序章 とある少女の怪奇譚
その少女が生まれたとき、分娩室の道具が盛大に宙を舞い、少女の誕生を祝った。
その少女が初めて母に抱かれて家にやって来たとき、おとなしかった猫が襲いかかってきた。
その少女が一歳の誕生日を迎えた日に、可愛がっていた小鳥が全て死に絶えた。
その少女が二歳の誕生日を迎えた日に、隙あらば少女を引っ掻こうとしていた飼い猫が、姿を消した。そして、そのまま帰ってくることはなかった。
その少女が初めての七五三にいった日、少女に触れた男性が心不全で帰らぬ人となった。
その少女が五歳になったとき、親戚の叔父さんが事故に遭って死んだ。
彼は、少女の誕生日会に来る途中だった。
その少女が六歳になったとき、父親が死んだ。
母親がおかしくなったのは、このときからであった。
母親は少女をおぞましいものでも見ているかのような雌で睨み付け、言った。
「あなたは、悪魔の子だ」
その少女が十歳になったとき、母が死んだ。
毎日浴びるように酒を飲んでいた母が死ぬのは、少女にとって当たり前の事だった。
その少女が中学にはいったとき、引き取って育ててくれた祖母達が死んだ。
悲しくはなかったが、何となく退屈だった。
その少女が中学三年生になったとき、彼氏ができた。
何度傷つけても、酷い言葉を投げ掛けても、その少年は笑って全てを受け止めてくれた。
ずっと一緒にいたい。
初めて、少女に感情が芽生えた。
その少女が、高校生になったとき。
ずっと一緒にいたいと思っていた
彼氏が
しんだ。
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