第19話 カレビ帝国の敵

ディックを倒した海は、完全に王に認められ王の間の隣にある個室にいた。個室は王城だけあって流石に無駄豪華である。高そうな茶色い机が、真ん中にあり、それを挟むようにして、二つの茶色いふわふわソファーがある。そして、壁には、趣味の悪い、歴代王の顔写真、どいつもこいつもデブばっか…そして、その個室には、シャルロッタとサカナも同行している。その中で海は、王の反対側のソファーに座った。シャルロッタは、海の腕にしがみつくようにして、一緒に座る。海は、今契約書を書いていた。


契約書の内容は、カレビ帝国の危機があればその敵を倒すものとする。そして、代わりにシャルロッタは、自由の身とする、という契約書である。


海は、この敵の部分について、少し気になっていたので、王に質問することにした。


「おい、敵とは、具体的には何なんだ?」


海が、質問すると王はあきれた様子で言った。


「はぁ、そんなことも分からんのか、敵というのはな、権力者たちのことだ、この世界は、人間が弱すぎる。故に人間は限られた領土で生活していかなければならない、だから権力者たちは、領土欲しさに戦争を仕掛けてくるのだよ。実際そのせいでシャルロッタが、攫われたわけじゃ」


王がため息交じりに説明した。


「シャルロッタを攫ったのは国内の奴じゃなかったか?」

「そうじゃ、だから国内も安全とは言えんのじゃ」

「そのシャルロッタを攫ったやつらの目星はついているのか?」

「いや、分からんのじゃ...」

「分かれよ、ぼけナス…」


海は、馬頭を吐くと、王が額に青筋を立ててさらに話を続けた。


「敵は、それだけじゃないぞ、鈴木よ、先ほども申した通り、人間は弱すぎる、故に、国の外の魔物に立ち向かうすべを持っておらん。」

「じゃあ、魔物が国に入ってきたらお終いなのん?」

「そうじゃ、ところで一つ質問何だが、キサマは魔物と戦ったことはあるのか?」

「あるよ」

「ほう、それは頼もしい、私の目に狂いはなかったということだ」

「まぁ、あんまり期待するな」


海が謙遜すると、王が敵についてさらに説明し始めた。


「敵は、まだまだいる」

「まだいるのかよ...お前のせいなんじゃね?」

「違うとは言わんが、鈴木海よキサマ、別国に勇者が召喚されたという話を聞かなったか?」

「いや、ぜんぜん、興味ないっす…」

「そ、そうか、それはそうだろうな、これは一部のものしか知らないことだ」

「で、その勇者がどうしたんだ?」

「その勇者はのう、ディックのように出来損ないではなく、すごい力を持った勇者らしいのじゃよ」

「ほう、それはいいことじゃないのか?」

「それが、そうでもないのだよ、召喚した国が欲に目が眩んで、その勇者を使って国盗りを始めたのじゃよ」

「へぇ~、その勇者召喚した国は、カレビ帝国と近いのか?」


質問したが、海は興味ない、そして王が続ける。


「あぁ、近くはないが、直にこの国を攻めてくるだろう」

「なぜそんなことが分かる?」

「簡単じゃ、その国の王とわしは、仲が悪いからな!」

「てめぇのせいじゃねぇか!」


海は、契約を見送ろうかと考えたが、シャルロッタのために我慢して、契約した。


「よし、鈴木海よ、これでキサマはこの国の騎士だ、心して励めよ!そして、爵位を持てるように、日々精進するがいい...」

「いや、それはいいや、その辺の向上心ないんで」

「そ、そうか、鈴木海よ、さっそく仕事を頼んでいいか?」

「なんだよ...嫌な仕事なら、定時なんで帰らせていただくぞ...」

「勇者来る前に倒してきてくれないのう?」

「はっ?嫌だ」


海は、間髪いれずに答える。正直めんどくさいと思う海。そして嫌々一応聞く。


「少しいいか?」

「何じゃ?」

「その勇者の能力その他もろもろお前把握しているのか?」

「いや、ぜんぜん」

「おい!もう嫌だわ、定時なんで帰らせていただきま~す」


海は、立ち上がりその場所を後にしようとした。海は、勇者とまったく戦う気がなくなってしまったのだ。国を取れるような強大な力を持った、者など不意打ち又は、相手のパターンを完全に熟知しておかなければ、完全勝利できる見込みがない。海は、先ほどの戦いでディックごときに、少し追い詰められてしまったので、自分の強さの評価を少し改める必要があると感じたのである。そのため、最善の状態でないと、未知の強敵とは戦いたくなった。しかし、それを止める王


