第4話 魔王、軍団を執る4

歩く茸マタンゴとかの仲間なのか?

茸から進化した小人、キノコビトとでも呼ぶべきだろうか。

初めての配下が茸というのもどうかと思うが、俺の魔王レベルではこの辺りが丁度いいかもしれない。

でも同じ木っていうことは


「・・・まさか今の茸ってお前らの子どもとかじゃないよな?」


「わ、私たちの子どもをお食べになりたいと・・・」


「いやいやいやいやいやいや!!待って!待って!待って!お願い!マジで待って下さい!!」


違うならいいんだって。

食べたいっていったらくれるつもりなのか・・・

赤子を生贄に要求とか魔王レベルEXTREME過ぎる。

やっぱり迂闊な事言えないな。言行の全てに重い責任が伴う。これも魔王の責務ということか。


こうして、茸小人達の子どもを食べることは無く、代わりに我先にと、茸小人達各々が持ってくる茸を食することになった。

何せこの小ささであるから、俺に一瞬だけでも触れたら即死であろう事は間違いない。

絶対に直接触れるなよ、という事を厳重に命じながらの歓迎の宴?は珍獣への餌やりイベントのような体を成していたが、お互いの契りを確認する良い宴には成ったようである。

出来れば炭火と醤油くらいは欲しい所だったが。




さて、この度目出度く魔王軍の初めての配下として、茸小人達が加わった。

やはり魔王軍の首領として、配下の者供を深く理解する必要があろう。

民族の生態を知るにはその基本、つまり衣、食、住を理解することだ。

ここは一つずつ確認して行こう。


この茸小人達は衣は・・・ぶっちゃけ何も着ていない。

服や帽子に見えるのは生まれつきの物で、衣服を作るという習慣もないようだ。

草を編んだり、小枝を組んだりで簡単な道具は使っているが、俺の役に立つような物が作れるかは正直怪しい。


食はというと、これまでの経緯の通り、茸の栽培が主な食料源である。

朽木を利用した茸栽培は中々理に適っており、何種類かの茸を結構な数、栽培している。いずれも俺にも食用が可能なものだった。

食糧探しで森をうろついている時にも茸の生えた木を時折見かけたが、安全性に不安があったので、手を出さなかったのだ。

今から思うとあれも茸小人達の畑だったのだろう。

取り合えず食料問題に関しては最悪の状態を脱したと見て良さそうだ。


更に言うと、彼らが俺の事を崇めている理由の一つはどうも茸栽培に適した木をいくつも創ってしまったかららしい。

何だかんだでかなりの木を倒したり、燃やしたりしてたからな。

この森は安全ではあるが、安定しすぎているという事か。

確か極相林とかいうのだったか?

森が成長し切って変化が起きづらくなった状態。

新しく切り倒す事でもなければ、開拓も出来まい。

階層ヒエラルキーが確定してしまい、弱者は弱者として留め置かれる。

共感を覚えないでもない。

そう考えると割と魔王の配下に相応しい者達なのかもしれない。


俺も破壊と再生の魔神みたいで結構格好良いし。

魔神というより茸神じゃないかというツッコミは無視する。

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