明日も欠席
メバル
出会い
僕の住む町で突然3人の女子高生が行方不明になった。
内2人は高校一年生、1人は高校二年生だった。
警察は隣町で起こった未だに犯人が捕まっていないという女子高生誘拐事件と関係があるとして調査をしているらしい。
学校も1週間休みになり、次の登下校から地元の人がボランティアで通学路をパトロールするようになった。
僕の学校には頻繁に新聞記者やテレビ局から人が来る。
一回インタビューを受けたがマスコミはまるで彼女らがもう亡くなっているかのように質問をして来るのだった。
「ねえ、そこの君、ゆり子ちゃんのクラスメイト?できればどんな子だったか知りたいんだけど」
「そうですね…あまりクラスでは目立たないタイプの人でした、でも友達のいない感じでもなくて…」
「なんか思い出とか、何かしてもらったとか、エピソードあったら教えてもらえる?」
その質問はいるのだろうか。
「特にないです、あまり話したこともので」
彼女との接点はあまりない、話す話題もないし。
「協力ありがとう!!…ちっ、このままじゃ記事書けねえよ…」
ボソッと何か聞こえた。
家に帰るとどのニュースを見ても誘拐事件の報道ばっかりだ。
親も他人事にはできないような顔をしてテレビを見ている。
「犯人…捕まるといいわね…ゆり子ちゃん生きてるといいわね…」
「生きてるよ…」
「へ?」
「…きっと」
「そうね…そう信じるしかないわね…」
危ない、彼女が生きてることを知ってるのがバレるところだった…
~事件が起きた翌日~
学校は休校になり自宅からなるべく出ないよう言われていた。
なぜか、ゲームをしたり漫画を読んだりする気になれず、ただテレビをつけてぼーっとする日を送っていた。
のどが渇いた…
ガチャッ
うわ、飲み物何も入ってない…
「母さん、ちょっとコンビニ行ってくるわ」
「だめよ危ないわ」
「俺は大丈夫だよ、チャリ飛ばしてすぐ行ってすぐ戻るだけだからさ」
「…わかったわ、本当にすぐ戻ってくるのよ、2時間経って帰ってこなかったら警察に捜索願出すからね」
「わかったって」
財布と携帯をもって自転車で近くのコンビニまで行った。
やはり人気は少ない、小さな子どもは親と固く手をつないで歩いている。
子どもはボケっとした顔をしていて、その子の母親は少し警戒しているような顔をしている。
コンビニに着いてお茶2本とジュースを1本買ってコンビニの隣の駐車場でジュースを飲んでいた。
「ふー…静かだなー…」
ジュースを飲み干してゴミ箱に捨てる、そして自転車に乗り家に戻る。
そして道中で気がついた。
「あ、お茶忘れてきた」
駐車場でジュースを飲んでる時お茶を入れたビニールを足元に置いていて、それをそのまま置いてきてしまったのだ。
「…めんど…」
Uターンをしてまたコンビニに向かった。
駐車場に着くと、そこにはビニールの中を確認する人がいた。そして僕は誰かすぐにわかった。
「ま、黛…さん?」
そこには行方不明になっていた黛ゆり子がいた。
そして驚きのあまり口を開けて呆然としている僕に振り返った彼女は平然とした顔をしていた。
「あら、なんでいるの?今日は平日よ」
「いや…それはこっちのセリフなんだけど…」
「喉が渇いて、コンビニ来たらたまたまここにお茶が入ったビニールがあってね」
「そういうことじゃなくて!なんで行方不明のお前がここにいるの?」
「喉が渇いたから姿を現したのよ!!」
黛は唐突にヒーローポーズをする、そういうキャラだったのか彼女は。
「…えっと、まずそのお茶は俺がさっき忘れてった奴」
「あらそうなの…残念」
「で、今から帰ろうと思うんだけど、黛さんはどうするの?」
「うーん、お金持ってないけどここのコンビニのポイントカード貯まってるから、飲み物買おうかなーって」
「あの、なんでお前急にいなくなったの?」
「家出しただけよ」
「は?家出!?」
「家出してみたらタイミングが誘拐事件と被った見たいね、家出用の荷物のラジオ聞いてて驚いたもの」
行方不明の黛が姿を現して、そして彼女は誘拐事件とは無関係で…
「そ、それでなんで家に戻らないんだよ!!」
「なんか、戻ったら普通の家出より面倒だから、警察めっちゃ探してるし」
「そ、それで…」
「それだけのことよ、でもどうしましょう、そろそろ警察犬が出動でもするのかしら…?そしたらすぐ捕まってしまうわ」
「そんなことしてないで帰ろうぜ」
「私誘拐されてることになってるんでしょう?なら出て行きにくいわ、下手すりゃ非難もされるし、報道には私の名前も出ちゃってるしね」
「わからなくもないけどさ…」
「それに私は今を楽しんでるわ」
「家出の何がいいんだよ…」
「は?あなた家出したことないの!?」
「まあ…うん」
「人生の3分の4は無駄にしてるわ」
「100%超えてるじゃねえか!」
「と言ってもあなたに見つかった以上通報されたら困るわね、どうしようかしら」
黛ゆり子はどうしても家に帰りたくないらしい。
「親が嫌なら友達の家とか行けばよかったのに」
「嫌ではないけど家出が好きなのよ、それだけ
、泊まりに行くほど仲良い友達もいないわ」
「そんなんで親心配させていいのか?やっぱり通報した方がいいのかな」
「やめて、それだけは」
「見過ごせないだろ、行方不明になった奴が生きてるし事件に巻き込まれてないって知ったんだから」
「…私の身体を売るわ」
「は!?」
「好きなだけ縛ったり脱がしたり叩いたり突っ込んだりすればいいじゃない、だから通報だけはしないで」
何言ってるんだこの女は…なぜそこまで通報されたくないのか…
「そういうのやめろよ、あとそんな趣味ないから!!」
「じゃあ殺すしかないわ」
殺す?
「あーあ、誘拐犯に捕まってレイプされたと思われるならまだ耐えられるけど、人殺しはしたくなかったわ」
「ちょっと待てよ…ただの家出なのになんでそんな発想に至るんだよ」
「帰りたくないから」
「なんで人殺そうとしてまで帰りたくないんだよ!!」
「家や学校に拘束されるのは辛いわ、今が楽しいからよ」
「…きりがない、すぐにお前も確保されるよ。今回は見逃してやる」
「私が見逃せないわ、どうせ私と別れた後通報するんでしょ?」
「…もう!じゃあどうすりゃいいんだよ!」
「私と一緒に家出すればいいのよ」
「は!?」
「家出しましょう?」
「だめだめだめ!しないから!通報しない!」
「…約束よ?次学校来た時に通報したことがわかったら、あなたに有る事無い事されたって言いふらすから」
「意味がわからない…わかったよ…またな」
こうして僕は黛ゆり子と別れた。
そして1週間後、授業は再開、教室には空席が1つ。
彼女は未だに捕まっていない…。
そして僕は…なぜかあの日彼女と出会ったことを自分の心の中に留めたままでいる。
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