第3話 アーデルヘイト十五歳、魔法学院へ
それから時が流れ、アーデルヘイトは十五歳になった。
十五歳になるまで、いくつも分岐点があったはずである。それにもかかわらず、アーデルヘイトは魔法学院の門のそばにいる。
七歳で実父に引き取られ、ヒステリックな家庭教師のもと淑女教育やら勉強やらをしていた。淑女教育はこれから生きて行くに必要と判断し、ひたすら学んだ。勉強の方は、孤児院で院長が教えてくれていた時の方が進んでいるくらいで、あっという間に覚えた。
十歳の時の属性魔法計測の際は、何故か四属性と出て、周囲を驚かせた。
これが俗にいうチートという奴でしょうか? 誰ともなくアーデルヘイトは問いかけたくなった。
四属性は、土、火、水、闇である。使用人や父親たちには疎まれたが、通いの庭師には気に入られた。庭の隅っこをこっそりと畑として改造し、庭師と一緒に食事をしたのはいい思い出である。
庭師も二属性、水と土属性持ちらしく、二人で水をシャワーのように呼び出し、庭に水やりもした。
なので、誰よりも魔法学院への入学を悲しんだのは庭師だったりする。
貴族であれば二属性持ちくらいなら、王都にある魔法学院でなくても良いのだが、四属性もちは絶対に王都の魔法学院に行かざるを得ない。
それよりも、とアーデルヘイトは思う。このままばっくれて孤児院に行ってしまおうか、とも思ってしまうあたり終わっている。
「
付き添いできた
昨日、初めて異母兄姉に会った。二人揃って両親に似て高飛車だった。
「……行きますか」
新入生代表はどこぞの侯爵令息がする、とだけ聞いた。その男も四属性持ちらしい。
王立魔法学院は全寮制で、貴族の位ごとに部屋が分かれている。平民はまた別のところに寮があり、そちらは大部屋らしい。
「早速嫌がらせですか」
そのどちらの寮にもアーデルヘイトの名前はなかった。
その代わりに雨風もまともに凌げない掘っ立て小屋があてがわれた。
「掘っ立て小屋が~私の家♪」
変な歌を歌いながら、アーデルヘイトは改築をしていく。学院長や教官たち、それから理事に名を連ねるお偉いさん方と契約をして、「掘っ立て小屋から数十メートル範囲内はアーデルヘイト・ファン・フェーレンの好きにしていい」ということになった。
まずはかまどもどき作りである。煮炊きできる場所を作らねば、意味がない。そして、下水へ水を流す経路も作っておく。
「……こんなもんか。あとは薪をくべて火を入れればよし。いいかまどが出来ればいいんだけどね」
かまどなど、今まで作ったことがないのだから不恰好でも仕方ない。
空腹を覚えたので、なけなしの金で外へご飯に繰り出した。
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