幽月邸の夜 ~La dimenticanza~

汐凪 霖 (しおなぎ ながめ)

プロローグ

 私は何者?


 誰もいない、瀟洒な洋館。

 朽ちかけた墓地。

 深い森。


 手にしているのは、黒ずんだ銀色の鍵。


 憶えているのは、たったひとつの名前。


 篠宮しのみや音葉おとは


 たぶん、私の名前。


 私は いつから ここにいるのだろう。

 そして、いつまで ここにいるのだろう。


 誰か助けて。


 を助けて。


 誰か……。


 誰か……。


 ──あなたは誰?

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