浅田次郎『一路』
題名だけは知ってた著名な作品。いや、これ、さすがに浅田次郎だ、すごい読みやすいよ。時代小説だっていうのに、その特殊な言い回しの取っ付きにくさを軽々越えさせる工夫が各所に散りばめられている。
焦点にあったのは、時代モノを時代モノとして彩る昔風の言葉回しだろう。コイツの特徴を先生はちゃんと解かっていただろうと思う。
これは現代人には馴染みが薄いから、そのまま読みづらさに通じてしまうわけで、それと解かった上での対策がしてある。お見事。言語を理解してるって事だ。
馬喰の双子を連れまわすくだりなんか、入り込んで読めた。これを成立させる為にだろう、現代モノ以上に余計な描写が廃されていて、人物に集中されている。とにかく描写は人間から一歩も出ず、読者の興味が薄れそうな事物にはほとんど視点が移らない。しかもその一場面一場面がドラマのように劇的で、緊張感が途切れない。そのくらいにしてようやく、時代モノという言葉遣いの慣れなさが相殺されるのだ。
いや、そのくらいしないと、言葉遣いの不慣れを克服できない、そうと気付いた、そこの勘所が凄い。
凄いなぁ、と素直に感歎した。
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