異文化同士の衝突(刺さりすぎてキモが冷えるⅢ)

久美沙織『創世記』

http://lanopa.sakura.ne.jp/kumi/01.html


 これ、このエッセイの回顧録的なトコに見える当時の”意識”ね、これが重要なのですよ。ネットが始まる以前の不便な文化流通の実体というべきか……。


 昔は電話かけたら1分10円必要だったんです。

 ネット黎明期もそれは変わらず、「テレホーダイタイム」なんていう懐かしい単語も今じゃ知らない人の方が多いくらいじゃない?


 現在のように、ネットがほぼタダ同然になったのは平成に入ってしばらくしてからで、だいたい2000年代からと思っておくと後々の計算が楽だよね。


 つまり、2000年を皮切りに、時代が大きく違っているってことです。



 時代背景と文化が異なれば、その前後にある「小説界隈」も当然のことながら、「異文化」となります。バックボーンが違うし、そこに属する人々の感覚も価値観も違うからです。どういう文化の中で”育ってきた”のか、が重要。


 だから、この先生はラノベと聞いて違和感を感じるわけですよ。ラノベ真っ只中の世代の価値観とか文化とかとはまったく違う中でやってきたから、微妙に違うんですな、根底に流れているモノが。(笑


 SFのくだりで瀬名先生のエピソードが出ていて、「これは”ドラえもんSF”じゃない」とかの台詞がありましたが、あの感覚と同じものを感じ取られたのだと思います。それは共有される価値観であり、経験によって蓄積されたモノで、漠然としている中でも「共通の認識」として依然存在する確かな感覚なわけです。(旧世代の文化は、前例とされるジャンル先行作品を”膨大に”読むという行為によって培う”体験的感覚”であると思われる=敷居がべらぼうに高く現代人は嫌悪感を覚えるのかも…)


 これが取り沙汰されるのは「SF」の他に「推理小説界隈」と「文学」があるね。



 んで、私はさ、実は前々から「レーベルの差でしかない」とか「みんな同じ」とかいう民族浄化思想というかほれ、強制的に同化させて異文化統合を図る暴力的構図な、アレそのものだからその系統の言説が大嫌いなんだけども、わかるかなぁ、この先生の「私のってラノベなの?」という発言に嫌悪感を持ったヒトってのは、少なからずそういうジェノサイド志向にあるのよ?、て。


 たぶん、正当化からの異文化排除の心理的作用とは思うんだわ、無自覚の差別ってヤツで敵を排除するのに同化政策を推し進めて、多数決的に押しつぶそうってハラなのな。(笑


 若い人たちがラノベ血統で、テレホーダイ以前の古い世代がジュブナイル血統、みたいな単純な分け方も出来ないからね、ちなみ。(笑


 ジュブナイル系はそれ以前から脈々とあった正当派ブンガクの流れから派生していて、ラノベ系はブンガクの流れとは無関係に発生した流れだから、そもそもで源流が違うから。ラノベに細かなルールがなくて自由なのはそのせいでしょ。


 俳句と川柳くらい違うのよ。


 それを「同じだ!」と叫んでしまう同化主義者が野放図に活動してて、その正体を多くの人がまだ気付いていないもんだから、面倒な感じになってんのな。(笑



 前からこのへん、悶々としてたんだけど、いやぁすっきり片付いて晴れ晴れ。

 あー、すっきりした。(*´∀`*)



 ついでに言っとくと、ラノベにはまだ権威付けというか質を測るモノサシがないわけですが、それも川柳だからだと言えるのね。ジュブナイルだったら文学のモノサシを流用して測ればいいんだけど、ラノベは系統が違うからそれじゃ良し悪しが測れない。モノサシがないってことは批評も出来ないから体系も出来ない、体系がないから分類も出来ない、分類がないからタグ付けも出来ない、タグがないからごちゃ混ぜ…という具合に、ラノベ界隈が混沌としてて検索に不便なのは当然の帰結なわけだわ。


 そんだけごちゃ混ぜの乱雑提示で商売してたらさ、整理整頓された商品棚に比べてなんか安物っぽい印象を与えてしまうのは仕方がないって側面もあってな。しかも批評家たちのご大層な論文も付いてないわけでしょ? イメージがこう、固定化すんのも仕方ないというべきか…(人はみな、比較と順列付けたがるよね、て)


 批評というと、特にラノベ界隈じゃ毛嫌いする人が多いけど、なんかお門違いじゃね?とかと思うですよ…


 批評ってのは、ブンガクなんかにおいては「箔付け」の意図もあるから、いわば「保証書」なわけでな。これが絶賛してるモンは高品質と見ていいわけだよ、批評家が太鼓判押してるわけで、その批評家の分の信用が上乗せされてるわけだ。だから批評界隈も権威付けでランキングみたいのは歴然とあるんだし、そっちはモロ信用で作り上げられるってタテマエは守ってんのよ。


 権威とかいうとこれも毛嫌いする人が多いけどねぇ……(笑


 今ほど情報が開示されない時代に、いかにして信用とか保証ってのをラベル表示するかってんで工夫されてきたシステムなわけでな、そんなバカにしたモンでもないと私は思っているですよ。


 とは言え、人間がやることだからさ、間違いがないってわけはないんだ。だけど、全体見て何パーセントとかのその例外を取り沙汰して、権威なんてのは!とかとやるのはさ、詭弁だろ、と。個人がなんの頼りも持たずにやるより、経験値の総合が違う分だけは向こうのが上等なモンになるなんてのは、簡単な算数だと思うが。



 話が飛ぶけど、「同化政策主義的に多数決で押しつぶそうとする差別」てのさ。


 これ、かつての差別政策ってのはわりとインテリジェンスが必要だったですけども、この手法の画期的なのはさ、いわゆる衆愚ほど率先してやらかすよな~、てトコですだよ。とっても簡単なんだもん。「反差別・平等」ってのを煽ればいいだけだし。(”自由”を抜くのがポイントだよ♪)


 巧い手を考えつくよなぁ…と感心した次第。(笑

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る