「おい、いいのか?またシャルロッタが危ない目に合って、いつ何時狙われるか分からんのだぞ?そんなことだったらこちらから潰しに行った方がいいのではないか?」

「黙れ!デブ!」


しかし、そうは言ったものの、シャルロッタのために、海は仕方なく戦うことを決意して、席に着く。


「で、その勇者が何処に居るかぐらいは、知っているんだろうな?」

「おっ!行ってくれる気になったか!」

「あぁ」

「さすがじゃ、鈴木海!その勇者は、ここから北にずっと行ったところの、モッコロという国にいる、モッコロは、雪原の地であり、とても寒いからわしは個人的には行きたくない!」

「そうか!そこにお前を置いてきたい!」


海は、最後のどうでもいい個人情報を聞き殺したくなったが、モッコロまで行くことを決めた。


「鈴木よ、モロッコまでの交通手段なんじゃが・・・」

「あぁ、飛んでいくからいいよ」

「そうはいかん、モッコロがどれだけ寒いか知っているのか?チョー寒いぞ!飛んでったら凍え死ぬぞ!」

「お、おう、そうか」

「それに、役に立つかは分からんがこちらからも従者を出す?」

「はぁ?」


海は、正直足手まといが増えそうなだけな気がした。そして、王が従者を指名した。


「で、従者について何じゃが、サカナを任命しようと思う」


後ろで黙って話を聞いていたサカナは、体をびくつかせて反論した。


「ど、どうして私なのですか!?ニートになったんじゃなかったんですか?」

「お前は、火の魔法が扱えるじゃろ、寒い中では役に立つと思ってじゃ」

「そんな適当な理由で!?」

「そうじゃ、何か文句あるか?」

「いえ、ないです」


サカナ静かに下がっていった。そこに、サカナと一緒に話を聞いていたシャルロッタ話に割り込んだ。


「私も海と一緒に、行ってもいい、お父様?」

「だめじゃ」

「そうだな、シャルちゃん今回は敵が未知だからな何が起こるか分からん、お留守番かな」

「いや!」


シャルロッタは、頬を膨らませて大変ご立腹なようだ。海は、膨らんだ頬を指でつんつんしながら言う。


「また今度一緒に、モッコロじゃない場所にいこうよ、それでいい?」

「嫌!行くの!」


駄々っ子になるシャルロッタ、海の体をポコポコ叩いてくる。それを見た海は、自分の唇で、シャルロッタの唇を塞いでやる。シャルロッタは、突然のことで驚いたが、海の唇を受け入れた。シャルロッタはの唇は、マシュマロのように柔らかい…そして、お互いの吐息を感じる…海は、舌をシャルロッタの口の中に入れる。シャルロッタも海の舌に合わせて、舌を動かす。


「あっ…んっ、んっ…ダメっ、はぁ、はぁ、はぁ」


そして、お互い満足してから海の方から、唇を放す。唇を放すと、唾液の糸が艶めかしく伸びた。海は荒く息をしているシャルロッタに言う。


「お留守番な、ちゃんと今度一緒にデートしよう」

「はぁ、はぁ、はぁ…う、うん…」


シャルロッタは真っ赤な顔で、うなづいた。海とシャルロッタは、約束した。そして、王がそれを見て、呆れた様子で言う。


「はぁ、明日にでももう出発できるか?」

「まぁ、そちらで旅の準備をしてもらえれば可能だが」

「よし分かった、よろしく頼む」


そして、翌日海は、モッコロ向けてサカナと旅立つのであった。



















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