襲撃2
本堂が取った行動、それは変身時に使用するエネルギーを内包させるのではなく、その一部を外部へ放出する事であった。
その放出されたエネルギーは、電荷へと変化され、一種の電撃現象を発生させる形となる。
その電撃は、現代で言う所の心肺蘇生用の電気ショックと言われる物に近いのであるのだが、それを転用し、一種のスタンガンとして機能させる事を目論んでみたものであった。
その機能を発動させた結果、成人男性三人がその場で崩れ落ちる事となったのだが、倒れ込んだ三人の男が呼吸をしている事を確認すると、意識だけを失わせる事に成功したと確信する。
「うまくいったな」
従来は敵怪人への不意打ちに使うなどに使う代物であり、一般人となる人に対して、どれぐらいの出力でどうなるのか、本堂自身もぶっつけ本番ともいえる行動でもあったため、最悪、蘇生処置も辞さない覚悟であった。
しかし、結果は上々。
目論み通り、旨く行ったと心の中で安堵し、倒れた三人の状況を確認した後、壁にもたれかける様な形で安静になる恰好をさせていく。
いかに本堂といえど、そのままにしておくというのは気が咎めたのであった。
(よし、これでとりあえずは良いだろう・・・だが・・・)
自己満足ともいえる行為を終わらせた本堂は、これからどう動くかと思案を始める。
襲撃された側となる本堂にとって、自己防衛として加害行動をしてしまった事実がある身としては、この後に誤解を解くという弁明が行える場を得られる機会が無いのではないだろう。と。
ならば、人知れずこの場から立ち去る方が、まだ、一般人への危害を加える事もなく、身の安全が確保できるのではないだろうか?と。そう考え出していた。
本堂がそういう考えに至るのは至極当然なのかもしれない。
先ほどの男たちの殺気ともいえる表情や言動から、文化的な差異をまざまざと見せつけられる恰好になり、自身が持ち得ている日本人としての感性で、彼らの事を図るのは危険であろうと印象付けるには十分であった。
そして、本堂本人としても一般人への攻撃的な行為は、心にくる物があり、それでもなお穏便に物事を進めたいが、ここまで認識の差が激しいのでは、そうも言ってられない状況に陥ってしまっていると判断を下していた。
(それにしても、状況の情報が少なすぎる。まずは、外に出てみるか……)
彼らから、一定距離は離れるべきであろうと考慮しながら、情報が少なすぎると判断した本堂は、この閉じ込められた建屋から外に向かうべきであろうとし、その鉄の扉があった場所から通路を確認状況を確認したあと、監禁されていた部屋からその通路へと移動する。
そうして、連れ込まれた時の記憶を思い出しながら、外へと向かう方向へと警戒しながら進みはじめる。
が、通路を警戒しながら進んでいくうちに少しの違和感を覚え始めていた。
(おかしい、人の気配が……ない?)
そう、本堂がこの建屋、監禁場所へと連れ込まれる際、要所要所の場所に人がいるのを確認できていたのだが、今現在その要所要所にいた人の気配がまったく無かったのである。
事実、そういった場所を確認してみたのだが、人がそれまでにいた気配があるのだが、いま現在は人影すら見かけない状態であった。
(一体、何が……?)
まるで雲隠れが起きたともいえる内容
その状況に、先ほどおきた自身への襲撃といい、現状といい、自分の知らない間に本当に何かが起きているのだと確信し、警戒をより深く強めていった。
だが、警戒を強めた事とは裏腹に、外への道筋には警戒するに足る事柄は一向に起きる気配もなく、その建屋の入り口へと到達したのである。
(外…か…!)
焦る気持ちを抑え、周囲を警戒するかの様に出入り口がわの壁に静かに張り付く。
(出入口だからとて、そのまま出る訳にはいかない…)
この建屋の前に、歩哨がいた事を思い出す。
出入り口となる口から気づかれない様に外の状況、その周辺を視認し聴覚も使用する。
しかし、それでも周囲からは人の気配を感じ取れないままでいた。
警戒をするにはするのだが、このままでは一向に先に進めない。そう判断した本堂は、思い切って外へと躍り出た。
それでも人の気配というものがしないままでいたが、そんな折、地鳴りともいえる音と共に、大きく地響きともいえる振動が起きる。
「なっ!?」
あまりにも突然すぎた事により、一瞬地震と誤認してしまうほどであったが、それが数回にわたり起きていた為、地震ではなく、爆発か何かかというシロモノかと思えたが、爆発に当たる空気の振動がその身に受けてはいなかった。
(何が・・・起こっている・・・?)
今いる場所では、木々が邪魔をして詳しい情報が得られないと判断。
振り返った後ろ、つまり建屋の上方を見つめたのち、
「届くか?」
深く屈伸する姿勢を取った後、足首アタリ三回ほど軽く叩いたかと思うと、その身をその建屋の最も低い屋根上まで飛ばし、その建屋の上へと降り立つ、さらに同じ行為を行いもう一つ上の場所へと、飛び立つ。
一番上ともいえる場所、ゆうに5階といった高さとなる建屋屋上に到達すると、周囲の木々を見下ろす形となる場所から、何が起きたのかという状況を探し出そうとしたのだが……
「なっ・・・なんだあれは・・!?」
そう、本堂は思った感情をそのまま口にする。
なぜそうなったのかは、探す手間など不要というほどに、はっきりとしたモノであったからだ。
本堂が目にしたモノ
それは、虎とも獅子とも言えぬその姿ではあるが、その爪と角をもって建造物を破壊し、その破壊した建造物へと、その口から炎をまき散らしている巨獣といえるモノがその視界に入ってきたからであった。
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