ロードの出来ないセーブデータ

カゲショウ

第01通 世界で一番最高で無駄な時間をくれた君達へ送る


 君達と出会ったのは、きっと僕の人生において一番無駄であり、最高だった。


 そう思わせてくれるほど、君との時間は楽しいものだったよと、今僕は君に伝えたくて筆を執る事にするよ。

 とは言ったものの一体何から書き始めればいいんだろうね。出会った当初の事から書き始めようか? なんて考えたりもしたけど、正直よく覚えていないんだ。きっかけも最初にかけた言葉もかけられた言葉も曖昧で……。ただ一緒になって笑っていた事だけは覚えているよ。


 そんな僕たちが最初に一緒になってはまった事は何だったかな。というかそんなのあったっけ? 皆が皆特出した個性の固まりみたいでそれぞれに好きなものがあって……共通の話題って殆どなかったな。互いの揚げ足をとったりして遊んでた記憶しかないや。

 まぁ、そんな毎日が楽しかったというか、寧ろそんな日々の中で生きてこれたことが楽しかったというか……。何ともまぁ子供らしいやり取りだったなとは思うけどね。

 互いが互いを牽制し、時には結託し、全力を持って揚げ足を取っていく。字面だけだともはや敵対関係にある国同士のやり取りみたいな感じだけど、実際は違ってた……よね? 自惚れてもいいよね。逆にあれが全部演技で嫌々付き合ってましたって言われたら普通に泣くから。だから、これを書いてる間は仲が良かったのだと思っています。


 そんな毎日が中学だけじゃなくて、高校まで続くなんて思ってもいませんでしたよ。ええ、本当に。

 君達、高校生にもなったのに結局あまり変わらなかったよね。周りの人達はそれなりの落ち着きとか、一歩引いた大人な対応とかできてたのに、君達したことあったっけ? 寧ろ高校でも似たような輩が増えて悪化した気がするんだよね。中身変わらないまま高校生になった感じ。どこぞの小学生探偵の逆かよ、と自分の中ではベストオブツッコみをほぼ毎日してたよ。

 部活もそれぞれ別々の所に入ってクラスも別々だったのに、何となく集まって駄弁って時々大暴れ。うん、人の事言えないけど随分と暇人だったね、僕達。

 まぁ進級するにつれて勉強とかが忙しくてあまり会う時間も無くなって来たんだけど……。それでも会えば何食わぬ顔で喧嘩吹っかけてくる君達は本当に誇りに思うよ。この野郎。

 高校で知り合った君達もホント、この野郎だよね。野郎じゃない人もいるけど、もはや野郎みたいなも……冗談です。ごめんなさい。

 でも総じてアホの集まりだった僕達の輪に加わった新たなるアホの存在は、アホを加速しかさせてなかったよなと今更ながらに思います。アホの二乗効果でアホは更なる高みへ昇華できるのだと心底どうでもいい真理を知りました。

 でも、この下らない真理も君達といなければ知らなかったと思うと、ちょっとだけ得した気分だね。


 それからそんな毎日が続いて、当たり前のように卒業して自分の進路を歩み始めた君達。流石に今度は同じ所に進学とか就職とかはしなくてある意味安心できたよ。ただ、約一、二名程心配な奴等もいたけど……。

 まぁそんな事は過去の事で、いい思い出だったという言葉で流しておくとしよう。

 そんな君達とは今でも細々と連絡は取ってるし、会ったりもする。それでも、昔よりかは会わなくなったし話もできなくなったと最近思うのです。

 それは社会人になって、それぞれの夢に大きな一歩を踏み出したからだろうね。うん。めでたい事だ。

 結婚した奴もいれば、結婚より仕事をバリバリやってる奴もいる。どこぞのアホは昔から変わらない発想と行動力で空想を形にしようと頑張ってる。僕はそんな君達を誇りに思うし、世界に向かって自慢してやってもいい。

 それでもやっぱり思う時はある。いや、そんな世界に身を置き始めて気づいた事、の方が表現的に正しいんだろうね。


 君たちと過ごしたあの時間は本当に非生産的で未来に繋げられる力を育むことはできなかったよ。実にナンセンスな時間だった。きっとあの時間を何か別の事に当ててたらもっと生産的な時間をおくれただろうね。

 でも、僕はその時間が無価値だったとは言わないよ。寧ろずっとあの時間の中に閉じこもっていたい気さえした。……っていうと、君達は寄ってたかって僕を弄ってくるんだろうけどね。でも本当の事さ。


 君達といて本当に良かった。君達と出会えて本当に良かった。


 最高に無駄な時間をありがとう。


 そんな思いを込めて、僕は今日この筆を執りました。どうしてこんな事書いたのかって言われると、もういい歳だから昔を思い出してしみじみしてしまった、といえば伝わるかな?

 やり直しの効かない人生で、失敗ばかりだった僕の唯一間違ってなかったと思う君達との思い出を、いつかゆっくりと語れる日が来ることを祈っています。


 それではお元気で。

                              山崎誠やまざきまこと

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