ハッピーエンドよりバッドエンドのほうが終わらせやすい【落ち】

 今回は「ハッピーエンド」について考えてみます。

 バッドエンドは、わりと種類も豊富でどんでん返しにも使いやすいという特徴があります。例えば、死亡エンド・別れ・鬱エンド・全否定エンド等ですね。


 なかなかハッピーエンドというものは、こう予定調和というか、どうしてもありふれた結末になってしまい、使いどころが難しく感じます。

 長編の場合は大団円でも受け入れられやすいですが、短編やショートショートでのハッピーエンドは「どう幸せに終わらせられるか」と悩んでいます。


 幸せに見えて後味が悪いのはハッピーエンドなのか、主人公以外が不幸になっていたらハッピーエンドなのか「幸福」という定義自体が曖昧になりますね。

 まず、他者・読者から見た幸せか、主人公勢の幸せな結末か、それとも両方が無ければハッピーエンドとは言えないのか考える必要がありそうです。


 ユートピアかと思っていたらディストピア落ちの話も多い気がするので、逆にディストピアかと思っていたらユートピアな世界だったとかどうでしょうか。

 ただ、世界観がどうであれ、主人公の心持ちによってはハッピーエンドとは言い難い結末になってしまう部分もありますね。


 上記の例えで「主人公はニートで生き甲斐がないとぼやいているが、実は全てロボットに任せて働かなくても良い世界だった」というのはハッピーエンドなんでしょうか。ただ、主人公にはライフワークもなく、ただただ退屈な日常を送っているので幸福な結末ではないかもしれません。本当に難しいですね。


 ハッピーエンドの「幸福」から考えなくてはいけないとは、思ったよりも複雑な命題に挑んでしまったのかもしれません。逆に「バッドエンド」なら「愛別離苦・四苦八苦」といった「多くの人間が不幸だと思う終わり方」が多いので、簡単に落ちをつけやすいのかもしれません。


 ただ、バッドエンドだけではなくハッピーエンドも考えることで、様々な結末の種類を開拓できそうな気がしてきました。

 逆に「明らかにバッドエンドな落ちを、どうハッピーエンドにするか」という考えでひっくり返してみるのも面白いかもしれません。



・ディストピアかと思ったらユートピアだった落ち

・人工知能に個の人格を奪われるが、様々な人間の思想が解け合い、差別も境界線も何もないユートピアへと変貌した落ち

・自分が無能なことに悩んでいた主人公が、自分が一番有能な世界に行き、何もかも不便な生活だが周囲の人間に持て囃されて幸せな落ち


・戦争から帰りを待っていた女性。彼が生還して終わる。しかし、彼の敵は世界そのものだったため、二人以外は誰もいない世界滅亡落ち

・失恋したが、好きだった人がいろいろやらかしていたため、付き合わなくて結果オーライだった落ち


・苦しい暮らしをしていた主人公が、カルト宗教によって救われる落ち

・自分の命を掛けて守りたいものを守れた落ち

・死ぬことが出来なかった存在が、死によって救われた落ち

・勇者が老人となり、我が子に様々なものを託し、畳の上で大往生する落ち



 途中から「ハッピーデッドエンド」を追求する流れになってしまいました。

 新しい概念として「ハッピーバッドエンド」も考えてみようと思います。

 ハッピーバッドエンドは「バッドエンドだけど主人公勢が幸せな結末」で、逆にバッドハッピーエンドは「主人公勢は不幸だけれど結果オーライ・読者や他者から見たら幸せそうな世界の結末」でしょうか。ゴチャ混ぜになりそうですね。


 こうして様々な結末・転結を考えることで、より書ける話の幅も広がります。

 今後も、いろいろと考えていければ良いですね。

 願わくば、この中からプロットに育てていけるタネがありますように……

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