筒井康隆、パねぇ。

 いや、本屋さんと古本屋さんで収穫祭でして、ついに話題の「屍人荘の殺人」を購入したわけですが、ついでに寄った古本屋さんで「文学部唯野教授」も入手したわけです。んで、まだ「有栖川有栖の本格ミステリ・ライブラリー」も読破してないってのに、ちょっとつまみ食いのつもりで、ほんの2~3行のつもりで読んだこの、筒井康隆という怪物をですね、なんやこれ止まらんやん、というワケで一気に20ページをパクパク食べちゃった、てなわけですわ。


 これ! これ、どういう仕掛けなんでしょうかね、たったの20ページですよ、たった20ページでもう気になるキャラが出て来ちゃうわ、続きが気になるわ、読み飛ばしてラストどうなるのか知りたくなるわで、困っちゃう、ていうね。


 私基準ですが、読み飛ばして結末知りたくなる衝動が早く来れば来るほど、その作品は傑作ですわ。実は感性のみで判断している向きが無きにしもあらず。


 いや、筒井作品、ちゃんと読んだのこれが初めてだったりするんですけども、なんか文章に既視感がアリアリですなぁ、この流れというか、ポンポンとアップテンポのまるでヒップホップ系掛け合いバトル的な文字列の流れってのは、これは源流が筒井先生にあったってことでしょうかね。(私も割とその流れ汲んでます)


 いやぁ、色々と読み応えがありすぎて。(笑


 この勢いで続けてミステリセレクションの洋の東西選抜精鋭作品群読んだ後での、最新話題作というこの順番は果たしてどうよ?という感じは否めないものの、まぁ、これも巡り合わせというわけで、多少辛口批評になるだろうなという予感はありますけども、今から楽しみっすよ、世間が認めた斬新切り口だとかの話題作。(笑


 話を戻しまして、閑話休題っすな、この語句は横道逸れぇの脱線行くべぇの宣言文だと思っていたら、締めの言葉だったていうね、余談に行く前につけたらアカンそうですわ、皆さん。詳しくはhttps://kakuyomu.jp/works/1177354054881006064「間違えやすい日本語表現」参照のこと。澤田さん感謝です。


「文学部唯野教授」ですよ、いや、文学批評とかのざっくり解説書を兼ねたこの作品、当時は文壇とか評論家にずいぶん叩かれたんだそうですが、まぁ、こんだけ関係各位をボロクソ書いてたらそら敵対心煽られるヤツ居るだろな、という感想。だけど、ここまで怖い物知らずに書けねば本気で面白いモノなど書けないということも示唆していますわな。全方位的に喧嘩売りまくり姿勢ですわ。


<引用>

(前略)『文学とは何かを考え、なんらかの理論に従って分析すると面白いと思われる作品も、何よりもまず読んで楽しいことが第一ではなかろうか』なんて言ってけちつけるの。つまりこのひと、これまでの文学理論を全部否定するっていうか、ま、何も知らないんだろうけど、そうまでして自分が面白かった、面白くなかっただけの印象批評に執着してるんだよね。馬鹿がそれやると困るからこそ文学理論ができたっていうのにさ。(中略)印象批評のご兄弟、ご親戚筋にあたられる規範批評というのがあります。たとえばですね、野田耽二の『象牙』に対して大林厚一というひとが『群盲』誌上でこう書いてるの。『自由な自我について語るときに、その前提となる自我についてはほとんど不問にしている』、そのほか、さまざまな前提について不問にしていると不満を言っています。これが規範批評のひとつの例でしてね。(後略)


 印象批評については読めば理解できると思うんだけど、規範批評ってのはちとこの例文とか作品内の記述でも解りにくいかと思うんで補足しときますと、規範と付くことで察せられる通りで、決まりガー、仕来りガー、伝統的ナー、とかっていうヤツのことですね、ラノベとかテンプレ周辺で貶される時によく聞くリクツと思ってもらって結構です。異世界転生なんかで、前世に未練がなさ過ぎるのがウンタラ~とか、死を経験してる割にカンタラ~とかの、アレね。


 けども、この辺りの下りとか読んでて、もうね、「うんうん、そうなの、そーなのよ!」てな感じで拍手喝采でしたわ、私。特に印象批評。(笑


 馬鹿がそれやると困る、馬鹿がそれやると困る、馬鹿がそれやると困る、馬鹿がそれやると困る、……大事なことなので何度か繰り返してみました。


 ダメ押しに作中引用部を引用してきちゃいましょう。


(前略)最後に、こういう批評に対して大江健三郎の書いていることを引用しておきます。これに尽きると思うんだけどね。『文学理論は必要です。評価する・あるいは否定する根拠なしの、あいまい主義的な批評に晒されているわが国の作家たちには、それもとくにこれから小説を書き・発表する若い人びとには、文学理論にたつ批評がなされることほど望ましい話はないはずです。気分次第で賞めたり叱ったりする親ほど教育的でないものはないように、あいまい主義的な批評が若い作家をよく育てうるとは思いません』。(後略)


 ここら辺りを正しく理解しているなら、世の中の、特にWebの読者ランキング至上主義的価値観が蔓延することで腐ってしまう作者や読者が居ることの意味が、違った見え方をしてくるもんなんだけどもね。


 多数決は決して、正解とイコールではないってのは、暗黒の歴史あたりを紐解けばナンボでも出てきますわな。奴隷制とかな。これを無条件に支持するヤツには馬鹿のレッテルを貼ってますのことよ、ワタクシ。不適格と解っていて、オノレの価値観の根底に置いて判断くだしてるとか堂々とぬかす馬鹿。(笑


 普通、一般的にはだね、多くの人が話題作というんでそれを手に取るとかいう場合はさ、動向調査的な興味で手に取るわけじゃないすか。話題だってんで、どんなもんかいな、てなモンで。それと自身の下す評価はベツモンですわよ。


 たまーに、ここ、勘違いで、話題作だから凄いんだ、ていうヘンテコリンな直列回路になってる人が居るけどね。売り上げNo1と支持No1と、支持においても素人と専門家ではその意味するところが違うなんて当たり前やんって話なんだけど、これをいちいち書かねば解らんって人がかなり居るよーな危機感がね、ひしひしとね。


 あなたの健康を害する恐れがあります、とかいちいちタバコの箱に印字し始めた頃に世間が「馬鹿にしとるなぁ」と半分呆れとったあの空気が懐かしす。


 ねぇ、マジで、1から10まで説明せんとアカンの?(苦笑

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