経済4サイクルは、どこでも回っている。(刺さりすぎてキモが冷えるⅢ)
久美沙織『創世記』第十一回
http://lanopa.sakura.ne.jp/kumi/11.html
<前略>
ちょっと遅れて読んだ今年の週刊朝日の3月12日号に『マンガ原稿料が安いワケ』というたいへん興味深い記事があった。竹熊健太郎さんの『マンガ原稿料はなぜ安いのか?』イーストプレス刊 に関するみひらき2ページの短い記事であるが、その中に『マンガ産業論』(筑摩書房から7月刊行予定だそうだ)を執筆中の中野さんというひとの発言が紹介されている。
「わたしの甥が小学5年のころ『マンガはストーリーが複雑で情報もごちゃごちゃしていて面倒だ』と言った。それで中学に入った今もマンガを読んでいません」
おかみき最盛期、わたしが読者からうけとったレターとそっくりである。
「最近のマンガはなんだかすごく難しくって、とってもついてけないけど、コバルトはわかりやすくて、バカなわたしでも楽しく読めるから好きデース♪」
ということなのである。
水は低いほうに流れる。
カネは需要がたくさんあるほうに流れる。
よって、業界は「成熟」するとかならず「てっとりばやく成功する道」を肯定するようになる。「いまウケてるものにできるだけ似ていて、ほんのすこしだけ新鮮なもの」を求めるようになる。
フツーな感覚の「おもしろさ」や多くの読者に「ウケるもの」にいまいち関心がもてず、しかも、自分なりの「カッコよさ(美学といってもいい)」にものすごい愛着があり、かといってプロなんだからそれで食ってけないと困るわたしの、あしたはどっちだ?
ゲーム業界だった。
『MOTHER』が、続けて、ドラゴンクエストのシリーズが、まったく別の道を拓いてくれたのだった。
なにしろゲームのノベライズの読者は元のゲームは十中八九クリア済みだ。つまりストーリーもキャラも「既に知っている」。だから、そんなもんをただなぞることには意味はない。重要なのは「あらすじ」ではないし、セリフでもない。
描写だ。
ここに、わたしの、わたしが信じる、わたしが伝えたい「カッコよさ」を発揮する余地があった!
わたしはたまさかの偶然で本来自然にはできるはずのない形態に生まれ落ちてしまって子孫を残す可能性のないミュータント(レオポンとか、ライガーとか)かもしれないが、読者は作れる。
ゲーム読者は若い。
このわたしが感じる「カッコよさ」を「すげぇ! カッケー!」と言ってくれるような読者を作りたい、増やしたい!
「かっこよさ」とは、データではなく、カタログ的ブランド的な「権威」でも「流行」ではなく、あくまでなんらかのものごとを切り取る特別の角度であり、何かを語る場合の語り手を設定する選択眼であり、見つめる視線の置き場であり、エピソードを選択する判断力であり……そしてなにより、「知性」だ。
ホルモンで感じるものではなく、自動反応する感情ではなく、前頭葉を経て、「これまでのなりゆき」を知っているからこそ、「わかる」その一瞬の刹那の重さ。
それを、ことばで、ただことばの力だけで、この世に本来はなかったものを、再現すること。
はっきりと味わわせること。
もし、ゲームをプレイした時、自分が勇者として戦ったときに、いやおうなく感じた「恐怖」や強い敵を倒したときの「満足感」に勝るものを、脳みその中で強烈に再体験させることができるなら。
こんどこそ、「読んでほしい読者」に「読んでほしい読み方」で読んでもらえるようなものが書けるかもしれない。
それがわたしの、いたってワガママで(しかも生活費をかせがなければならないという功利的な側面もしっかりと持った)動機だった。
自分に、「もうコバルト作家でいることはできないんだ」と、言い聞かせるときの。<後略>
『「かっこよさ」とは、データではなく、カタログ的ブランド的な「権威」でも「流行」ではなく、あくまでなんらかのものごとを切り取る特別の角度であり、何かを語る場合の語り手を設定する選択眼であり、見つめる視線の置き場であり、エピソードを選択する判断力であり……そしてなにより、「知性」だ。
ホルモンで感じるものではなく、自動反応する感情ではなく、前頭葉を経て、「これまでのなりゆき」を知っているからこそ、「わかる」その一瞬の刹那の重さ。
それを、ことばで、ただことばの力だけで、この世に本来はなかったものを、再現すること。
はっきりと味わわせること。』
大事なことなので、二度、繰り返します。なんなら三度繰り返してもいい。
私が目指したいところのコトをこんなに明確に、それももう何年も前に決意し歩みを進めている先輩がいた。
私も間違ってた方で、今なら解るんだ、メタ表現を多用して「楽に書けるし読めるけどわかった気がするだけの文章」と「脳裏に場面を描き出させる計算された描写」との違いってヤツ。ゲームの二次創作で初めて目にして、だけど計算の行き届いた描写は、その文章が想起させる場面は、決してボンヤリしてなどいない。当時、自分が書いていた文章とは明らかに違う、異質なモノだった。
アレがやりたい、ってずーっと願ってきたんだよなぁ。(笑
ああ、ああ、そんで、その次のページの「フォワードのテーゼ」だよ!
なんか謎の感動に包まれるエピソードだ。インテリジェンスだ。なんてカッコイイ世界が広がってるんだろう、私もその場に立っていたい…!(何を喋ってるかチンプンカンプンだろうけど)
理想のカタチのひとつが、こんなトコロにあった。(理想主義の敗北の時代に!)
久美沙織先生が、血涙で悔しがっている『安達ヶ原の鬼』タイプの、宮部先生のとクリソツな話がかの「課長島耕作」の作者が出した「黄昏流星群」の中の話に出てきますよ。そっちでは、設定は違うもののオチは同じで孫が来ますが、なんというか味わい深いエンディングになってます。さすがに人生描く名人なので。
て、こんなトコでお知らせしても届かないかなぁ~。(苦笑
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