珍しくカクヨム内作品を取り上げてみる【ネタバレ注意】

https://kakuyomu.jp/works/1177354054891978304

『高き館の王の書(碧美安紗奈さん)』



 まず、オール讀物推理小説新人賞予選通過作という点に引かれて読んでみた、という点を先に強調しておくよ。ラノベは求めていないという戦場で戦った作品に興味があったのです。実際の選考や応募作の傾向がどうだったかは知らないけど。


 あれだ、浅田次郎先生とか東野圭吾先生の作品とかと同じフィールドに並ぶことを予測される賞だからね。最近は謳い文句に「ファンタジーOK!」とか書いてるかと思うんで、それで作者さんは出したのかなと思ったですよ。(私だったら信じないけどな、そんな謳い文句)


 おおむね、すごくレベルの高い作品だと思いました。三次落ちでベスト8に残れなかったというお話だったけど、このクオリティでなぜ落ちたのかってのがすごく興味を引いたので、ちょっと考察してみましたん。


 いい点は他の誰かに聞いてくれ、というスタンスですんで作者さんには見つかりませんよーに、という感じでナイショで書いたよ。ナイショね、ナイショ。(笑


 まず、応募した賞が「オール読物」という「大人の」ミステリ賞だったことね、これがラノベの賞だったらもっと上に行ってたと思うんだな。読み終えた感想が、あそこの読者層向けじゃない、て言うか、あそこの読者は読まんよな、て。そうなると、よほどの出物でないと受賞は難しくなる傾向があるらしいんだわ。知らんけど。


 それと、ミステリというジャンルからは少しズレていたからね、これも加点には繋がらなかったんじゃないかなぁと思う。「謎解き」になってないんだよねぇ…。謎が中心にあるのはあるんだけど。(私もコレはちょいちょいやらかすから他人事じゃない)


 それから、バチカンと魔女狩りを題材にしてる割に、ストーリーが普通っていうか、例えば異世界とかでも問題なく展開出来ちゃうんじゃね?てトコが、惜しいと思った。バチカンと中世魔女狩り何かのポイントをストーリー内に突っ込めたら、もっと上に行けたと思う。


 つまり、「これ、バチカンと魔女狩りでなくてもいいよね?」というツッコミを選考委員に食らった可能性があるかなと思ったってことね。賞選考だとこういう些細なポイントを比較されて落とされるんだけど、逆に三次までは余裕で残れたってことだったら、そうかなぁと思ったわけです。設定を活かしきれていない、とか講評に書かれるよーなね。


 で、一番気になったのは時制の混乱ね。ラストがね、主人公は死んだんじゃなかったっけ???て混乱したの。かと言って、構成はこの順番でないとこれもマズいんだわ。ラストの尼さんのシーンは前後に切って、前半分を主人公の謎解きパートより前に持ってきて、ミスリードを仕込みつつ、このシーンの時間は謎解きより前だよって示しておけば混乱しなかったと思うのな。対峙した場面で打ち切って、主人公にシーンを戻すでしょ、それでラストまで流して、あの尼さんの場面に繋げる、と。

 誰が襲ってきたのかを不明にしておけばミスリード付けた上に緊張感も足せて一石二鳥だったのにな、と。


 あの時制の処理がマズかったトコはちょっと大きな失点を貰っちゃったんじゃないかなぁと思って。他はキャラクターも文章も水準以上だと感じたから、ほんとに惜しいトコまで行ったんだろうなぁって。(全体に、ミスリードは巧みなんだけど、それを解き明かす際の文字数不足というか、もっと丁寧にやっても良かったというか、読者の中にはチンプンカンプンだって思っちゃう人も出てきそうだなとは思ったけど)


 もひとつ挙げるなら、あまりにキレイに終わりすぎちゃったことかな。どうも続編可能かどうかってポイントが大きいみたいな噂を聞くから。噂だけで実際はどうか解らないんだけどね。(笑


 まー、全貌が解らない賞選考レベルの一端というか、

「このレベルでも落ちるってマジか?」てのがすごくよく解る作品。


 Web平均で見てもすごくクオリティ高いと思うんで、お薦め。



 作者さんに見つかって、もし気分悪いということなら消しますです。ハイ。

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