アセンション:コード
無属達人
0.プロローグ
燃え猛る建物、熱気が顔を灼く。
消防車による放水も炎の勢いを留めることしかできていない。
「これはもう無理か?」
消化隊隊長桐野剛士(とうの たけし)はそう呟いた。
林の中で建物が燃えていると、通報を受けてから20分。
山間部ということを考えればそこそこ早い方だが、駆けつけた時点で既に炎に包まれていた。
恐らく全焼は免れまい。
周りは拓けていて延焼による山火事の心配は無さそうなのは、不幸中の幸いか。
聞けばここは研究所だとか。魂魄研究所、最初に人の名字が付いていたと思うが忘れてしまったようだ。
魂魄、数年前どこかの博士が発見した心だか人格だかの素となるらしいもの。
TVで誰もが超人になれる時代が来るとも行っていたが、別段なりたいとも思えなかった。
でも、もし炎に突っ込んで大丈夫な様になれるなら仕事が捗りそうだなと、考えている時だった。
「隊長、生存者です!」
炎の中から出てきた隊員の腕の中には毛布。すぐに駆け寄る。
「……赤ん坊か?」
見たとこ生後1~2ヶ月、まだ首も据わっていない。
「この子の親は?」
「それが見当たらなくて……」
まさかこの子を置いて逃げたのか?
そんな親がいるとは思いたくない。
「分かった、この子は任せた。俺は中に行ってくる」
「隊長、中はもう無理です。倒壊の危険が……」
「しかし……」
次の瞬間、爆音が轟いた。
思わず振り向けば、爆風と共に崩れる建物。
「総員、退避ー!!」
赤ん坊を庇いつつ後ろに下がる。この子の親は無事だろうか?それだけが心配だった。
数刻後、火は消し止められ、現場検分が行われた。そしてそこからは誰の見つからなかった。
その夜研究所に居た筈の者は一人残らず行方不明に。更にその研究所に勤める人の中に、
産まれてすぐの子供を持つ親は居なかった。
この怪事はしばらくワイドショーを賑わせたがすぐに薄れていった。
未だに真相は解っていない。
風の噂では保護された赤ん坊は何処かの施設に預けられたそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます