【米崩壊】フィラデルフィア・ゾンビのカラクリ

 アメリカ、フィラデルフィアが麻薬汚染でとんでもない状態になっているという話が去年あたり取り沙汰されて話題を呼んだ。


 フィラデルフィアは一大工業都市だった場所で、その後、経済構造の変化に追いつけずに過疎化して、多くの空き家や空き地が広がっているという。


 そこに麻薬中毒者が、なにかに吸い寄せられるように集まってきて、麻薬患者の街と化してしまったらしい。


 最初、公園などで屯していた患者達は、そこが警察などの封鎖で締め出されると、今度は空き教会に根城を変えた。その教会からも排除されると、鉄道高架下の谷のような窪地に屯した。それをまた排除する政策が打たれたという。


 ボランティアの人々は懸念している。ひと塊で大人しくしている患者達にはまだ福祉の手を差し伸べられるが、彼らがバラバラになり、数百もある空き家に居を移しだしたら、もう危険すぎてボランティアには行けないのだ、と。


 患者たちにインタビューすると、あるプエルトリコ人男性は、アメリカのフィラデルフィアへ行けば第一級の治療が受けられると聞いて、ここへ来たと語った。


 しかし、実際には国が指定する施設に入れるのは僅かで、彼も他の大勢と同様に無認可の施設へ行き、食い物にされたためにそこを出て、今は徘徊する生活を送っているという。



 負のスパイラルがある。ねずみ取りのように、更正施設の看板が患者をこの街へ呼び込み、弱者ビジネスの悪徳施設が患者の僅かな気力を削ぐことで、悪名高いフィラデルフィア・ゾンビを作り出している。


 アメリカの行政はこれをどうするべきなのか。


 考えられる手段は、私に思いつく限りはひとつしかない。


 弱者ビジネス業者を厳罰に処し、徹底的に弾圧し尽くして、彼らが真面目に認可施設と同レベルの仕事をしない限り地獄を見るという構造に変えることくらいしか。


 ビジネスは、結局のところ、どこへシワ寄せを持っていくかであり、個々の住民一人一人に押しつけるのはもう限界となった今、次に押しつけるべき相手はこの悪徳業者が一番、政治的にリスクが少ない相手だと思う。


 彼らを締め上げたところで、誰も文句は言わないのだから。



 このプエルトリコ人男性は、身分証にあたるIDを盗まれてしまって故郷に帰る手段すら失ったそうだ。言葉も分からず、助けも求められず、治療できる見込みもない。


 こんな人々がアメリカのフィラデルフィアには溢れており、他の都市にも増えているという。アメリカを目指してくる人々のうちのこういう人々を少しでも食い止めるために、あの国はやたらと物価を高く設定せざるを得ないのではないのかとも思う。


 スパイラル構造だ。



 中国にも実はこのフィラデルフィア・ゾンビのような状態の人々が溢れかえっている場所があり、それは年々増えていると聞く。


 こちらはアメリカとは逆に、物価が安いことで引き寄せているのだろうか。今や中国富裕層のチャイナドリームな暮らしは、贅を極めて他国の貧民たちに夢を与えていることだろうから。そうして渡ってきた者達は米国と同じ流れでゾンビになる。


 資本主義を分析した研究者たちは、ワンオブオールの結論を導き出したが、このような途中経過は推測に入っていただろうか。私は、計算通りのワンオブオールとなるような気がまるでしないけれど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る