転生勇者は魔人族になって門番(引篭もり)になる

黒猫のガラクタ置き場

第1話 魔人族に生まれました

目を開けると木で作られた天井が見える。

体は自由に動かす事が出来ないので仰向けの状態のままだ。

何故、この様な状態に自分が居るのか記憶を探る。

最後の記憶はとある戦いで、邪神との一騎打ちの光景だった。

お互いに傷だらけでボロボロの状態で魔力も使い切り、気力のみで立っている。

お互いの神剣が互いを貫く。


(そうか…俺は死んだのか…)


自身の死の瞬間を思い出すと貫かれた胸にも違和感を感じで触ろうと手を動かすと小さいく、ぷにぷにと肉付きの良い赤ん坊の手だった。


(今度は転生ですか…)


前世はラノベ好きの元高校生で異世界召還に憧れと言うか夢を持っていたが現実はそんなに甘くなかった。

まず、どのラノベも物語が終わると【元に戻る】【異世界で家族を持ち平和に暮らす】の2択かと思う。

俺はそんなラノベの物語を信じていたのだが実際は召還される事の連続だった。

1つの世界を救うと足元に召還陣が現れて別の世界へ、それを1000回以上繰り返していた。

一度、世界の理から外れると元には戻れない事と異世界召還の際に魂が強化されて召還される確立がどんどん上がっていた事が原因だった。

最後には魔に落ちた元神王(邪神)との戦いの為、神様に呼び出されたときはマジでビックリしたな。

前世の自分の人生を振り返ると修羅場しか無かったし、ラノベの様な夢のような話も無く、血に染まり、仲間を犠牲にただ、世界を救うだけの装置だった。


「ただいま」

「おかえりなさい。あなた」


別の部屋、話の内容では玄関と思われる場所から両親と思える人たちの会話が聞こえて来た。

つい先ほど意識を覚醒させた俺が、この世界の言葉を理解できる理由としては多分、前世の時にあったスキル【共通言語】の力だと思われる。

と言うことは現在の俺は前世の時に得た能力がそのまま、引継ぎされた状態と言うことになるが、かなりヤバイ気がする。

最初の頃はラノベの様に最強に憧れ、チート能力で無双するのが良い物だと思ったが今は平凡な日常が欲しい。

平凡な日常の為にはこの力は隠そうと思い、何か使えないスキルは無いか頭の中で検索する。

【制約の楔】【ドッペルゲンガー】を使おうと思う。

【制約の楔】は己を縛る制約を課してそれにより、成長率を上げるスキル。

これを使って、身体能力と魔力を1/10にする。

【ドッペルゲンガー】はその通り、自身の分身を作る能力だが、自身の能力を渡す形になるので、10体を作ると俺の能力は元の1/100にまで下げられる。

これでも十分強いが、あとは自身でコントロールすれば良いと思うから問題ないだろう。

【ドッペルゲンガー】達には俺が成長するまで、【永遠の楽園】の中に居て貰う。

【永遠の楽園】は自身の心象世界の具現化で一種の別世界を生み出すスキルだが、正直、野営の時はかなり助けてもらった優良スキルだ。

【アイテムボックス】もあるが、こちらは生き物は入れれないのだが、【永遠の楽園】は生物が入ること前提なので、ドッペルゲンガーを入れることも可能で、先ほど軽く確認したら、前世で捕獲した生物も入っていた。


「所でグレンはまだ寝ているのか?」

「そうね。ぐっすり寝てるわ」


身体能力弱体作業を終えた頃に両親が俺の居る部屋にくる。

さすが異世界、美男美女の夫婦だった。

しかし髪の色は薄い赤色の母と薄い水色の父で髪の色以外は普通の人だった。

二人とも見た目は20台前半位だと思う。


「下級魔人の俺たちからこの子が生まれて来るとは」

「この子は英雄になると思うわ」


両親が俺の将来を楽しみにしているが、俺はそんなめんどくさい事は遠慮する。





生まれてから7年、俺は7歳になった。

色々調べていると、この大陸は今、戦乱の世だった。

元々、大陸を統一した王様が居たのだが、跡取りが屑過ぎて各種族の上位貴族がそれぞれ叛乱を起して現状の状態になっているらしい。

純血統の王家が大陸中央に陣取り、我らが魔人族は北側、獣耳族は東側、長耳族は南側を拠点としている。西は中央から離れた人族が中心らしい。

魔人族は正式名 魔力のある人族で下級魔族は正直、微々たる魔力しか持たず、人族と変わらないのだが、髪の色の濃さと背中の羽の枚数で魔力量が変わるらしい。

貴族様な上位魔人は髪の色は濃い色をしており、羽が生えているのだ。

獣耳族は獣の特徴を持つ人族で、かなり身体能力が高い戦闘民族だ。

ラノベ的に言うと獣人だな。

長耳族は魔力はあるが魔人より低く、魔法を多様出来ないが、弓や罠など器用な細工が得意で、己の縄張りである森の中では自由自在に戦う。

自然の精霊を崇拝しており、ラノベ的に言うとエルフである。

人族は普通に人間だ。ただ強欲と言うか人族こそ真の支配者で、多種族は人族の劣等種だと思っている人が多い。

まぁその結果が今の乱世を引き起こしたのだから馬鹿だよね。


俺の居る村は国の端で国境近くなので結構、多種族の兵隊が来て襲われることもある場所なのだがここ7年は平和である。

理由は俺が結界を張って守ってるからだが、それを知る村人は居ない。


「グレン、野菜の収穫を手伝ってくれ」


親父のアーノルドに言われて俺も畑に入って行く。

風魔法でさくさく実と切り落とす。魔法便利だ。


「グレン。将来は王国軍に入るのか?」

「いや、この村で親父の様な農家になりたい」


俺の答えを聞き、親父は嬉しさ半分、悲しさ半分の表情をする。

両親は俺にはこの村に縛られずに、優秀な才能を生かして、国の中心で働いて欲しいと思っているのだが、俺はこのほのぼのとした村で親父達のように生活が出来れば幸せだと思っている。


「そうか…けど魔法学園は国民の義務だから行かなければ行けないからな」

「それも行きたくないのだが…」


魔人族は下級でも魔力があるので、魔法学園で魔力制御を学ぶのが国民の義務になっている。

上位貴族は庶民と違い、制御を学ぶのではなく、男は人脈と将来の就職先を見つける場に女は婚約者を見つける場になっている。

庶民と貴族の差別も激しく、最近戻ってきた近所の兄ちゃんは「貴族は傲慢で俺たちのことをゴミのようにしか思っていないから最悪な場所だった」と愚痴っていた。

学園でのトラウマが激しく、庶民で王都へ行く人がまず居ないほどである。


「リリナちゃんも行くのだからお前だけ行かないわけにも行かないだろ」


リリナは俺の幼馴染で、結構レアな聖属性の持ち主だ。

聖属性は魔力が少なくても癒す力があるので優遇されるのだが、リリナが政治の道具にされるのは俺は嫌なので守る必要があると言うかリリナの両親に「グレン君しか頼める子が居ないの、リリナを守ってくれ。」「あの子が自分で国のために働くなら応援するが利用されてあの子が不幸になるの許せないのよ」と頼み込まれたのだが…俺もリリナと同じ年の子供なのに何故だろうか…。

まぁ10歳になるまでの3年間はゆっくり村で過ごしますよ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る