「テラスハウス事件」の問題点を整理してみる ③

 今回の事件、もう一つ、ここまで考えてきて浮上した要点⑧がある。


8,匿名がデフォであるネットの世界に、実名で参加している人がいる。



 この問題が。


 被害者が、色々な事情から実名でネットに参加せざるを得ない立場だったことが実は一番重要な要点ではないかと思われるのだ。


 にげられない。


 数百人に囲まれても、実名だと逃げられないのだ。例えば、今は衰退してしまったmixiだって、登場当初は紹介制を取っていた。なぜかをいちいち述べねばならないだろうか。


 今回の事件、色々言っている人は実名でやってる人が多数に思う。特に著名になっていくほどネットの匿名性は薄れていくわけで、それだけ危険も増えていく。


 だが、だからと言って全員が実名でやれというのは、新たな問題点を生みだしてくるだろう。現実の世界と同じ、「権力の横暴を許すようになる」という問題だ。匿名の場合、相手の正体がわからないが故にその意見は横並びになる。地位や権力、名声によって差がつくことはない。皆が等しい立場で意見を交わし、色眼鏡ナシで人々は意見のみにて判断するという仕組みになっている。


 そこに、実名という権力の名刺をデフォルトにしようと言っているわけだ。


 例えば、企業への批判を匿名で書くならば、またその批判への支持も匿名で良いならば、多くの人々は安心してこの批判に乗ることが出来る。「報復」される危険が少ないからだ。権力のある者ほど、「報復」は容易なのだ。


「報復」を背後に隠して、実名の名刺を差し出している、と言っていい。


 受け取る側が「匿名」であればこの報復のカードは大幅に威力を下げられてしまう。それが故にネット上では批判が横行するという構図になっている。




 この一点において、例えば普段は権力の横暴を許さない!と叫んでいるような某議員さんたちなんかまでが、花さん可哀想で目が眩んでしまって、この隠されたファシズムに気が付かないのがどうにも……


 悪徳企業が資金にものを言わせて片っ端から自社を告発する個人を訴訟してまわる、という悪用がされるのは目に見えているではないか。

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