第13話 ヒナミは逃げ出した!
……ヤマトがすごい睨んでくる。
やっばああい。もしかして、もしかして。人に向かってカマイタチさんをぶっ飛ばすのはいけないことなのかな? …………うん、普通に考えるといけないことだ。でも、でも! 私はヤマトに2回ほど術の的にされた! そうだよ、うん。私は悪くない! ……悪くないよね?
うう。でもヤマトにも何か理由があったみたいだし、えーと私に術が効くかどうかを確認するとか、何とか言ってたような。
じゃあやっぱり私が悪いの?
ヤマトにまた、お尻ぺんぺんされるかもしれない。
__私は睨んでくるヤマトからダッシュで逃げ出した。
全力で足を動かす。
なんか前にもヤマトから逃げた気がする。あの時は確か、刀の鞘を足に投げられて転ばされた。よし、逃げるときは足元にも注意しよう!
あ。でも、逃げたはいいけどすぐに捕まりそうな気もする。ヤマトって足早そうだし。
ちらっと後ろを振りかえる。ヤマトは立ったまま。追ってくる様子はない。
これはチャンスだ! 逃げろ逃げろ!
「ぜーぜーぜー」
私は、全力ダッシュを頑張った。
結構な距離を走ったと思う。
に、逃げ切ったかも?
ヤマトが追ってきていないか不安でドキドキしながら、後ろを見る。……ヤマトの姿はない。
やったああああ! お尻ぺんぺんから逃げ切ったよ。よくやった私。
「ぜーぜーぜー。……ん?」
ふと冷静になって周りを見ると……相変わらずの草原、よく知らない場所。まあ、当然かな。この鳥さんの場所には、そもそも今日初めて来たし。
「でも出口ドコだろ?」
問題は……帰り道が分からないこと。
確かあっちの方から逃げてきたような気がするけど、自信ない。途中で廃墟を回りこむようにして逃げたり、ヤマトに追いつかれないよういろいろ工夫したから。
「……おーい、やまとー」
魔物が寄ってきてはいけないので、小声でヤマトを呼んでみる。
__返事はない。
まったくもう! 私が困っているのに使えないヤマトだ。
……でも、本当にどうしよう。不安になってきた。もしかして、このまま帰れないのでは。
「うううう。やまとー、おーい。どこー?」
困ったな、返事してくれない。
「うううう。ぐすっ」
と、取りあえず身を隠せる場所に行こう。スズメさんとかコウモリさんとかに襲われては危ない。
少し遠くにポツンと木造の建物がある。当然ボロボロ。あそこまで行こう。
でも、なんでこんな草原に建物がポツポツ建ってるのかな? 不思議な場所だ。私は不安な気持ちを誤魔化すために遠くに見える廃墟を観察してみる。
廃墟は神社のなかにある建物に似ている。神社の本殿とかをかなり小さくコンパクトにまとめた感じ。それが草原に点在してる。あそこで人が住んでたのかな? 住みにくそうな場所だけどなー。
私がとぼとぼ下を向いて歩いていると、あれ? 急に、周りが暗くなった。さっきまでは、月明りがあって明るかったのに。
上を見上げてみる。
おっきいカラスさんがいた。どれくらい大きいかというと、高さ的に見てもヤマトの3倍はある。
それが、私を覗き込むようにして立っていた。
__あ。私、死んだかもしれない。
このカラスさん。いつの間に飛んできたのか全然、分からなかった。
カラスさんの色は真っ白で、足は何でか知らないけど3本ある。
でもそんなことより、存在感が違う。
私でもわかる。このカラスはさっきまで襲ってきていたスズメさんとかコウモリさんとかと、別格の存在だ。
戦う気が起きません。
だから、私は死んだふりをすることにした。
__パタ
うつ伏せに倒れる。
私は死んでます。
__トントン
死んだふりをして倒れていると、背中に何か硬いものが当たった。
声が出そうになるのを必死で抑える。
__トントン
これはたぶん、カラスさんのクチバシだ。クチバシで突いて、私が生きているかどうかを確認しているのではないかしら。
私は死んでます。食べてもおいしくないです。
__トントン
私は死んでます! 食べてもおいしくないです!
__トン
クチバシが私の背中の上で止まる。
そのままクチバシが、スウッと私の背中を触りながらお尻に方に来る。
__プニプニ
そんな音が聞こえた気がした。
カラスさんはあろうことか私のお尻をつついた!
「こらあ! お尻をつつくなあー!?」
私は飛び起きて、怒鳴った。
白いカラスさんはビクッとした。そして、首を傾げる様にして私をじっと見つめてくる。
「……あ」
ピンチ。つい、お尻をつつかれて怒鳴ってしまった。
私を見つめてくるカラスさんの瞳は、真ん丸でとっても大きい。
その瞳の先には、大きなクチバシ。あれで本気で突かれたら、私はすぐに死んじゃう自信がある。
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