幹部2
迫り来る幹部怪人の刃を、本堂はその半身で構えている左腕を使い受け流そうと試みる。
だが、その迫りくる刃は、本堂がそういう風に動作する事を予見していたのか、はたまたもともとそういった軌跡を描く予定だったのか、本堂が左腕を受け流す位置に移動させている間を、まるでスルリと通り抜けるかの軌跡を描き、本堂自身の体、いや首元へと迫ってきていた。
「何っ!速い!?」
本堂は、驚きと共に、経験からくる防衛本能のたまものなのか、それとも危険と察知した本能だったのか、その体は思考よりも先に脚力任せで後方へと飛び去る動作を行っていた。
だが、その動作が間に合いきれずに首元から熱い感触とともに、その装甲を構成するナノスキンが破壊された火花が飛び散っていた。
「fek!,ne atingas.」
幹部怪人の舌打ちが聞こえてはきたが、それよりも本堂はその右手を首元に手をやると、その指先には液体のぬめりという感触を感じていた。
それは、本堂自身から出ていた血液という代物である。
だが、その右手でふれたのち、切り開かれた傷口はまるでそこに傷口がなかったかの様にふさがり始める。
それは、マキシマムドライヴ状態における、ナノマシンによる修復機能が働いたためでもあった。
「トライヴの装甲を切り裂く程の得物。それと、とらえきれない機動力か・・・」
先ほどの一撃から、本堂は身体の傷に関する事よりも、目の前に存在する幹部怪人のその戦闘力が、現状のマキシマムドライヴ状態であるトライヴの能力を上回っている部分がある事を実感する。
「特に、あの
トライヴがその身を包んでいるナノスキンは、一般的な刃物では傷をつける事はままならない。なぜなら、その硬度においてまず傷をつける事が困難であるとともに、もし傷をつけたとしても、その傷を修復する機能が働くため、その防御能力は自然と高い物でもあった。
だが、今、起きた事は、その防御力をも上回る斬撃により切り裂かれ、さらにその修復機能が働き始める前に、深部へと到達してきたという事でもある。
言うなれば、トライヴとしての防御能力よりも、相手幹部の戦闘能力が上回っているという事でしかほかならない。
しかし、そんな本堂の意思とは関係なく、相手幹部の攻撃はさらに続く。
相手幹部が放ってくる斬撃の一合、二合と共に、受け流そうとする動作ではなく、その軌跡をせき止める様にその両腕をふるまう。
その両腕に対し、相手の得物が接触する度に、火花を放ちながらその装甲を切り裂き、本堂自身へダメージを与える斬撃が放たれていった。
その斬撃の鋭さは、本堂が攻勢に転じる隙をまったく取らせる事のない物でもあった。
斬撃が繰り出されるその度に、本堂は、後方、側面へと、武芸とは到底おもえない為体で、さらにその体を地面へと転がしながら、その相手の刃の深い一撃を受けまいと、防御行動と緊急的な回避行動のみしかとらざる得なくなっていた。
「さすがに、手強い・・・!」
そう判断しながらも、本堂はある程度の距離をとる事で、ようやく大きく離れる事が出来た時、相手の様子を伺う形となった。
それは、相手幹部の余裕ともいえる立ち振る舞いとでもいうべきであろうか。
本堂が距離を取る行動を止める事もせず、そのまま一定の間合いが離れても、幹部怪人はこちらへの追撃となる攻勢を行わなかった。
そして、幹部の様子を伺っている本堂に対して、まるで勝ち誇ったかの様な態度で言葉を口にする。
「Ĝi ne devenas differents ? ĝi postvivas.gajni tempon」
そんな不敵な笑みを醸しながら、幹部怪人はトライヴを正面に捉え続け、なおかつその得物を構えたまま一定の距離を保ちつつ、まるで円弧を描く様にゆっくりと移動する。
その移動先は、本堂と怪人兵団との間に入る恰好になる位置まで移動し終えると、その得物となる刃を別の構えで居据わる。
その行動は、まるでトライヴを狩る事が容易ではあるが、それでも油断はするまいとでも言っている様な内容とも、本堂はそう感じていた。
しかしながら、本堂とてこの状況を甘んじて受け続ける訳にはいかない。
なにしろ、その幹部怪人の背後には、今まさにこの場から去ろうとしている怪人兵団が存在しているのである。
あれだけの大量の兵団を保持しているという事は、この場以外においても強襲を行われているハズである。さすがに此処だけの訳がないだろうと本堂は思い描く。
しかし、その兵団を壊滅させるためには、今現在目の間に存在する幹部怪人を何とかしなくてはならないが、マキシマムドライヴ状態におけるトライヴでも、相手得物とその機動力に対して対応をするには聊か不利とも感じていた。
「ザ・リーク・・・まさか、これほどの実力者を未だ持ち得ていたとは・・・」
口からはそんな言葉を吐露し、心の中では怪人兵団を見過ごすという想定される失態に対しての焦りが湧き出てくる。
幹部怪人とその背後で後退する怪人兵団を交互に視線を移動させていた折、ふと友の顔が浮かぶ
『二兎を追う者は一兎をも得ず。というだろ?お前は一人なんだ。できる事は限られている。何でもできると思いあがるな。でないと、足元をすくわれるぞ?』
そう友の言葉が思い出され再生される。
「そう・・・だったな・・・」
今はいない友の言葉、それが懐かしくも、そして心に残っていた事に、本堂は少し哀しみに陥る。
だが、その哀しみの陥る感情を押し殺し、今やらねばならなかった事を再考する。
『怪人兵団の被害を抑える事』これは一応の収集はつく恰好になるだろう。だが、目の前の大きな障害を排除しなければ、再び怪人兵団が舞い戻ってくる可能性が十分考えられる。
なれば、そうならない様にするためには、目の前の幹部怪人を倒す事が必要不可欠であろうと判断する。
そう判断した事で、ただ"怪人兵団を殲滅しなければならない。"という使命にも似た責任感を気負う気持ちになっていた思考を切り替えることが出来、本堂からは焦りという物が消えていく。
そうして、目標が決まったことで、後はその目標に向かって挑むのみと本堂は覚悟を決める。
「45秒間だ。」
「Kio?」
本堂の言葉に対し、幹部怪人は問いただすかの言葉を口にする。
しかし、本堂はその言葉に耳を傾けることなく、自身がこれから行う事の行為を始める。
それは、ただ自然体として立っているだけともいえる姿勢であった。が、
「
『Prepare...』
「Kion vi diras !?」
そう本堂が言葉を放つと、本堂のフェイスマスクの中に機械的な音声が響く。
それと同時に、幹部からの声が響く中、本堂の心臓にあたる部分が熱く激しく活動していくのが解る。
そして、その活動が激しく感じるにつれ、トライヴの姿恰好が、純白へと、そしてその形状もさらなる変化を作り出していく・・・
「Kion vi faras!」
幹部怪人は、トライヴの変化に対して何かしらの危惧を感じたのか、トライヴへと再びその得物をかぶり襲い掛かる。
だが、その襲い掛かる前に、トライヴのフェイスマスクの中に音声が響いていた
『READY......
GO-AHEAD』
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○ちょっびっと翻訳コーナー
※勝手な意訳ともいう
「fek!,ne atingas.」
ちっ!浅かったか
「Ĝi ne devenas differents ? ĝi postvivas.gajni tempon」
そちらから来ないのか?それはそれで時間が稼げて助かるのだがな。
「Kio?」
なんだ?
「Kion vi diras!?」
何を言っている!?
「Kion vi faras!」
貴様 何をしている!
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