魔法と科学
私は、魔法とか固有能力とかの単語だけで、理屈から逃れようとする作品はあんまり好きじゃない。科学魔法とか、ちゃんと体系立てて、マナという概念を創造するにしてもそのマナがどういうもので、世界がどう成り立つかまで、作品に出てなくともきちんと作りこんである作品ならば、本格的なファンタジーとして好きだ。
そもそも現実の世界においても、オカルト的な要素というものは、科学の考察が追いつかずにそのまま放置されてはいるが、だいたいのところの予測は付けられているものだと思っている。
サイコキネシス、パイロネキス、神隠しなんかは瞬間移動ではないかとか、超能力系はだいたい科学のメスが入れられている分野。霊能力も。
そういうのは、物語的には手垢が付いていて、古臭いとかの理由で使われず、その代用品としての名称でしかないと思っているのだ、魔法だの固有能力だのは。
ダサいからだろ? だから魔法とか言ってるが、現象自体は同じじゃねーか。異世界とか言ってるのは、平行世界だの地球外生命とかが古臭い設定だからだと思っているし、観測者とかも手を換え品を換えで結局はSFから何も抜き出てなどいないと思ってる。言葉を変えて、説明の手間を省いただけ。新しいパッケージにしただけ。
そういう捻くれた物の見方をしてたりするけども、そもそもで現代科学において解明されている部分なんぞは、この世界のたったの7%だという事を忘れちゃいけないと思うんである。科学至上主義的なのも、ここを無視してれば荒唐無稽で馬鹿げて見える。SFというのは、クールなのだ。分析的なのだ。
だが、ファンタジーにクールは似合わない。分析もあまりやってしまうと現実の世界が滲み過ぎて、現実を離れる意味が消え去ってしまう。
SFとファンタジーは、磁石におけるSとNだと思っていて、あんまり近寄りすぎるとそれぞれSFである理由、ファンタジーである理由を失ってしまうと思う。要素で分けられるが、その要素自体は、カテゴリの為にしか存在していないと思うんだ、概念すらが。
手から炎を吹き出す、同じ現象だ。これを魔法とするか、パイロキネシスとするかは、単純に、その作品がファンタジーなのかSFなのかの理由しかないと思っている。物語の作話的事情しかそこには存在していないと思う。その事情はまた、作者個人個人の都合でしかないと思っている。
それが、フィクションとノンフィクションを分けていると思っている。
この作品はファンタジーだから魔法という名称なのだという時は、問答無用でいいと思うんだな。SFは本来分析が本領なので問答無用という「その態度」は頂けないだろうけども。作者の意図によると思うのだね。うん。
ある種のミステリ、いわゆる怪奇物ね、江戸川乱歩だけども。これなんかは、最初ファンタジーかホラーで書いていって、最後のどんでん返しで一気にサイエンスフィクションに落とし込む手法を指してんだよ。幻想系とかソッチ系。
「幽霊の正体見たり枯れ尾花」をやるジャンルのミステリだからさ、ファンタジーのような問答無用精神は通用しない。片方にそういうのがあるってのを、なんか、最近の人らは否定しようとしてるように見えて仕方ないんだよなぁ。被害妄想かな。
コジツケも駆使してなら、どんなファンタジーだって立派に科学的設定を付加してしまえるもんだけどさ、それって野暮でしょ? て話だと思うんだよね。それこそ、
「幽霊の正体見たり枯れ尾花」になって、ファンタジーは夜が明けたら消えてしまうモノってことになるじゃん。フシギを愉しむのがファンタジーなのに、それをぶち壊すのが愉しみのサイエンスフィクションと噛み合うわけないんだって。
ありとあらゆる設定をサイエンスに塗り固めた世界観は、ファンタジーとは呼ばないでしょ。それはSFだよ。エルフが出ようが、魔法と呼び習わす超人改造の特殊技能が飛び出そうが。言葉の選択でイメージを偏らせただけの、同じ現象だよ。
魔術師はさしずめ、品種改良を世代で延々重ねてきた変異民族、ということかな。誰もが魔法を使う設定ってのも、もちろんナンボでも科学のこじ付けは可能だよ。
魔法と科学が気になるってのは、むしろ、カテエラ感覚に関係してるからって事だと思うけどなぁ。
けど、そもそも論で現実の科学が7%しかないってのを踏まえたら、この世はフシギだらけで現実に魔法があってもなんもおかしくないんだよね、そのうち解明されちゃう予定ってトコを省けば。その予定がファンタジーと現代を分けるのかも知れないな、うん。その予定があれば、物語設定的なアレコレの計算も変わるもんね。
SFファンタジーはむしろ簡単なんだが、純粋無垢のファンタジーは作れるのだろうか? という命題が頭に浮かぶ。科学的こじ付けを許さないような設定は作れるだろうか。SFファンタジーとして化学変化を起こすことない、純粋分子のみで構成されたファンタジー作品は存在しうるだろうか? ……なーんてね。(笑
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