第三章 (壱)
思いっきり学校をサボッてしまった。
一昨日、昨日と学校ではろくな目に合っていない。
今日出席しようものなら、通りすがりの暗殺拳の達人に撲殺されそうな気がする。
これは命に関わる事なので、人道上の見地からも休むべきだと自分に言い訳をしつつ、心は個人的に休校にした。
とは言え、何かする事があるでもなし。
最近新型が出た携帯ゲーム機でも買いに行こうと街に出た。
公営バスを乗り継ぎ御殿場線から下りて、目的の家電ショップに向かってぶらぶら歩いていると、誰かにつけられている気がして振り返った。
五感を通して入ってくる街の情報の中に、自分と連動するものを感じ取ったのだ。
気功を永くやっていると、感が鋭くなる。
日常感じられない微かな違和感を五感を通して感じられるようになるのだ。
例えば、目から入ってくる情報はただの動画ではない。そこにいる人は何を思い、どう行動するか、その気配を読み取れるようになる。物の形だけでなく、その奥のエネルギーの流れを読めるようになるのだ。
だから、たとえ死角で直接見えずとも、その周りの空気、気配の揺らぎで色々と分かるようになる。
日常人は、それ程明確な意思を持って行動してはいない。が、心はその中に、自分に向けられた意思のエネルギーがあるように感じた。
――気のせいか?
ここのところ、色々痛い事が続いたので、神経が過敏になっているのかも知れない。
気は体調に左右されるので、悪い時は感じ方もおかしくなり易い。
とっととゲーム機を買いに行こうと再び歩き出して、心は悲鳴を上げそうになった。
「元気そうだな小僧」
目の前に、フェロモンを撒き散らしながら諸悪の根源が立っていた
しかも、昔と全く同じ姿で。
「出たなこのエロ妖怪っ」
「〈師匠〉に向かって、何て言い草かねぇ」
「弟子になった覚えなんかない、どういう事だ!」
言いたい事、聞きたい事、懐かしさ。それらがごちゃ混ぜになって、何から言ってやれば良いか分からなくなる。
「とは言え、他の奴らはそうは思ってくれないのだろう?」
酔螺はしっれと言った。
「何で知って。はめたなこの疫病神……」
「何か言ったかい?」
「年よりは耳にくるらしい」
思いっきり頭を叩かれた。
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