魔法少女農業、始めました。
MADAKO
第1話 プロローグ
魔法少女。
この言葉を聞いた時、あなたは何を思うだろうか。
華々しく宙を舞う、可憐な少女だろうか?
愛と勇気を胸に悪と戦う、勇敢な少女だろうか?
困っている誰かを探し助けて回る、優しい少女だろうか?
どれも間違ってはいない。
魔法少女は、いつの時代も女の子の羨望と、憧れの象徴だった。
空を自由に駆け、摩訶不思議な魔法を操り、人々を救ってきた魔法少女。
幼い私も、それに魅入られたのだ。
私はあの日から、魔法少女を夢見る少女になった。
――
時は流れる。
あれから十年。
私は今、澄み渡る青空と、新緑の香りを運んでくる風と、暖かな初夏の日差しの中で……。
農業をしていた。
人生とはままならないものである。
私もあの頃のように幼い子供ではない。夢を語るだけで生きていけるほど、世の中が甘くないこと。希望を実現しようとすることは、それだけ多くの困難と闘わなければならない事を、今は知っている。
夢を見るのは誰にでも与えられた自由だが、夢を叶えることが出来るのは、その中でもほんの一握り。それが現実だ。
だが初めに断っておく。私は夢を諦めたわけでも、困難にぶつかって挫折したわけでもない。才能が足りない訳でも、努力してない訳でもない。
なのに……ああ、本当にどうして、こんなことになってしまったのだろうか。
事の発端は話せば長くなるのだけれど、これまでのいきさつと合わせてじっくり語っていこうと思う。
私こと
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人生とはままならないものだ。
私は全てを失った。
手に入れかけた希望も、やっと見えてきた未来も、何もかも。
彼女と共に消えた。
身勝手な奴らは、私の復讐を恐れ、私を祀った。そんなもの、償いにもなりはしないというのに。
そんな彼らも時代と共に消え、私を知らない人間と、私の知らない常識で世界が満ちてきた。
やがて私は大勢の人々の祈りを受けて、神となった。
荒ぶる怒りも静まった。絶望も、時と共に浄化され、穏やかな時間が流れ続けた。
だが、今でも後悔だけは残っている。
私は人々の祈りの中、その言葉を聞いた。
もうすぐ、彼女の残した希望に出会える、と。
私はその予言を一笑に付した。今更、彼女の忘れ形見と出会って何になる、と。
しかし私の想いは、日増しに高まっていった。
失った時間を、手に入らなかった希望を、今度こそ得ようと心が叫んでいた。
そう、今度こそ彼女を守り抜く。
私の心は、静かにそう決意していた。
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