【残念なイケメン】ショートストーリー集

神無月やよい

えいぷりるふ~る【レイフ編】


 朝食を済ませた二人は、のんびりと食後のお茶を楽しんでいた。

ふと思い出した様子で、エレナが朝日に輝く金髪を揺らして、隣に座る彼に話しかけた。

「ねえ、レイフ。

そういえば、ピーターさんがね?

こないだ青い色の羊が生まれたって言ってきたの。

折角だから今日、見に行ってみない?」

城下町で飲食店を営む同郷人は、町から少し離れた場所に羊舎を建て、飼育している。

微笑み、天気もいいから遠足にぴったりだと誘ってみた。

これは昨日、侍女のサラと二人で必死に、四月馬鹿エイプリフールネタを考えたのだった。

足組み座っているレイフが白い歯を見せ、にっこり笑って肩をすくめる。

「へえ~、それは興味深いね。

今日が月初めじゃなかったら、見に行ったのに……」

残念そうに首を振り、政務を理由に断った。

「山と積まれた書類が僕を待ってる」

そして彼女の耳元で、ねぼけて間違えたのをささやき教えた。

「所でエレナ。

朝ちらっと見たけど、今はいてる下着、前と後ろが逆だよ?」

「うそ!?」

とっさに両手でスカートをおさえ、耳まで真っ赤にして恥ずかしがった。

おかしそうにレイフは笑って片手を振り、護衛のランスを連れ、部屋を出て行ってしまった。

残されたエレナは不安から思わず、そっとスカートをまくしあげ、確めた。

若草色に染め、レースで花をあしらった可愛い下着を前後正しくはいていた。

「はあ……

今年も彼にしてやられたか」

だまされたとがっくり肩を落とし、スカートを直す。

私室を出る直前、レイフは一枚のカードをわざと落とした。

気づいたサラが拾い上げ、無念そうに女主人へ差し出す。

「奥様……

来年こそは私共が、旦那様をだましとう御座いますねえ……」

【来年頑張ってね?

子羊ちゃん】

カードに書かれた文面を見つめ、大きくため息を漏らす。

「彼、どんな話題ならびっくりするのかしら?」

笑って許される内容は何か?

しばらく真剣に考え込んだのだった。

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