優しい騎士にしかできない、誰も幸せにしない選択

あか つかさ

始まり

『サミュエル』

 だから僕は、拐かしてでもその女性ひとを連れて行き――差し出さねばならないんだ。


 それで? それが何か難しいことなの?


 選択をするかもしれない。けれど、まだ迷ってもいいはずだと思う。

 そうする事が正しいのかを、僕は……悩んでしまっている。

 正しい選択なんて、そもそもこの世には、ないのかもしれない。


 これは、僕の選択なのか。

 違う。僕は、僕のために選ぶのではないんだ。

 そうしては……そう考えては、いけなかったんだ。


 僕たちは……自分自身の幸せも決められないみたいだから……。




 

 僕はそこで目を覚ます。

 

 そうして僕は、修道院の寝台から、ゆっくりとその身を起こした。

 再び、その女性ひとを探す旅に出るために――。

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