第4話 懐かしい人との再会
捨てる神あれば拾う神ありとはよく言ったものである。
「院長先生!!」
どうやら本日は月に一度の孤児院の買い物日だったようだ。
「……その声は……アーデ……アーデルヘイトかい?」
「はいっ。ご無沙汰しておりました」
敬礼しそうになるのを止めて、にこりと笑う。
「何ということだい。こんなに痩せて……」
そう言って孤児院の責任者であるヤンが、アーデルヘイトの頭を撫でた。
「今年から魔法学院へ通うことになりました」
ヤンと街中を歩きながら、とりあえず今までのことを軽く説明する。
「アーデ……君さえよければ、週末だけでいいから勉強を教えに孤児院へ来ないかい? 少ないけど給金を出すよ。それがあれば食事には困らないはずだ」
ヤンの瞳はどこまでも真剣だった。
「……一応、学院に言ってみます」
「僕からも口ぞえしておこう。寮はウィッツ?」
「いえ」
「じゃあ、ロード?」
ウィッツはオランダ語で白。そして学院内の寮では貴族が住むところで、ロードは同じく赤を意味し、平民の寮となっている。
いぶかしむヤンに、アーデルヘイトは掘っ立て小屋と伝えた。
「アーデ、僕は荷物を置いたら学院へ向かう。門のところで待ち合わせをしよう」
有無を言わせぬ勢いでヤンが言う。アーデルヘイトは頷くしかなかった。
所持金も少ないので、アーデルヘイトはそこらへんの屋台で食事をとった。
「アーデ、待ったよ」
何をどうしたらご飯を食べただけのアーデルヘイトよりも早く学院に着くというのか、アーデルヘイトはヤンに問いただしてみたくなった。
「守衛さんに聞いたけど学院長は替わってないようだね。僕もここの卒業生だよ。転移呪文があれば簡単なことだよ」
そう簡単にいかないことくらい、アーデルヘイトだって分かる。
「アーデの属性聞いていい?」
話をすりかえるが如く、ヤンが言う。
「土、火、水、闇です」
「四属性、しかも闇持ちか。どうやっても王家からは逃れられないか」
しかし、この言葉がアーデルヘイトの耳に入ることはなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます