私のプロローグ
10月16日
こんにちは、どこかに住む誰かさん。
すこしだけ、私の話をさせてください。飽きてしまったら、途中で捨てても構いません。私が書きたくて書いているだけですから。
——私は、何か間違っていたのでしょうか。
私は、何を間違えてしまったのでしょうか。
私は、いつから間違えていたのでしょうか。
よく、分からなくなります。
自分のこと。私は、いつ、こうなってしまったのでしょうか。
私の街には〝ほし〟があります。
〝ほし〟は、すべてのものの原点だといわれています。つまり〝ほし〟が無ければ私たちは今ここに居らず、普通に暮らすこともできないのです。
私たちは学校で〝ほし〟について学びます。今より何十年も何百年も前から〝ほし〟は街の人たちに大切にされてきました。でも、街の人で〝ほし〟を見た人はいません。…………私を除いて。
〝ほし〟はすべての原点であり、謎です。その存在は、実体は何なのかを、街の人々は知りません。生きものなのか、道具なのか、はたまた「夢」であるのか、街の人々は知りません。そして、私も。
私が昔〝ほし〟を見たとき、その存在は言いました。
『世界は、変えられるよ』
私はそのとき、その言葉の意味がよく解りませんでした。今でもずっと、謎のままです。
そのとき、私には悩みがありました。漠然と、何かを変えたいと思っていました。けれど「世界」というほど規模の大きな悩みだったでしょうか。自分でも、よく分かりません。そもそも、そのような力を自分が持っているとは思えないのです。
あれからしばらく経ちましたが、私は未だに前へ進めていません。
毎日がありきたりで。なんの変化も無くて。夢さえも無くて。
このままずっと、こうして過ごしていくのでしょうか。
あのときの〝ほし〟の言葉は、何だったのでしょう。
もし私に本当にそんな力があるとするならば、すこしだけその力を信じてみたいです。信じたからといって、この退屈な日常が変わるという保証があるわけではないけれど。とりあえず今は、ここから抜け出したい気がしています。
・ + ♪ + ・
ぽとり。
私はペンを置いた。
これで、何回目になるのだろう。
物心がついた時から誕生日の度に書いている、全く同じ内容の手紙。
誰に宛てる訳でもなく、いつも瓶に入れて海に流している。
昔読んだ本に書いてあった手紙の出し方だ。
誰にも届かないかもしれないけれど。
届いても、捨てられてしまうかもしれないけれど。
それでも私は、手紙を書く。多分、これからも。
世界中の誰に届くか分からない手紙を。
——あ、星。
いつの間にか、夜になっていた。
きっと明日も同じように、この窓から星を眺めるのだろう。
とりあえず、眠ろう。
何をしたって明日は来るのだから。……絶対、とは言い切れないけれど。
いつも通りの、つまらない明日が待っているはずなのだから。
——おやすみなさい。
せめて夢の中でだけでも、夢が見られますように。
ただそれだけを願って、私は眠りについた。
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