第二十一話 餓鬼洞②
餓鬼洞の中は、壁や天井が陶磁器を作るのに用いるような茶色の粘土質のような土で固められていて、常に真っ暗で夜目がきくか、俺のように絶えず燃え続けて明かりを周囲に放つような体質でもないと、一歩も前に進めない感じだった。
そしてなんというか、こう~湿度が高く熱くはないんだけど、気持ち悪い感じがした。
多分この洞窟の中を餓鬼たちが絶えず徘徊しているせいだと思う。
その証拠に、俺がこの餓鬼洞に入ってから五分もしない間に十体以上の餓鬼とすれ違っていたからだ。もちろんすれ違った餓鬼は、俺のレベルアップのための糧となってもらっている。
まぁレベルアップの糧。といってもすでに俺は大火についで、炎獅子という二度にわたって進化していたために、餓鬼程度の経験値ではかなりの数を倒さないと、極端なレベルアップをはかれないようだが。まぁ塵も積もればなんとやらだ。
そう思いながら俺は再びすれ違う餓鬼を、スキルも使わずに常時発動スキルの燃え移りによって、燃やし尽くし、自分のレベルを上げるための糧としていた。
そんな感じで俺が餓鬼洞窟に入って小一時間ほどが経過したころだろうか? 餓鬼洞の最奥へとたどり着いていた。
餓鬼洞の最奥は案の定真っ暗で、夜目がきくか俺のように絶えず燃え盛り周囲に明かりを撒き散らしてでもいなければ、最奥の空間に何がいるかわからないような空間で、中規模の円形のホールのようなつくりになっていた。
大きさ的に言えば、学生の通う学校の教室。といったぐらいだろうか? ただ教室と違うのは、円形のホールのような餓鬼洞の最奥の部屋の最奥には、餓鬼一人が通れるほどの小さな竪穴が掘られていることと、そこから這い出してくる餓鬼たちをまるで待ち構えるかのようにして、一体の腐餓鬼が竪穴から出てくる餓鬼を襲って貪り食っている光景だった。
どうやらこの様子からして、あの腐餓鬼はこの部屋の主で、部屋の最奥にある竪穴から出てくる餓鬼たちを、食料にしてここで生活しているようだった。
ダンジョンの階層ボスみたいなものか。と俺はあたりをつける。
まぁ腐餓鬼がいようがいまいが、俺のやるべきことは変わらないが。といっても、俺は不用意に腐餓鬼に近づきはしない。例え俺が大火から、炎の獅子に進化を遂げていると言っても、確か腐餓鬼には俺が煮え湯を飲まされた『物理無効』の攻撃スキルを持っていたことを思い出したからだ。
そのため俺は腐餓鬼のいる部屋には入らずに、部屋の最奥にいる腐餓鬼に向かって、大きく息を吸い込むと、スキル『火炎放射』を発動して、一気に炎を浴びせかけた。
いきなり、俺に『火炎放射』を浴びせかけられた腐餓鬼は、俺の存在に気付くことすらできずに、「があああああ」ともだえるように苦しんだ末に息絶えた。
俺は腐餓鬼が息絶えたのを確認した後に、部屋へと体を侵入させる。
うん。思ったより簡単に片付いたな。そう思いながら俺は部屋の最奥に空いている竪穴へと近づいていった。
ここが下層へ降りる階段か? まぁ階段といっても、ただ餓鬼たちが上りやすいように斜めに掘られた竪穴があるだけだが。
とりあえず階層ボスもクリアして、下層へと降りる階段を見つけた俺は竪穴へと入っていった。
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