パラレルワールド・ヒーロー

zaq2

#0:序章

終わりが始まり

 地上とも地下とも宇宙ともいえない空が周囲を覆う中、二つの人影が対峙する形で向かいあっていた。



「ドン・ガバメン!貴様の野望もここまでだ!!」

「ふっ・・・はぁはあはははははっはは!!」



 その体に大きな穴を開けている相手、ドン・ガバメンと呼称された相手は、不敵な笑いを広げていた。



「何がおかしい!!」

「何がおかしいだと?オカシイに決まっているだろうトライヴ、いや、本堂よ。貴様のその目出度い頭にだ」

「何を!?」



 ドン・ガバメンと呼ばれた存在は、対峙する本堂と呼ぶ相手に対して、まるで小馬鹿にするかの様にそう言葉を発していた。



「我々の組織が、ココだけと思っているのがな!」

「何!?」

「世界は広いのだよ!我の意思を継ぐものなど、いくらでもいるという事だ・・・ごふっ」

「!!」



 その口からは、青色ともいえる液体を噴き出しながら、そのオカシイという内容を語りだす。



「そして貴様は、我のいるこの亜空時空間から逃れられん…つまり…、邪魔者の貴様が戻らない限り、我々の勝利というものなのだよ…」



 その語られた内容は、自らの命は失われるモノの、その犠牲によってこのいくさには勝利したといわんばかりの自信の表れでもあった。



「ならば、戻る方法を聞き出すまで!!」

「教える訳がなかろう?さぁ、永遠という亜空時空に閉じこまれ続けるがよいわ!!はぁlはははははははは!!…・・・・ハァハ・・・」

「貴様!!元から道連れとするためだったのか!」



 そう本堂は思ったが、それは時すでに遅かった。


 ドン・ガバメンはその笑い声を残し、その体形を爆散させその姿を消していったのだった。



「しまった!」



 本堂はそう叫んでしまった。


 今までの戦いから、ようやくザ・リークという組織の首領ドン・ガバメンを倒したという感情よりも、まだ戦いは続くという事に、そして、その自身がその使命を果たせないという事、さらに罠にはめられた自分自身に対して、怒りと悔しさが入り混じった感情を抱いていた。



 そう、彼こと本堂は、ドン・ガバメンが作り出した亜空時空といわれる世界に閉じ込められる形となってしまっていたのである。



 しかし、戦いが続くのならば、この閉じられた世界から脱出しなければならない。

 ならばと本堂は気持ちを切り替え、脱出する手がかりを求めて亜空時空の中を彷徨いはじめた。




 亜空時空間


 それは、悪の秘密組織ザ・リークが作り上げた異空間発生装置によって作られた空間である。

 ここではない、そこでもない、まったく地球上とはまったく別のフィールドを作り上げ、時には囚人とした人物を閉じ込めるための場所として、時には秘密基地としての機能を、時には今回の様に戦闘を行う空間として、多種多様な運用目的で作られたものであった。


 この中では、普通の時間経過も場所に関しても、一般のソレとは異なる流れを進んでおり、場合によっては、保管倉庫としても利用されているものでもあった。



 その亜空時空の中を、一人の人物が歩き続けていた。


 上空には、ただただどこまでも続く紫色の様な、水でボケた様な灰色が混じる空とも呼べるのかどうか解らない存在と、永遠に続くのではないかと思われる地平とも地面ともいいがたい中を歩き続けていた。


 しかし、その歩み続ける中、何かしらのモノがあれば立ち止まっては調べてみたりするモノの、それらはものの見事に関係のないオブジェクトでしかなかった。



「ここまで、何も手がかりが無いとなると・・・いや、あきらめるのは早い、戻る手立てをみつけなければ・・・」



 焦りという感情と、ふがいない自分へ対する怒りという感情が、本堂の中であふれだし、さらに、悔しさもまじることにより、自分が不甲斐ない存在であるという感情の念が強くなってもきていた。



「私は・・・一体何をしていたというのだ・・・友の忠告を聞かずに・・・」



 共に戦っていた友からは「お前は先走りすぎる」という忠告を再三出されていた。


 自分にとっては、すべての決着をつけるべくと勇んでいるだけなのだが、友に言わせれば死に急ぎすぎだと言われてもいた。


 そんな友の言葉が、今まさに本堂の脳裏によぎる



「その通りだったのかも、しれないな・・・」



 今まで、その言葉には何ら興味も示さなかった本堂であったが、ことここに至って初めてその言葉の意味を理解しようとしていた。



「私も、バカだったんだな・・・」



 そんな自分に対する卑下な感情をもとに歩みは続いていたが、とうとうその場に膝をついてしまう。

 そう、この亜空時空においての自身の活動エネルギーがすでに枯渇しようとしていたのだった。



「すまん・・・友よ・・・お前の忠告をちゃんと聞くべきだったな・・・」



 それは、あまりにも遅すぎる謝罪であった。


 ことここに至って、本堂はようやくその意味を理解したのだが、それは遅すぎたものであった。


 その大地へと倒れこんだ本堂の姿は、すでに戦闘モードから通常モードへとなっており、その活動がとうにつきかけようとしていた。


 そうして、意識が朦朧とする中、最後に友から貰った遺品のブレスレットへ、懺悔の言葉を紡ぎその意識を手放していった・・・





 その時、奇跡が起こった!!




 本堂が身に着けていたブレスレットから、まばゆい光が放たれたかと思えば、本堂を包み込みその光が消え去った後には、本堂が倒れていた跡だけが残されていた。


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