第27話 イヤなやつら
露天通り。
お祭りの匂いがする場所。懐かしい雰囲気の場所。
「ふんふふーん、お買い物~お買い物~」
今日は良い日だ。
ヤマトに服を買ってもらうのだ。私はスキップする。
「おい、あまりはしゃぐなよヒナミ」
ヤマトに注意された。
「はーい」
しょうがない、スキップは止めておこう。
でも私のワクワクは止められない。
「さて、先ずは換金か……」
私はヤマトの着物を掴んでついていく。
通りには人が多くなってきた。
見た目が動物さんの人も多い。
7割くらいは、動物さんかもしれない。
こうして見ると人間さんタイプはレアなのかな?
ヤマトみたいな三つ目さんや、角が生えてる人も、人間さんタイプになればだけど。
うーん、角も尻尾も目も多くない、私みたいな完全な人間さんが見当たらない。
「もしかして、私ってかなり珍しい?」
「……今頃気付いたのか?」
ヤマトが呆れたように言う。
私はレアらしい。
「ぶほ! おい、みな見ろよ女殺しぞ!」
「うわぁ、月が陰るわー」
「ゲぇッゲゲゲげ、ケケケ。疫病神よの!」
歩いてると、前から柄の悪い奴らがやってきた。
大きい牛と、角が生えてるお姉さんと、カエルだ。
みんな服は着ている。
「なんだ、雑魚どもが」
ヤマトもスゴイ柄が悪くなった。目付きが危ない。
「ぶはっ! のう、里見。目を合わせるなよ呪われる」
「わーかってるって!」
お姉さんがヤマトから離れる。ヤマトを見るのも嫌そうだ。
「ケケケゲゲ、我らを雑魚呼ばわりか。粋がりも程にせよ、女殺し」
カエルさんがゲコゲコ笑う。
この三人ヤマトと仲が悪そう。早くどっかに行ってくれないかな~。お買い物できない。
「あら、可愛らしい子を連れてるじゃあないの? ん、その子女の子?」
うわ、お姉さんに見つかった。
「ぶは! 女のわけ無かろうが、可愛らしい格好をさせておるが……呪印付きの首輪してるってことは奴隷か?」
「ゲゲゲげげ、なんぞなんぞ。女に相手されんので遂に衆道に走りおったか? それもそんな幼子を!」
何だかとても失礼なこと言われる気がする。コイツら、イヤなやつらだ。
「貴様ら!」
ヤマトが刀に手をやる……そして問答無用で牛男に切りかかった。
ヤマトが刀を抜くのは見えなかった。でも、抜いたのだろう……ヤマトの刀は牛男の刀に止められている。
「ぶははっ! 腕が上がっておるわ!」
「ゲコゲコゲコ危なし危なし」
カエル男は手で印のようなものを組んでいた。印の先から青い光が出で、それがヤマトの体に伸びている。
「くぐっ」
ヤマトが唸る。苦しそうだ。
「ボウヤぁ。貴方証人になってちょうだい?」
いつの間にかお姉さんが近くにいて、私を覗き込んでいた。
「へ? ぼうや、証人?」
私は思った……何言ってるんだろこの人、と。
「そうよ、この男から切りかかったってね。そうすれば自由にしてあげる。少しなら金子もあげるわ。良い条件でしょう?」
「んー? お断りします」
「あらあら、可愛そうに……頭が弱いのねぇ」
不憫そうな目で見られた。失礼なお姉さんだ。
「良い? 私の見立てではその呪印、ヤマトが死ねば効果はなくなるわ。つまり貴方は自由になれるのよ……もしかして、一人になるのか不安なのかしら? 貴方はなかなか可愛いから、あの男の代わりに私が飼ってあげても良いわよ。可愛がってあげるわ」
「んー、やめときますー」
取り合えず断っときました。レディのたしなみです。
「そう……仕方ないわね。少し面倒になるわねぇ」
お姉さんが言う。
「ぶははははは! フラれたな、里見!」
「げこっ、ゲコ。さっさと殺せ、文太! そろそろ持たんぞ!」
カエル男が牛男に言う。
「応っ!」
牛男がこたえる。
「……くっ」
ヤマトが言う。
なんだか危ない様子。
「おりゃー」
私は、火トカゲ君をありったけ出して、牛とカエルを攻撃する。
「げここ?」「ぶは!? うあち、熱、あつぅ!」
牛は驚いて飛び退いたけど、カエルの方には効果が薄い様子。
カエルの体は水色の薄い膜みたいなモノに覆われている……火トカゲ君の火が効いてない。
ヤマトはまだ動けない。
私はピコーンと、閃いた。ヤマトに向かって走る。
そのままの勢いで動けないヤマトに飛び付いた。
____シューー
空気が抜けるような音と共に、ヤマトの体を覆っていた青い光が消える。
「げこここ!?」「ぶほぉ!」「嘘ぉ?」
三人組が変な声を出した。
「……助かったヒナミ」
良かった、ヤマトは自由になったらしい。
「もう一度止められるかしら、原動?」
お姉さんがカエルに目配せする。
「無体な、もう無理ぞ」
「ぶははっ! 計画は失敗かあ、よし! とっとと逃げるぞ」
三人組はサッと距離を取ったと思うと、人混みに紛れて見えなくなった。
すんごい、逃げ足の早さ。
あまりに見事なので感心する。
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