第1章 次の各問いに答えよ
⑴ 人間は考える葦である
「もう! こんな所で寝て!」
私の目の前には、探偵社の入り口ドア前の床で倒れている人がいる。
「後、十日・・・追加で一週間・・・寝かせて・・・」
・・・・・・因みにこの人は、私の勤めている探偵社の所長兼、唯一の探偵である(私を除いては)。
「・・・何時だと思ってるんですか?」
「うんと、・・・・・・朝4時?」
「もう昼の12時越えてますよ」
「ふーん・・・おやすみ」
「・・・起きてください!」
私は、
「いてっ! もう少し寝かせてくれよ、昨日は深夜5時帰りだったんだから・・・」
「それって、今日の朝でしょ? だったらそのまま起きててください!」
私はそう言いながら、彼・・・いや、零思さんを居間の机の前に座らせた。すでに、私の作った昼食が並べてある。
「そんなこと言っても、本当は優しい癖に」
「な、・・・そんなことないですよ!」
「いいや、そうだね! 現に今の時刻は正午を少し回ったところ。私の帰ってきた時刻は深夜・・・いや、早朝5時。そこから数え
て、単純計算7時間もある。その間、智恵ちゃんはおそらく7時ごろに起きて私を発見していたはずだ。そう考えると、今の今まで私
をあの場所で寝かしていたのだろ? これを優しさと言わず、なんという?」
「『
「・・・よくものを言うようになったね。・・・いや、質のあることを言うように、かな? 」
「なんですか、いきなり」
「なんでもない。とにかくご飯食べよう」
こうして私たち2人は、探偵社用の部屋の横にある部屋で昼食を食べ始めた。
「う、朝から肉とは・・・」
「昼食です。昼です。起きていないのが悪いんでしょ」
私の名前は、
です! 実際に夢が叶い、あこがれの探偵生活を送っていますが・・・・・・この探偵社、他とはかなり違うんです。
「はぁ~、やっぱり知恵ちゃんの作るご飯はおいしいなぁ~」
この人は、この探偵社の所長兼、現役探偵の
私の探偵としての師匠であり、恩人です。
「は~、食べた食べた」
「いつも通り、早いですね」
「こうでもしないと、時間がないのでね。それにしても、眠い!」
「食べたばかりで、寝ちゃいけませんよ?」
「分かってる。少ししたら寝るから」
「それもだめです。ちゃんと目が覚めるように顔洗って、お仕事してください!」
「あのね、さっきまで仕事してたんだよ? 徹夜したって残業手当出るわけじゃないし、それに労働基準法ではしっかり一日の休憩
時間が書いてあるし・・・」
「休みなんてなし! 年中無休! 残業手当は平和な日常!」
「・・・あいつらよりもおっそろしぃ~」
「何か言いましたか」
「いえ、何も」
「では、後片づけは私がやりますから、零思さんは顔洗って仕事してください」
「はい」
「あ、あとそのロングコートの煤(すす)も掃(はら)っておいてくださいね」
「はい」
「分かってます? 」
「はい」
「・・・論語の中に出てくる教えを一つ上げてください」
「はい」
「空返事じゃないですか!」
「ひぃぃ! ごめんなさい!!」
「まったくもう」
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