はじまりの日-3








風・二六



 鬱蒼とした森は見通しが悪い。次どうするべきかわからない。アーリアの隣には血に塗れたロウと一人の少女が倒れている。


「ん、」

「!」


 アーリアは彼女が意識を取り戻したことに気付くと駆け寄った。大きな怪我がないことは既にもう確かめている。彼女が気絶をしたのはあの爆発と、ロウの無茶なスピード強化のせいだろう。


 呆けたように瞬きを繰り返す彼女の顔を覗きこんだ。


「ねえ、大丈夫?しっかりして」

「あ、………私っ」

「大丈夫。足のかすり傷がひどいけど特に動けない怪我はないわ」

「ロウ……シャンは?」

「ロウは無事よ。ねえ一体何があったの?あなたは、一体なんなの?」


 黒い瞳がぼんやりと辺りを見回し、アーリアを捕える。


「わからない…食堂で仕事をしていたらいきなり、さっきの奴が現れて、そして、二人が逃げろって」


 だんだんと意識がはっきりしてきたのか、話しながらも彼女の顔は顔が青白くなっていった。


「敵襲ってこと?この学院の中で、そんなことありえない!」

「でも、」


 アーリアは思わず声を荒げてしまった。


 いや、わかっている。そうは言いつつも、目の前で〝鴉の宿木〟と思しき集団が、彼女とロウを襲っていたのだ。ありえなくても、ありえていることは分かっている。それでも頭がすぐにそれを受け入れない。


「あなた、ねえ名前は何て言うの?」

「琴子」

「コトコ、私はアーリアよ。ロウを運ぶから手伝って。寮の方に敵はいるのね?ならこのまま奥へ行って、+Aと合流した方がいいわ」


 ここよりもさらに奥に入ったところで五回生が演習を行っている。そこにはトシもいるはずだし、何よりも教官がいるだろう。現状をすぐさま報告する必要がある。


 アーリアは何とか次の行動の目星をつけると、自身を落ち着かせるように息を吐いた。


「私についてきて」







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