4月。
《【HOP】ゲート》全てを統括管理管制している《【HOP】中央管理管制室》へと、一人の少女が入所しようとしていた。
これから語られるこの物語は、そうした時代の中で夢を果たし叶えていきながらも苦労をする。そのような、実に何気ない日常を描いた、小さな未来の夢物語である──。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます