第4章 勇者
第20話 旅路
残酷描写あり、苦手な方はお控えください。
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海は、北の国の勇者を倒すため馬車に揺られ、目的地のモッコロを目指していた。
馬車には、海以外にサカナが乗っている。サカナは王に頼まれ海の手伝いをしてくれるようだが、実際のところ海が、仕事をさぼらない様に監視役として王は、サカナを寄越していたのであろうと、海は思っていた。
海たちが目指す目的地モッコロは、北に向かって真っすぐ進み、初めは馬車で岩の多い陸路を移動し、そして陸路が終わった後、海を渡る為、船での移送をしなければならない、船は王が用意してくれたので、海は安心して旅をすることができるのだ。
「鈴木よ、一つ聞いていいか?」
「何だ?」
馬車の手綱を握りながら、サカナは海に質問した。
「お前の能力は、いったい何なんだ?」
「教えない」
「な、なぜだ一応これから仲間になるんだぞ!」
「まぁ、僕もよく分かってないからね」
「・・・そんなのでよく今まで戦ってきたな」
サカナは、あきれ気味に言った。海は、自分の能力がいったい何なのかをあまり把握していないのだ。海は、毎日が楽しければいいので、メンドクサイことはあまり気にしない。
そして、海たちが移動して、半日が立った。辺りは、だいぶ暗くなり、丁度村が見えてきたのである。ここまで海たちは、モンスターに襲われることなく、無事安全地帯らしきところにつくことができた。
「よし、サカナ今日はあそこで泊まらせてもらおう」
「分かった」
海たちは、馬車を止めて村の中に入った。
海たちが入った村は、かなり荒んだ村であった。そして驚くことに、まだ寝る時間には早いだろうにその村には、人一人歩いていなかったのだ。海は、おかしいと思い、入ってすぐの民家を訪ねてみることにした。
「すみません~誰かいませんか~」
海は、ドアをノックした。しかし、ノックをしても大きな声で呼んでも誰も出てくる様子はない。
「おかしい...サカナ手分けして村人を探すぞ」
「分かった!」
海とサカナは、二手に分かれて家を訪ね回ることにした。
そして、海とサカナは、粗方の家をノックしたが、誰一人として出てくる様子はなかったのだ。
「これは、どういうことだと思うサカナ?」
「そうだな、考えられる理由としては、モンスターに襲われて村の住民がどこかに避難しているか、あるいは、全滅か...」
「確かに、痕跡らしきものがあったな…」
海とサカナが、町を見て回る間に何かの爪跡を複数発見していたのである。
海たちは、安全地帯であると思っていた村の中が実は、安全ではないことが分かり、呆然としていた。
「そうだな、此処が安全ではないのなら、オチオチ寝てもいられんな、どうするサカナ?別の場所で野宿するか?」
「いや、この村に生き残りがいるかもしれない、探して助け出す、それに、騎士として見逃せんからな」
「めんどくさい...」
「おい、鈴木今何と言った!」
サカナは、今にも襲い掛かりそうな表情で海をにらみつけた。
「くっそめんどくさい、助ける義理がない」
「何だと、貴様!キサマも一応は騎士、人を助けるのは当然だろう!」
「・・・・」
海は、サカナの価値観にあまり同意できなかったので質問することにしたのだ。
「まぁ、確かにサカナの意見は素晴らしいと思う、しかしだ、この村の奴らは助けがほしいと思っているのか?お前は、その声を聞いたか?」
海は、皮肉を込めて意見した。
「聞いてないが、それがどうした!」
「そうか、ならまず相手の意思を聞かなければならんな」
「何故だ?」
「そんなことは簡単だ、村人はそれを望んでいないかもしれないだろ?」
「そんな訳はなかろう、キサマに騎士道は無いのか!」
「ない、何も知らない間に振りかざされる正義は、悪意と同じくらいタチが悪い」
「ちっ、勝手にしろ私は、生き残っている村人を探す」
「おう、分かった頑張れ!」
海は、満面の笑顔で去りゆくサカナを見送った。そして海は、この村に何があったのか、村をもう少し調べてみることにしたのだ。
海は、けっして村人をが何処に行ったか、気にならないわけではない。海は、調べた上で、助けるか助けないか、判断することにしただけだ。
「さて、どこから探すかね」
まず海は、飛行して村全体を見渡してみる。海は、村全体を見渡して気づいた。村の東側にある大きな家の屋根に大穴が開いていたのだ。海は、そこが怪しいと思い地面に降り調べることにした。
「お邪魔します」
海は、家のドアを蹴り破り、おそらく誰もいないと思われる家に挨拶をして、建物内に入り家の中を見渡した。
その家は、だいぶ荒らされていて、すべてのものがズタボロであった。そして、海の目に入ったのは、底抜けになった大きな穴だ。穴は下に続いている。どうやら地下に繋がっているようだ。海は、飛行で下に降りてみることにした。
そして海は地面に着陸して、手掛かりを探すことにした。どうやらここは、地下のようだ。海は、辺りを見渡したが暗がりでよく見えなかった。しかし何かの異臭が海の鼻孔を刺激したのである。海は慰ぶしげな表情になり、目が慣れてくるのを待った。そして、少し経ち目が慣れてきたころ、暗がりの中、海は異臭の原因に気付いたのだ。部屋は何かの実験がされたような跡あり、そこら中に生々しい血が飛び散っており、地面には血で書かれた魔法陣が書いてある。
そして海は、目にした。初めはそれが何かは理解できなった、正確には理解したくなかったというべきか、震える体を押さえつけながら、それを認識した。
そこにあったのは、遺体だった。
その遺体は、カラカラに干上がっており、原形をとどめていなかったのだ。しかし、大きさからして、まだ幼い子供ということが分かる。そして、よく見渡してみると、地下には大量の子供の遺体が転がっていたのだ。それだけではない、部屋の中央の魔法陣に集まるようにして、子供の遺体が大量に積み重なっていたのだ…
「うっ…」
海は、吐き気と怒りを感じながら、人為的な何かがあると仮定して、調査を進ることにした。そして海は、魔法陣の近くの机の上で一冊の本を見つけた、その本の表紙にはこう書かれていた、「闇の召喚儀式」海は、胡散臭い物を感じながら、その本を手に取った。
本の中身を見てみると、儀式内容が書いてあったのだ。
本の内容はこうだ、儀式を行うことにより、闇が召喚でき、思い通りの人生を歩むことができる。儀式を行うためには、生贄が必要だ。生贄には、子供が必要で、魔法陣の上に子供の血を捧げる必要がある。
海は、本の内容を確認した後、儀式を行った奴を探すことに決めた。個人的にムカついたのだ。そして犯人の手掛かりは、すぐに見つかった。儀式のが書いてあった本を見ると、ホンの右下に村長とだけ書いてあった。名前は、血でにじんで見えない。海は犯人はとりあえずこの村の村長であることが分かった。
「ちっ、これが上に立つものがやることか...」
海は、村人を助けるということよりも、村長をぶっ殺すことに頭がいっぱいになったのだ。海の考えでは、子供は宝で、大切にすることが当たり前であり、このようなことは、海の中では許されないことであった。それに、無能な上司が若者を作為的に若者を潰そうとすることが、許せなかったのだ。
海は、飛行で家の屋根の穴から飛び出て、村長を探すことにしたのであった...
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