第三十二話 獄炎鬼⑤ 決死のレベリング開始
獄炎鬼の頭部を融合スキル『火炎竜巻』で包み込んだ俺は、獄炎鬼の背後に降り立った後。油断せず少し距離を取りながら『火炎竜巻』に頭部が包み込まれた獄炎鬼の様子をうかがっていた。
にしても、『大火』『炎の渦』『火炎放射』のコンビネーション攻撃が、まさか新たなスキル『火炎竜巻』を生み出すとは思わなかったな。
俺は自分でもまったく予想していなかった融合スキルの誕生に、内心ほくそ笑んでいた。
なぜなら、獄炎鬼の怒り補正を得た炎耐性45に対して、俺の呪力は27しかなく、まともにやりあえば多分まともなダメージを与えることなどできなかっただろうからだ。
だから、一撃で倒せないにしても、もしかしたらこの新スキルは獄炎鬼を倒すきっかけ、つまり足がかりになるかもしれないと思ったのだ。
俺は視線の先で天井付近にまで燃え盛りながら、獄炎鬼の頭部を炎上させている『火炎竜巻』を見つめながらそう思っていた。
だが、その考えが大甘だったことを俺はすぐに思い知ることとなった。
なぜなら、『火炎竜巻』に包み込まれている獄炎鬼の凶悪な牙が生えている口が開き息を吸い込むと共に、獄炎鬼の頭部を包み込んでいる『火炎竜巻』が獄炎鬼の口の中へと吸い込まれてしまったからだ。
は!?
さすがに俺は間抜けな声を上げた。
まぁもちろん声は出ないのでイメージ的にだが。
いや、さすがにそれはないでしょ?
息を吸い込んだだけで俺の新スキルがかき消されるなんて、反則じゃね?
ついあまりの理不尽な展開に、俺は思わず獄炎鬼に突っ込みをいれてしまう。
俺の突っ込みにこたえるかのように、獄炎鬼が吠えた。
「グオオオオオォォォ—ーーッッ!!」
もちろん吠えると共に、『獄炎火球』を放つおまけつきだ。
くそがっ舌打ちしつつも、俺はすぐさまその場を飛び退って『獄炎火球』をかわす。
しかしかわすと共に、次々と俺に向かって新たな『獄炎火球』が獄炎鬼の口から吐き出されてきて、俺を強襲し続ける。
当然獄炎鬼の速度を二倍以上も上回っている俺は、獄炎鬼の攻撃パターンが単純ということもあって、楽々かわし続けるが、無機物である炎を一瞬で焼き尽くすことのできる獄炎鬼の攻撃を一撃でもまともに喰らえばあの世行きであるために、一度もかすらせてすらいないというのに、じっとりと全身に嫌な汗をかきながら、神経をすり減らしていった。
このままだとまずいな。俺は獄炎鬼の攻撃を神経をすり減らしながら、かわしている今の状態に危機感を覚えていた。
なぜなら、今は何とか完璧にかわしきっているが、もしワンミスでもすれば攻撃を喰らって終わりだし、このまま神経をすり減らしてかわしていればいずれ集中力が途切れて、攻撃を喰らいだすはずだ。そうなれば最初は体にかするぐらいだろうが、そのわずかなダメージがいずれ蓄積されて俺の動きを鈍らせ、いずれ致命傷を受けるだろうからだ。
俺は今の俺の全力の攻撃がからっきし通用しなかったために、進化したばかりで力を完全に発揮できない状態の獄炎鬼を早めに倒す。という目的をあっさりと捨てた。
そう、俺はこのままの力では獄炎鬼を倒すどころか、ダメージらしいダメージを与えられないために、獄炎鬼に攻撃を加えることをやめることにしたのだった。
そして、獄炎鬼の『獄炎火球』があけた穴の底を覗き見た時に目にした下層に蠢く大量の餓鬼を見て思いだしたことを実行に移すことにした。
そう、俺の攻撃が獄炎鬼に通用しないのならば、通用する強さを得ればいい。
そう、俺は、さっきたくさんの餓鬼が蠢いている下層を見て思い出した過去にやったことと同じ、餓鬼を使ってのレベリングをすることにしたのだ。
問題は俺のレベルを次の進化体にまで持っていけるほどの餓鬼が、この餓鬼洞に残っているかどうかだが、こればかりはやってみるしかない。
あとは俺の進化体である炎の獅子が、最終進化体を超えた特殊進化を果たした獄炎鬼を倒せるほどの進化先を選択できるかだが、これは賭けだ。
だから今はそのことは考えない。
俺が今やるべきことは、下層へとつながっている通路を見つけ出すか、獄炎鬼の『獄炎火球』(ごうえんかきゅう)を利用して、下層への穴を作らせ、そこにいる餓鬼を根こそぎ倒して、レベルアップすることだ。
それまでは、命がけで逃げまくってやる。
対価は俺の命だ。
逃げきれて、なおかつ獄炎鬼を倒せる進化体に進化したら俺の勝ち。
俺が進化する前に獄炎鬼の攻撃を一度でもまともに喰らったら俺の負け、というひどく分の悪い無謀ともいえる賭けだ。
だが、ひどく無謀だが、やる価値のある賭けだ。
俺はこの賭けに勝って、この地獄世界で生き残ってやる!!
そう、固い決意を胸に刻んだ俺は、獄炎鬼との命がけの鬼ごっこをすることに決めた。
そうして俺は、獄炎鬼の攻撃をかわしながら、獄炎鬼の『獄炎火球』があけた穴に躊躇なく飛び込んだのだった。
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